このほど、全日本華人書道家協会副主席兼事務局長で、東京芸術院院長の書道家・郭同慶氏による「墨海一粟・郭同慶書法作品巡回展」が好評のうちに3カ月の会期を終え無事にフィナーレを迎えた。期間中73の作品は前橋、京都、東京の3都市に加え、中国・上海でも展示され、来場者の目を楽しませた。

今回の巡回展について、公益社団法人日中友好協会の岡崎温理事長は「中日関係が困難な状況にある中で、郭氏の巡回展は相互理解と民間交流を促す一助となった」と賛辞を送った。

王蘧常氏による「隔海述書」の七言対聯の前で。『王蘧常氏書法作品集』編集責任者の王運天氏とともに

ふるさと上海へ　

巡回展最初の会場は、上海・南京路にある文房四宝（書画に用いる用具のうち特に大切な筆、硯、紙、墨のこと）の老舗「朶雲軒」だった。朶雲軒、玉仏寺、東京芸術院の共同主催で行われ、上海呉昌碩芸術研究協会、海上書画名家後裔聯誼会、韓天衡美術館が協賛した。会場では特に、現代章草（隷書を略した、草書への過渡的書体）の大家で郭同慶氏の師でもある王蘧常氏の七言対聯作品「隔海聯姻如合璧　述書有賦得伝人」も展示された。

郭同慶氏の作品は、重厚で世俗に媚びない独自の風格を持つ。上海の書道家で、著名芸術評論家でもある王琪森氏は「彼の小草体は伝統を踏まえ、先人の教えに則り、幅広く学んだ基礎の上に、伝統と革新を融合し、独自の境地を切り開いている」と評価する。

上海呉昌碩芸術研究協会、会場書画名家後裔聯誼会の主要メンバーである張偉生氏、呉超氏などとの記念撮影

第二のふるさと・前橋

上海に続いて巡回展が開催されたのは群馬県の前橋市だった。前橋は郭氏が来日後28年にわたって暮らしている「第二のふるさと」であり、この地でたゆまず筆創作に取り組み、彼は日本での書道家としての地位を確たるものとした。

来日した1980年代後半から、彼は地元の自治体関係者や政治家、芸術家たちと交流を持ってきた。群馬県出身の中曽根康弘元首相や福田康夫元首相も、郭氏の芸術活動に注目と支持を与えている。

古都・京都

ちょうど日展(日本美術展覧会)の巡回展と同時期の開催となった京都では、郭氏の展覧会は格別の人気を博した。漢学者で京都大学の名誉教授、住友財団泉屋博古館の館長でもある小南一郎氏、于右任研究家でコレクターの西出義心氏、書道家で橘大学教授の王衛明氏、篆刻家で京都造形芸術大学講師の傅巍以氏、日本篆刻家協会理事長尾崎蒼石氏などが来場、会場は中日の著名な専門家、研究者による交流の場の様相を呈した。

日本書壇の第一人者あり日展理事も務める書道家の杭迫柏樹氏も夫人同伴で来場し、お祝いの言葉を送った。同氏は作品を観覧し「章草の味わいが非常に深く、古い時代の趣きが満ちあふれている」との感想を述べた。

書法篆刻家であり、日本篆刻家協会前理事長、風会会長の山下方亭氏などとの記念撮影

玉仏寺の長春法師他、14名の学僧との茶話会にて

国際都市・東京

巡回展最後の開催地は東京だった。上海、前橋、京都での成功は各メディアによって報道されており、東京にも伝わっていた。東京では東京中国文化センターと東京芸術院の共催として、東京中国文化センターを会場に行われた。中国大使館文化部のほか、中日友好や文化交流の主な団体が後援した。

開幕式のあいさつでは、東京中国文化センターの石軍主任が、郭氏の日本における中国文化の伝道師としての活躍ぶりや中日交流への貢献について特に取り上げて賞賛した。また、郭氏がすでに同センターで3年半にわたり書道講座を開催していることが紹介された。会場を訪れた来賓は、こうしたエピソードから郭氏の崇高な精神と書の世界をより多くの人に伝えたいという姿勢を感じ取った。

テープカットにつづいて、郭氏が中国の二胡演奏家である甘建民と共演、「書楽合璧・温故知新」として揮毫を披露した。4幅の大きな紙に今年の四字熟語である「温故知新」を篆書、隷書、草書、楷書の4つの書体で生き生きと書き上げたのだった。

3カ月にわたる「墨海一粟・郭同慶書法作品展覧会」はこうして幕を閉じた。今回の巡回展を通し、郭氏の書にかける純粋な思いと崇高な精神は多くの支持と認知を集めた。中日両国の海を越える友情は、書という絆で４つの都市を結びつけたのである。

杭迫柏樹氏に贈られた書

二胡演奏家の甘建民氏と「書楽合璧・温故知新」の揮毫会を行う

人民中国インターネット版　2015年3月19日