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中日の産学官の力を結集し、都市化と環境問題の解決に道筋を

日本の環境省と中国江蘇省鎮江市の主催で6月12日、東京・衆議院第一議員会館で国際シンポジウム「生態文明社会建設を目指した日中協力メカニズムの形成に向けて」が開かれた。

中国江蘇省鎮江市では2012年、市内220平方kmのエリアで100万人規模の生態ニューシティを建設するプロジェクトがスタートした。シンポジウムでは、ニューシティのマスタープラン作成に関わった日中並びに欧州の専門家が登壇し、同プロジェクトの動向を紹介した。地球規模での環境保全の必要性がより一層高まる中、鎮江ニューシティプロジェクトを都市と環境における日中協力の一つのモデル事業として位置づけ、都市と環境の二大問題解決に向けた両国の官民の取り組みについて議論した。100人を超える関係者が出席した。

同プロジェクトは、周牧之東京経済大学教授を総合プロデューサーとし、中日欧の都市計画の専門家が研究と議論を重ね、モジュール都市計画の手法で都市造りの中で環境問題を包括的に解決するマスタープランを作成した。軌道交通を域内交通の柱とし、計画エリアの35%に限り市街地し、65%を農地、水面、緑地とする。徒歩圏を重視した立体型都市と緑の生態環境を軸に、コージェネレーション(Cogeneration)と、CEMS(City Energy Management System)を中心とする省エネ、創エネ都市を造る斬新なモデルとなっている。

冒頭、主催者を代表して秋野公造・日本環境大臣政務官が、「日中友好環境保全センター」発足後20年来の日中協力の歴史について触れた上で、生態文明社会建設に関する鎮江市の取り組みを通じて「日中両国の協力が、官民挙げて活発に勧められること」を祈念した。

呂克倹・駐日中国大使館経済商務公使は、中国共産党第18回党大会で中国の特色ある社会主義事業が、経済、政治、文化、社会の各建設の「四位一体」から、これに生態文明建設を加えた「五位一体」へと拡大し、中国が生態文明発展の道を進むことが明らかになったと明言し、「ニューシティでの協力を切り口とした中日両国関係の早期な回復と発展」に期待した。

シンポジウム準備委員会共同委員長である安斎隆・セブン銀行会長は、50年前の1963年当時、日中覚書貿易に関わる日本人訪中団歓迎宴が北京・人民大会堂で行われた時の、周恩来総理のスピーチを再現し「日中国交の歴史は5000年にも及び、戦争状態の時期は75年に過ぎない、日中は本来仲の良い隣国関係で結ばれている」と述べ、「過去を乗り越え、きょうから頑張ろう」と呼びかけた。

基調講演では鎮江市の朱暁明市長が、長江デルタ地域に位置する同市の高速道路及び高速鉄道網交通による利便性、人材資源の豊かさ、遣唐使安倍仲麻呂の足跡残る中日交流の歴史など、鎮江の魅力をアピール。昨春から周牧之東京経済大学教授を中心に、50人の都市開発や環境問題の世界のトップ頭脳が集まり、一年がかりでマスタープランを作成し、 中国国務院から「江蘇省南部現代化モデル地区建設計画」の一環として鎮江ニューシティ建設への支持を受けた経過を説明した。

マスタープランでは市内の220平方kmの建設エリアに、まず8.8平方kmの試験区を計画し、生態空間を65%、高密度開発区を35%と定めた新しい土地開発利用モデルを提示、産業構造の高度化、クリエイティブ都市、エコ都市を目指して2030年に生態ニューシティ建設を完成させる方針を示した。中国の都市化と市場の巨大化は、日本経済発展への大きなチャンスとなり、中国はIT技術、低炭素化、省エネ技術、医療、クリエイティブ産業で日本の経験と技術協力が活かされることにより両国のウィンウィンの未来が築けると展望した。

鎮江ニューシティマスタープランの総合プロデューサー・総括責任者を務めた周牧之・東京経済大学教授は、マスタープランの目標が「中国への新たなライフスタイル、新たな都市スタイル、新たな開発スタイルへの提示」であったとし、プランの二つの特徴①総合的なプラン、②モジュール都市について各々紹介した。

総合的プランの作成では、交通、エネルギー、エコ、IT、産業計画の各分野の専門家を擁して議論を重ねた上で、デザインルール及び開発メカニズムを定めて計画の実行力を高めたと力説。モジュール都市のコンセプトを用いて、ニューシティのすべての開発空間を、徒歩圏の都市モジュールとし、緑あふれる生態環境の中で各モジュール間に住宅、オフィス、商業、娯楽、学校、医療などフルセットの都市機能を持たせ、且つ各々の個性を演出する。都市モジュ—ルは、公共交通網、エネルギー網、IT、産業、緑道、水系などの都市ネットワークによって束ねられて中型都市を形成する方針を打ち出した。

周牧之教授は、モジュール都市の手法で、スマートシティ、エコシティ、コンパクトシティ、省エネ・創エネシティ、クリエイティブシティ、交通ストレスフリーシティなどの理想を、総括的に実現すると力説し、都市化の道を爆走する中国、そして世界に向けて、都市問題及び環境問題の解決策を提示した。

周教授はさらに、ヨーロッパが過去の歴史を乗り越えEU(ヨーロッパ連合)を誕生させたきっかけが鉄鋼産業の超国家的機構設立にあったことを事例に、「生態文明社会建設をめざした中日協力メカニズムを強化し進展させれば、アジア連合の形成は夢物語ではない」と発言、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 

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