中日韓は年内に自由貿易協定(FTA)交渉を開始することで一致しているが、中韓FTA交渉の開始に伴い、日本は受動的な立場となっている。東方早報が伝えた。
本紙は、元日本銀行北京事務所首席代表、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏、中国国家発展改革委員会対外経済研究所国際経済協力室主任の張建平氏を取材した。瀬口氏は、「日本は日中韓FTAの推進に意欲的だ」と述べた。>>【特別企画】中韓自由貿易協定(FTA)交渉スタート
--中韓FTA交渉に関する情報が伝わると、日本メディアは日本が孤立したと報じました。また日本政府は韓国とのFTA交渉に関しても戸惑いを見せています。
瀬口氏:日本はこれまでも日中韓FTAの推進に意欲的で、もちろん韓国よりも中国との交渉を重視している。日本は韓国の軟化を待ちたくないが、日中韓三国の関係も重視しなければならない。
韓国が中韓FTAを開始し、日本も日中FTAを開始すれば、日韓関係に悪影響が生じるだろう。
張氏:中韓FTAよりも、中日韓FTA交渉を直接進めたほうが、三国間のコストと時間を節約できる。
中日韓FTA交渉において、日韓のいずれかに懸念があれば、交渉はスムーズに進行されないだろう。現在は最も直接的な中日韓FTA、そして各自によるFTA交渉という二つの手段が存在する。中韓、中日、韓日でそれぞれ成立すれば、最終的な結果は同じだ。
--韓国には対日貿易赤字が存在し、国内の反発が大きいことから、まず中韓FTA交渉の実施に踏み切ったのでしょうか。
瀬口氏:韓国は対日貿易赤字が大きく、日本との交渉に意欲的でない。日韓FTAが成立すれば韓国の赤字が拡大することは、日本もわかっている。だからと言って日中関係だけを重視するわけにもいかない。やはり三国に影響が出るためだ。
もちろん韓国も日中韓FTAを完全に拒否しているわけではない。日本は韓国の軟化を待たねばならない。これまでの米国とのFTA交渉でも、韓国国内で反対の声が大きかった。韓国が日韓FTAを先に開始すれば、国内の反発はより深刻化するだろう。
まず中韓FTA交渉から入り、日中韓FTA交渉を開始すれば、問題は少なくなるはずだ。
張氏:日韓もこれまでFTA交渉を進めていたが、両国にそれぞれの懸念があり、最終的にまとまらなかった。まず敏感な産業についてだが、日本は製造業で優位を占めている。一方で韓国国内の製造業は日本に及ばないため、関税が引き下げられれば、韓国国内の劣勢が深刻化する。また韓国には現在、北東アジアひいては東アジア全体の経済中枢となる野心があり、先に中国とFTA交渉を開始することとなった。
韓国は日本の製造業を懸念し、日本は韓国の農業を懸念している。両国を比較すると、韓国の懸念の方が大きい。
--韓国が欧米とFTAを取りまとめる中、日本の行動が遅れており、日系企業の競争力の低下につながっています。
瀬口氏:韓国のサムスンや現代自動車等の企業は、多くの部品を日本から輸入している。サムスンの部品の約3分の1は、日本からの輸入だ。米韓FTAを例とすると、米国が韓国車にかける関税は、日本車を2%余り下回っている。これが日本自動車メーカーに与える影響は大きく、懸念が広まっている。
また韓国が日本から多くの部品を輸入していることから、日本製の部品にかけられる関税が引き下げられれば、韓国国内の産業が大きな影響を被る。これは韓国が日韓FTAに反対する理由の一つだ。
日系企業はFTAに期待をかけている。日系企業にとって、これは中国市場開拓の絶好の機会であり、自社の競争力を高めることができる。
「人民網日本語版」2012年5月15日
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