中国が巨額の外貨準備高を保有する状況下、適度かつ積極的な人民元切り下げは、経済の安定という大局にとって有利であり、一国の通貨のソフトパワーを示している。また合理的な範囲内の切り下げは、資金の大量の外部流出を促さない。
市場では今年に入ってから、元安の予想が強まっていた。中央銀行は衝撃的かつ賢明な手段により、人民元の積極的な切り下げを実現した。中央銀行は8月11日、人民元の対米ドルの基準値(中間値)を1ドル=6.2298元に切り下げ、前日の基準値と比べ0.1136元(1.9%)の元安となり、2013年4月25日以来で最低の水準となった。終値は1.8%安の6.3231元で、単日としては過去最大の下げ幅となり、約3年ぶりの安値となった。
「衝撃的」とは、1日で1000ベーシスポイントを上回る記録的な切り下げが、人民元国際化が加速され、国際通貨基金(IMF)が人民元をSDRの構成通貨に採用するかを検討する重要な時期に実施されたからだ。その他の通貨の相場が下落し、元安の予想が強まっていたが、この大胆な対策は措置を震撼させた。世界の経済メディアは、これをトップニュースとして報じ、論じている。
「賢明」とは、基準値が1000ベーシスポイント切り下げられた後、中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対米ドルの基準値の設定方法を改善したと発表したことだ。これは市場の実勢を考慮して基準値を決めることで、市場における基準としての地位と権威性を守るためだ。
中央銀行が8月11日に実施した記録的な切り下げは、為替相場の市場化に背く動きではなく、為替相場を決める市場を尊重し、積極的に基準値と市場の実勢を一致させる動きだった。そのためこれは、2005年の為替制度改革以来の、新たな進展と見られている。国際社会の反応を見ると、人民元切り下げに対する過敏な反応はなく、中央銀行が為替操作を行っているという説はほとんど見られない。これは人民元相場の国際的な駆け引きの歴史において、稀なケースと言える。
為替相場の市場化はさておき、中国経済の基本面と人民元の実効為替レートについて見ていこう。すでに過大評価されている人民元を積極的に切り下げることで、中国経済の安定成長の需要を満たし、人民元の一定の競争力を維持することができる。
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