渡邊英子
9月16日(金)7時半から北京の工人スタジアムで行われたSMAPのライブに行ってきた。
チケットが取れたとわかった1カ月前から徐々に気分が上がってくる。
私のようなただのSMAPが好きな人でもだ。
すなわち、ファンクラブに所属するでもなく、ジャニーズのジュニアは見分けがつかない、月曜日のSMAP SMAPを1週間の癒しの時間にしていたくらいのいい加減な、中年の、おばちゃんの、強いて言えば香取慎吾が好きという程度のファン。これがSMAPのライブを生で見れる。なかなかあることじゃない。
チケット。こんな席だったけど、十分に楽しんだ。
実は生SMAPを見るのは、生涯で2回目。1回目は某企業グループ社員として社員大会に参加した時、SMAPが来たことがある。遠かった。米粒程度の大きさだった。今度はもう少しよく見えるだろうか。でも、取れたチケットは380元のスタンド2階の席、おそらく今回も米粒大だ。8段階に分けられたチケットの最前列は2000元(2万4000円相当)、1000元チケットをゲットした友人はアリーナ中ほどだったというから、仕方ない。
ライブはスクリーンに映し出された時計のカウントダウンで始まった。
周りを見回すと、66,000人収容のスタジアムだが、鑑賞席として4分の3ほどしか使われておらず、若干空席もあったので、公称40,000人といっていた観客数はおそらくもう少し少ないかもしれない。私の周りは安いだけあって、中国人学生率が高かった。全体的な感じからすると日本人4割、中国人6割がいいところではないだろうか。後ろの中国人大学生グループの中に日本留学帰りの女の子がいて、最初から最後まで解説していた。大興奮の様子。
記念のTシャツ。本物かどうかは聞かないで欲しい。
29曲を熱唱、ほとんど出ずっぱりの2時間半だった。予習ナシでいったにも関わらず、歌われる歌が多いことにびっくりした。やはり、SMAPは国民的グループだ。
中国語で歌ったテレサテンの「月亮代表我的心」は場内の中国人から喜びの叫び声が上がった。もちろん、持ち歌の「世界に一つだけの花」「夜空ノムコウ」の中国語もよかった。途中、二回ほどおしゃべりタイムがあったが、彼らの中国語で聞き取れたのはわずかで、歌のほうがずっと中国語はうまい。通訳は優秀そうだったが、エンタメ系の人ではなく、もうひとつ盛り上がりにかけた。しゃべりを楽しみにしていた日本人には少々残念だった。
手品のような箱から出てきたリンチーリンは実に美しかった。もう少し話してもよかったかも。あっという間に帰ってしまった。
もう一つ工夫して欲しかったのは、字幕がところどころしかついていなかったことと字が小さかったこと。日中には共通の漢字という強みがある。言葉を大切にする中国でのライブ、詩に定評があるSMAPの素晴らしい楽曲をもっと知って欲しかった。
大音量が流せる時間や火薬使用の禁止などさまざまな制限があって、日本のライブとは少々趣が違っていた。花火はなしでスクリーンが大活躍。ライブの構成的には、スクリーンをふんだんに使って、宇宙人と戦い、緑の地球を救うというストーリーが全体にわたって展開された。
SMAP20周年ということでメンバーの今までの写真も挟まれ、彼らの歴史を振り返るシーンもあった。ここは日本人に大うけ。中国人には何のことかわからなかっただろう。Pちゃんとか、マーボーとか、説明してもむなしくなるので、ここは仕方ないのかもしれない。キムタクのトレンディードラマ時代の写真や慎吾ちゃんの孫悟空は日中共に大喜びで盛り上がっていたけど、こういう写真をたくさん入れたほうがよかったのかもしれない。
また、メンバーの口から、東日本大震災に対する中国からの迅速で大規模な心温まる支援の数々に感謝の言葉があった。中居くんの覆面震災ボランティアは有名だ。彼らの言葉には血の通った心があった。政治家よりも、大企業の幹部よりも、彼らの言葉で中国の若者の心に届くものが確かにあった。
アンコールの3曲目、最後の曲「ありがとう」。この曲の力はすごかった。場内が大合唱になった。「ありがとう」という言葉の力で小雨の降るスタジアムは一体化した。
これがSMAP。歌もそんなにうまくないかもしれない。踊りも若い者に負けちゃうかもしれない。彼らの癒しの力と温かさはやはり一流だ。
明けて、17日の朝。北京の空は珍しいほどの青空だった。慎吾ちゃんもこの空を見ているだろうかなどと思いつつ、日中の若者の楽しく、本音で、血の通う交流がこれを機にどんどん育っていって欲しいと願った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年9月19日
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