最近、釣魚島(日本名・尖閣諸島)をめぐる中日の法執行の対峙は緊張が続き、朝鮮半島情勢はエスカレートし続け、米国は東アジアへの軍事力配備に拍車をかけ、日本は「専守防衛」と「平和憲法」打破の世論を大々的につくっている。東アジア地域には戦争の暗雲がどんどん立ちこめており、多くの中国人は「中国は戦争の危険に直面しているのだろうか?」との懸念を禁じ得ずにいる。(文:王海運・中国国際戦略学会高級顧問、少将。環球時報掲載)
戦争と平和に関する判断は重大な戦略判断であり、国家の重大な各戦略を決定づけ、各企業・個人に関わってくる。従って冷静に分析し、正確に判断しなければならない。
中国の海洋での周辺との軍事的対峙にさらなるエスカレートの危険性があることは否定できない。だが、中国を狙った、または中国が巻き込まれる大規模な戦争は現実的危険とは程遠いと考えるに十分な理由がある。
第1に、平和と発展という時代の基調は変わっていない。トウ小平氏が1980年代に示した「平和と発展が時代の基調」という重要な判断は今日なお有効だ。冷戦期に米ソは全面的対立を数十年間続けたが、両国間に戦争は発生しなかった。「互いに壊滅を確保する」能力を持つ戦略核戦力が鍵となる役割を果たした。平和的発展を揺るがず堅持すると同時に、軍事闘争への備えを着実に行いさえすれば、特に第2波攻撃能力を確保すれば、いかなる大国も軽々に中国に手を出すことはできない。
第2に、中国は総合国力を大幅に強め、国際的影響力を日増しに拡大している。今日の中国は他国に蹂躙されるがままの弱い国ではもうない。経済力が極めて大きく高まっただけでなく、国際関係の策を練る能力、安全保障上の挑戦に反撃する能力も大幅に向上した。世界の多くの国々は中国の発展を有望視し、中国との関係を重視し、中国の国際理念に賛同しており、中国との友好協力を望む国は世界各地に広がっている。たとえ中国に敵意を抱く極少数の国でも、武力で中国に挑戦するのは、心はやれど力及ばずだ。
第3に、経済のグローバル化という大きな潮流は蕩々たるものだ。国家間の経済的結びつきは日増しに緊密化し、世界の多数の国々は「協力によって発展を図る」ことを共に追い求めるようになってきている。中国は世界的に猛威をふるった金融危機の中でも急速な発展を維持した。世界の多くの国々は中国の急速な経済発展に相乗りすることを強く望んでいる。中国に疑いと恐れを抱くいくつかの周辺国でさえ、域外の大国を引き込んで対中均衡・制約を図る一方で、中国の急速な発展というチャンスを利用することを渇望しており、中国との経済関係の悪化は望んでいない。米日は連携して中国を封じ込めようとしているが、中国という世界経済成長の主要エンジンが停止して自らに災いが降りかかることは望んでいない。
実際には、東アジアの安全保障と関係のあるどの国も大きな戦争をする願望も意志もなく、その準備も整っていない。米国の対中戦略は「封じ込め+協力」だ。中国の発展を牽制し、自らの覇権に中国が挑戦するのを防ぐことが目的であり、中国と共倒れの戦争、さらには人類を破滅させる戦争を行うことではない。日本には中国に挑戦し、昔日の帝国の覇権を取り戻す衝動があるが、平和憲法の制限があるうえ、開戦への政治的、経済的、軍事的準備もできていない。朝鮮は軽々に開戦すれば壊滅的報復を受けることは必至で、大規模な戦争を発動する可能性は低い。中国は平和的発展を堅持しており、他国が戦争を目と鼻の先まで押し付けない限り、いかなる国に対しても武力を用いることは絶対にあり得ない。
釣魚島をめぐる法執行の対峙であれ、朝鮮半島の相互挑発であれ、暴発の大きな危険性、武力衝突を引き起す可能性があることは確かだ。だが中国、日本、米国のいずれにも、大きな戦争をする願望も意欲も準備もない。限定戦争までエスカレートする可能性は基本的に排除してよいし、全面戦争については言うまでもない。
従って、今後相当長期間にわたって、中国にとって戦争の危険は極めてわずかであり、平和的発展が中断することはないと大胆に予言することができる。これと同時に、備えあれば憂いなし、戦争ができて初めて平和を語れるということを指摘しておかなければならない。十分な軍事闘争の準備が、戦争を回避する最も有効なルートなのだ。安全保障上の試練に対する中国の方針は「着実な準備をし、開戦を口にするのは慎む」であるべきだ。
「人民網日本語版」 2013年3月29日
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