文=コラムニスト・陳言
昨年12月1日から、東京の街に濃紺スーツに身を包んだ学生らの姿か増え始めた。この日は、例年より2カ月遅れの大学生向け採用活動の解禁初日で、3月末までの4カ月の間、学生らは会社説明会への参加や採用選考への応募など、忙しい日々を送ることになる。
この時期に就職活動に勤しむのはきっと大学4年生だろうと思うかもしれないが、それは大きな誤解だ。真新しいリクルートスーツを着る彼らのほとんどは大学3年生である。次の4月からようやく大学4年生になるのだ。彼らの多くが、3年生のうちに卒業後の就職先を決めたいと思っている。
一方、就職活動すらしない学生も増え始めている。そんなのはきっと三流大学の学生ばかりかと思いきや、一流大学の学生も少なくない。普通のサラリーマン生活に嫌気がさし、自分の好きな事をして稼ぎたいと思い始める人が増えている。
今、日本でイケダハヤト著「年収150万円で僕らは自由に生きていく」という本が売れている。150万円というと人民元に換算すると11万元くらいだ。中国ではまずまずの収入だと言えるだろう。だが、日本人の平均収入は中国人の10倍から20倍とも言われている。日本の物価は中国の2~3倍に過ぎないとは言え、現実的に考えて、年収150万円で食べていくのは並大抵のことではない。
だが、ライターなどのフリーランス業で、これくらいの年収でやっている若者は日本で少なくない。彼らが他の人より多く持っているものと言えば、それは自由だ。
今年26歳になるイケダハヤト氏は、かつて上場一流企業で数年働いた経歴を持つ。「仕事が本当につまらなくて、辞めてプロブロガーになることを決めました。私のブログは月間32万PV数に達します。これぐらいのPV数になると、企業から広告掲載依頼が来るようになります」と述べている。
「イケダハヤト」という名前はてっきりペンネームかと思っていた。なぜなら、「国民所得倍増計画」を唱えた首相・池田勇人と同じ名前だからだ。だがイケダハタト氏は「実名なのです。私が生まれた時、親は池田元首相のような政治家になってほしいと思ったのかもしれませんね。でも私にはそんな能力はないし、会社勤めすら不満だらけでした」と残念そうに述べる。
脱サラ後、ライターとして第二の人生を歩み始めたイケダハヤト氏。150万円という年収では確かに生活は苦しいが、それでも楽しい、と思うそうだ。毎日3食を自炊すれば食費はかなり浮く。酒もたばこも止め、お金をなるべく使わずに済むようにすればよい。金を稼ぐためだけに仕事をするのはつまらないことだ、と主張するイケダハヤト氏は「今の生活にとても満足している」と言う。
一方、大学卒業後、大企業に就職した石井貴子さんは、イケダハヤト氏が歩むはずだった会社中心の生活に不満を漏らす。「毎日、会社を出るのは夜9時ごろになります。仕事が多くて忙しい、というのもありますが、上司が帰らないと新入社員も帰りにくいのです。みんな、昼に出来る仕事をわざと夜に持ち越すんです」と述べ、「こんなの本当にナンセンスですよね。みんな早く帰りたいのに・・・」と愚痴をこぼしている。
日本の終身雇用制度はもう過去の産物となっている。そして、若者の就業の選択肢が増えれば、これからの職場のあり方も大きく変わっていくに違いない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年1月18日
|