増水期の水難船舶の安全と幹線航路を通る各船舶のスムーズな航行を保証する目的で、6月10日午後1時ごろ、長江で転覆した大型客船「東方之星」の船体が、事故発生水域から約10キロメートル離れた安全水域に移送された。犠牲者の遺品の確認・引き渡し作業が始まり、保険会社による損害賠償請求手続きも進められている。国務院「東方之星」客船転覆沈没事故調査チームによる掘り下げた事故調査業務が全面的に展開している。人民日報が報じた。
国務院調査チームは、数日前から、各種調査作業を念入りに繰り広げている。具体的な作業内容は以下の通り。
1 関係者への事細かな事情聴取
救出された乗客、船長と乗組員、船会社の担当者、船舶の設計・建造・改装担当者、事故現場付近を航行していた船舶の関係者・目撃者、地方海事部門および交通運輸部など関連部門担当者、旅行社担当者などの関係者から、相前後して、詳細にわたる事情聴取を行い、これまでに200件以上、50万文字を超える、事情聴取を記録した文書が作成された。
2 気象に関する科学的な調査・測量分析
気象専門家チームが、事故発生水域両岸エリアでフィールド調査を行い、事故発生の気象やドップラー・データの観測結果を採取した。北京大学、南京大学、災害天気国家重点実験室、中国科学院大気物理研究所、中国気象局の専門家によって構成された専門チームは、6回にわたり検討会の場を設け、気象衛星、天気レーダー、稲妻の位置確認や地面自動気象観測などのデータと専門家によるフィールド調査の結果に対する総合的分析を進め、事故発生時の気象状況を科学的に判定した。
3 船舶に関する資料の精読・審査判定
船舶メーカー、設計部門、鑑定機関、航路管理部門、監督管理部門などの関連機関から、船舶の設計図、標準規格、資格証明書など200以上の資料を集め、専門家が昼夜を問わず事実確認と判定作業に携わり、船舶の設計、建造、改装、検査、船舶の適正な航行、船員の適正な任務遂行、水文などの情況について全面的に把握しようとした。
4船舶での現場検証、証拠収集
船舶が引き上げられた後、専門家チームはすぐに船舶に乗り込み、操縦室などの重点場所の調査測量・撮影を行い、船に搭載されたGPS端末や監視ビデオデータなど鍵を握る物的証拠を収集、それらを復旧させて読み取り、転覆前の航行・操縦状態や事故に遭遇した際の対応状況などを把握した。
中国保険業監督管理委員会(保監会)によると、細かな統計を経て、保険業は、事故を起こした客船の船主、関連旅行会社、乗客・乗組員が加入していた各種保険340件から、総額9252万800元(約18億円)の保険金を支払うこととなった。このうち事故客船に関する保険金は計1570万元(約3億円)。中国人民財産保険重慶支社は、船舶保険金(オールリスク補償特約)として、重慶東方輪船公司に1千万元(約2億円)の保険金を支払った。旅行社責任保険の総額は1200万元(約2億4千万円)。乗客396人が加入していた各種人身傷害保険の総額は6169万3500元(約12億2400万円)。乗組員18人の人身傷害保険の総額は312万7300元(約6200万円)。
10日、今回の転覆で犠牲となった乗客の遺族は、転覆現場に近い湖北省荊州市監利県にある容城葬儀場へ遺品の確認・引き取りに詰めかけた。監利県の林志雄・副県長は、「今のところ、所持者が確認された遺品は323件あり、8省の担当者が、遺族に確認・引き取りに来るよう通知した。救出された乗客のひとり、張輝さんは9日夜に葬儀場を訪れ、自分の所持品を確認、引き取った。張さんは、「私は一命を取り留めただけではなく、一銭たりとも失うことはなかった」と述べた。(編集KM)
「人民網日本語版」2015年6月11日
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