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中日両国の「政冷経冷」、長期化は必至か

 

上海国際問題研究院アジア太平洋研究センターの李秀石主任(センター長)はこのほど、政治関係と経済関係がともに冷え込んだ「政冷経冷」の状態にある中日関係について、「自民党の安倍晋三総裁と木寺昌人新中国大使は中日両国の改善に意欲を示しているが、局面の打開には双方の努力が必要。中国側は日本が言行一致の適切な行動を取るよう終始望んでいる」と指摘。一方で今後の見通しについては「日本が関係改善に向け動くまでは、『政冷経冷』はしばらく続くだろう」と長期化の可能性を示唆した。26日付香港紙「文匯報」が報じた。

■言動不一致の背後には「政経分離」の対中戦略

日本の政局は2012年も揺れ動き、経済にも減速の明らかな兆候がみられた。さらには、領土問題をめぐる周辺国との対立がこれに追い打ちをかけた。中日関係では、日本政府による釣魚島(日本名・尖閣諸島)「国有化」以降、関係が緊迫化し、多くの交流活動が中止を余儀なくされた。安倍総裁は22日、関係改善に向けて中国に特使を派遣する考えを示したが、日本は同日、中国の領空である釣魚島上空を飛行していた中国国家海洋局の航空機が「日本の領空を侵犯した」として航空自衛隊のF15戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、飛行を妨害した。ここから日本側の言行不一致が見て取れる。

李氏によると、日本の言行不一致はさまざまな思惑を反映しているという。まず安倍氏が釣魚島に公務員を常駐させるとした衆院選公約の実施を当面先送りし、中国など周辺国に特使を派遣する方針を固めたことからは、関係改善に向けた日本側の意欲がある程度うかがえる。しかし日本社会で強まっている右傾化に歯止めをかけることは難しく、安倍氏自身もタカ派の傾向が鮮明なため、日本新政権の関係改善に向けた動きはかなり限定されたものとなる。さらに、日本は一見前向きな言論を盾に、問題処理の不手際の責任を他方に押し付け、外交の発言権を握ろうとしている。

矛盾した動きの背後には、ハト派の経済路線とタカ派の軍事路線が両立する「政経分離」の対中戦略が潜んでいると李氏。「これまで中日関係は『政冷経熱』とされてきたが、現在は『政冷経冷』といえる」とし、「政冷」だけでなく「経冷」まで招いた原因として「戦略的相互信頼の欠如」を挙げた。「『政冷経冷』は日本にとって利点はない。安倍新内閣が実務路線を歩むことができなければ、国内外の苦境を脱することは極めて困難になる」と語る。

■経験豊富な木寺新大使に期待かかる

中日関係が冷え込む中、25日に着任した木寺新中国大使に注目が集まっている。木寺氏は同日、記者の取材に対し「第一の任務は日中の友好関係を深め、広げることだ」と関係改善への意欲を語った。仏AFP通信によると、木寺氏は着任前日の24日、NHKのインタビューを受けた際にも、関改善に力を尽くす姿勢を表明。幅広い分野での交流を増やし、国民感情を改善する必要性を強調した。

木寺氏の関係改善に向けた態度表明について、中国外交部(外務省)の報道官は25日、「日本の新しい大使が両国関係の改善・発展に向けて積極的に努力するよう望んでいる」と期待感を示した。

では、新大使の着任は厳冬の中日関係に春の気配をもたらすことはできるのか。李氏によると、木寺氏は外務省アジア局中国課の首席事務官を務めたこともあり、民間出身の丹羽宇一郎前任大使よりも外交経験が豊富。「両国関係の把握や意思疎通の面でやや期待できる」という。

一方、25日の記者会見で組閣に先立つ党役員人事を発表した際に安倍氏が行った発言も非常に意味深い。安倍氏は「『自民党は変わった』と示せる人事だ」と述べた。

「新大使の派遣は関係改善に向けた意欲をある程度反映したものかもしれないが、目まぐるしく変化する国内外の情勢を背景に、両国関係の大局を正しく処理する方法を見つけられるかどうかが鍵となり、野田前首相の後任として安倍氏が抱える難題は多い」と李氏。「安倍政権にとっては、強硬姿勢の維持と関係緩和の間でバランスを取ることが不可欠となる」と語る。

李氏は「関係改善は最終的には両国の努力にかかってくる。日本側が関係改善に向けた意欲を示し、積極的な行動を取るよう望む」とする一方、「日本が関係改善に向け動くまでは、『政冷経冷』はしばらく続くことになるだろう」との見方を示した。

 

「人民網日本語版」2012年12月28日

 

 

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