■「タカ」が軟化
有名な右翼の「タカ」である安倍氏の姿勢は、選挙戦時に一部論説が指摘したように明らかに軟化した。安倍氏は組閣前から近隣諸国にしきりに柔軟なシグナルを発した。
安倍氏は22日、中国の釣魚島(日本名・尖閣諸島)への公務員駐在を先送りすることを決定。読売新聞電子版によると、安部政権は来年春季の靖国神社の定例参拝行事に参加しない方針も表明した。
同様に日本と関係が悪化している韓国とロシアも安倍氏の軟化を感じている。外国メディアによると、安倍氏は額賀福志郎元財務相(日韓議員連盟幹事長)を自民党総裁の特使として韓国に派遣するほか、来年2月22日に政府の「竹島(韓国名・独島)」行事は開催しない方針だ。ロシアについては、来年2月にプーチン大統領と親交のある森喜朗元首相をロシアに派遣する計画だ。安倍氏は北方四島の領土紛争解決に意欲を示し、自ら訪露する考えがあることも明らかにしている。
■一時的譲歩
「タカ」はなぜ軟化したのか?
まず、安倍氏が選挙戦中に「タカ」色を鮮明にした理由をまず理解する必要がある。日本経済の長期低迷、社会矛盾の先鋭化を受けて、民衆は「政治に不信感、将来に不安、現状に不満を抱き」、危機感と焦慮感が社会に充満している。こうした社会的現実が日本の右翼思想に成長の土壌とパフォーマンスの舞台を提供した。政治屋として、票集めのためにはどんな手段も使うのは当然だ。選挙戦ではより誇張的、煽動的な発言ほど、より容易に飛び出す。
だがひとたび決着がつけば、国家全体のことを考える必要がある。票集めの政治屋思考はもう有効ではない。安倍氏の前に置かれているのは2つの大きな困難、つまり経済の停滞と、緊張した対周辺国関係だ。
安倍氏は首相就任後、初の外遊先として米国を訪問する方針をほぼ固めた。安倍氏は「失われた日米同盟の結びつきを回復する」ことを外交上の最優先課題として打ち出した。事実上、自民党は1950年代の結党以来、一貫して日米同盟を柱とする戦略を採用してきた。安倍氏が今回強調しているのは実際のところ、この戦略への回帰だ。
だが時代は変わった。今日の日本にとって米国のみに頼って自らの問題を解決することはすでに不可能だ。低迷する日本経済と異なり、中韓露を含む周辺国の経済はみな急速に成長している。こうした国々との関係悪化の副作用は、すでに貿易量の減少に顕著に現れている。これは日本経済にとって、泣き面に蜂に等しい。こうした時期に、近隣諸国に善意を示すことを選択するのは容易に理解できる。
米国でさえ日本の一層の急進化は望んでいない。米上院は21日に2013会計年度国防権限法を可決して、米日安保条約第5条の定める対日防衛義務を再確認したが、米国のリバランス戦略において、日本は「駒」に過ぎない。このため米国は意識的または無意識的に日本をそそのかしているが、第2次大戦後に形成された秩序を本当に打破する考えは全くない。米国は余りに急進的な日本を断じて望んでいない。ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は23日、軍事的対立を避けるよう日本に呼びかける記事を掲載した。
だが安倍氏の軟化は一時的なものに過ぎず、来年夏の参院選で勝利することが目的との指摘もある。自民党は衆院で多数を獲得したが、憲法改正には衆参両院の3分の2以上の議員の賛成が必要なのだ。
■政冷経冷
安倍氏の直面する最大の試練は低迷する日本経済を置いて他にない。専門家は近年の日本政界の毎年首相が交代する現象について、日本経済に好転の兆しがないことが根本的原因だと指摘する。今回経済問題でいくらか突破口を開くことができれば、安倍氏が多くの首相の中で抜きん出た存在になることは間違いない。
安倍氏は意気盛んだが、その選択肢は多くない。内需を見ると、高齢化社会に入った日本の消費の将来性は楽観のしようがないし、消費税増税を強行可決した野田内閣の退陣を見れば、内需牽引という選択肢に余り大きな希望は抱けない。外需を見ると、欧米の景気後退や「島購入」などの影響で、日本の輸出は減少し、貿易赤字が拡大し続けている。消費、投資、輸出が共に失速する中、日本経済に成長の原動力を見出すのは困難だ。
安倍氏はデフレと円高からの脱却を最大の優先的政策課題とし、大胆な金融緩和政策、財政税制措置、大規模な景気刺激策を通じて、名目GDP成長率3%の経済成長戦略目標実現を目指している。だが「紙幣印刷」にどれほどの効果があるのだろうか。外部からは疑問の声が絶えない。中韓露など近隣諸国の急速な経済成長に相乗りして初めて日本経済は発展できると、ある専門家は助言する。その理屈は実は簡単だ。中国を例に取ると、現在日本にとって最大の貿易相手国であり、2国間貿易額は2011年に3400億ドル余りに達し、日本の貿易総額の20.6%に達した。さらに重要なことに、欧米の需要は著しく縮小しているが、それでも日本は対中輸出で2011年に460億ドル余りの貿易黒字を計上した。だが政冷の招いた経冷はすでに日本にとって痛手となっている。
低迷する経済と緊張する外交、安倍氏は果たして目の前の難題を打開できるのだろうか。
「人民網日本語版」 2012年12月27日
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