渡辺英子
春節を迎え、爆竹が鳴り響く北京で、地壇公園の廟会に出かけた。
“灌腸”、“爆肚”、“茶湯”など北京の有名な軽食をいただき、華やかな伝統的な出し物を楽しんだ。行きかう人々は手に風車のような飾りや大きな糖葫芦の作り物をもち、家族での散策を楽しんでいる。どの顔も表情はとても朗らかで楽しそうだ。中にはおもしろいお面をかぶったりしているひともいて、カーニバルのような賑やかさだ。
そんな伝統的な春節の過ごし方にも変化が少しずつ見られる。爆竹で町が汚れるのを嫌い、通販で電子爆竹を購入したという友人。
年越しの夜はレストランで食事をする人が増えているというが、高齢のご両親を気遣って、年越し用のご馳走セットを今回購入したという友人。ケータリングとは違う。家でちょっと温めて皿に盛れば、レストランのご馳走を自宅で再現できるというものだ。
日本でもデパートやスーパーで予約販売されるおせち料理は、すでに定番となっている。この友人は、広大な中国のこと、帰省するにも十数時間電車に揺られ、乗り継いで、普段仕事で疲れている体に鞭打って帰郷。そこから、ご馳走の準備をするのは毎年大変な仕事だったらしい。このセットを購入することで、自宅で高級店の年越しのご馳走を食べることができる上、買出しの手間が省ける。ご両親も自宅でゆっくりできるし、自分もよかったといっていた。なるほど、中国が豊かになった影響はこんなところにもみえる。
北京にいる日本人の友人の多くは、海外旅行に行ったり、日本に帰国していた。せっかくの中華圏ですごす大イベントをもったいないとおもったが、実際すごしてみてわかるのは、家族がいないとこれほどさみしいものはないということ。27日、首都劇場に巴金の「家」を見に行った。私がずっと感じていた、違和感の答えがそこにあった。春節は家族のイベント。そして中国で家族がもつ意味は強烈だ。現代になっても、中華民族のDNAの底流に流れているのだ。
東アジアで春節を過ごさないのは日本だけだと中国人の友人に教えられ、初めて気がついた。なるほど、韓国も東南アジアも中華系の人が多い。日本はおそらく明治維新以降、農暦を捨て、西暦で生きている。世界に新年が2度訪れることを実感した経験だった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年1月29日
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