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関係改善の転機大切に 忘れてはいけない相互信頼

文=陳言

11月10日、北京から遠く離れた大阪からひっきりなしに微信(ウィーチャット)のメッセージが筆者のケイタイに入ってきた。習近平国家主席が安倍晋三首相と会談したニュースが流れてからのことだが、その中には日東電工の有本雅彦常務取締役が送ってくれた感想もあった。

「関係改善の第一歩として、良かった」─中国総代表を務め、中国での業務を拡大した有本氏は、両国関係がもっと緊密になったら、ビジネスはもっと順調に行くはずだと思っている。

歴史問題のほか、島をめぐる係争問題によって悪化した中日関係は、転機をずっと待っていた。11月10、11日に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)指導者非公式会議に安倍首相の参加が報じられ、その際に中日首脳会談が実現すると見込まれていた。首相の北京入り前に、両国政府は4項目の合意に達し、首脳会談によって中日関係はやっとその転機を迎えた。

安倍首相の靖国参拝で悪化

21世紀に入ってから、日本の現職首相が靖国神社を参拝することに対して、多くの中国国民は理解できなかった。自発的な抗議デモが中国各地で行われた。そうした状況が落ち着き見せていた昨年末、安倍首相が行った再度の参拝は、抗議デモこそ起きなかったものの、中国外交部(外務省)スポークスマンが「そのような政治家とはもう会いたくない」と述べた言葉は、多くの中国国民の耳に入り、政治家間のみならず、政府関係者間の交流もほとんど途絶えてしまった。

APEC期間中に注目されていた中日首脳会談が開かれた。これをきっかけに中日貿易に転機は来るか……

ある日系自動車メーカーの幹部の1人は、21世紀に入ったばかりのころ、「中国で10%のシェアを確保したい」と筆者に語っていた。それが、今年は「何とか5%ぐらいは取りたい」と弱音を吐くようになっていた。中国では強気の発言は難しいのかも知れない。2010年以降、取材の際に、むしろ動揺している様子が何度も見て取れた。

かつて中日間の貿易高は、中米間よりずっと多かったが、今では、中日間の3120億㌦に対して、中米間は5210億㌦に飛躍しており、1兆㌦を超える日も決して遠くはないだろう。経済規模はおおよそ日本の5分の1の韓国は、中国との国交正常化は日本より20年ほど遅く、しかも韓国の対中世論は、中国から見れば、対日世論より遥かに厳しい。その韓国でも中国と年間2740億㌦に上る(数字は昨年)。

中国と世界各国・地域の2020年の貿易高はどのように見込まれているか。実績から推定して、いろいろな見方が出ている。その中には中米間は2兆㌦、中国─東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国─欧州はそれぞれ1兆㌦となっている。現在、中国と韓国の貿易量や金額などいずれもASEANを上回っている。2020年の中韓貿易高も1兆㌦に近づくだろうと、非常に景気のいい数字も出ている。

中国が今後の貿易ビジョンを唯一、明確に予測できない国が日本である。2012年についで昨年も貿易高は減少し、政治関係の悪化、国民感情の対立などによって中国と日本の経済交流は実際に多大な影響を受けた。今年はあまりにも激しい円安誘導によって、ドル建ての中日貿易は名目上、さらに減少するだろう。政治的にこの問題を解決しなければ、貿易高を増加へ転換させるのは容易ではない。懸念されるのは、中日両国が経済の分野でも国民感情の悪化によって、未来を悲観してしまっている現状である。

 

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