環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉に参加していた米国はじめ12カ国の経済・貿易閣僚は5日に共同声明を発表し、5年余りに及んだTPP交渉がこのほど大筋合意したことを明らかにし、世界中のエコノミーの注目を集めた。「京華時報」が伝えた。
商務部(商務省)の報道官は6日、「中国は世界貿易機関(WTO)のルールに合致し、アジア・太平洋地域の経済一体化促進にプラスになる制度の建設には等しく開放的な態度で臨む。TPPは目下のアジア・太平洋地域における重要な自由貿易協定の一つだ。中国はTPPがこの地域の他の自由貿易の枠組と相互に促進しあい、アジア・太平洋地域の貿易投資や経済発展に向けてともに貢献することを願う」と述べた。
(1)TPPとは?
相互に関税を撤廃 対象商品は1万8千種類
TPP交渉はチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの間で2005年にスタートし、最も重要な特徴は相互に関税を撤廃する点にあった。当初は参加するエコノミーの規模の小ささから、それほど注目を集めなかった。08年に米国が交渉参加を表明し、高い基準を備えたより範囲の広い地域協力協定の構築をうち出すと、徐々に注目度は高まっていった。それから数年の間にオーストラリア、ペルー、ベトナム、日本などが交渉に参加した。
このほどTPP交渉で大筋合意した12カ国は、米国、日本、オーストラリア、カナダ、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、チリ、メキシコ、ペルーで、経済規模は世界の国内総生産(GDP)の約40%を占める。
意に基づき、参加国の商品約1万8千種類の関税は今後一定期間内に段階的に引き下げられるか、完全に撤廃される。
(2)TPPの主な特徴は?
全体をカバー・高い基準 貿易ルールを再構築
既存の多国間自由貿易の枠組に比べ、TPP交渉では基準とルールの制定に重点が置かれ、これらをよりどころとしてアジア・太平洋はもとより世界全体をカバーする貿易ルールを再構築することが重視されている。よって「全体をカバーする」と「高い基準」がTPPの目立った特徴となった。
第1に、TPPは「全体をカバーする」ことを目指す。これまでの多くの自由貿易協定は関税の引き下げ、サービス貿易の促進が主な狙いだったが、TPPは関税の撤廃・引き下げを規定しただけでなく、投資、競争政策、技術的貿易障壁、食品の安全性、知的財産権、政府調達、グリーン成長、労働者保護などその内容は多岐にわたり、これまでの協定をはるかに超える範囲の広い自由貿易協定だといえる。
第2に、TPPの開放レベルは明らかに「高い基準」を志向する。たとえば環境保護、労働力、原産地、政府調達など各方面で高い基準の条項を多数有する。
(3)中国への影響は?
短期的には打撃 開放的な態度を
前出の報道官によると、「中国はWTOルールに合致し、アジア・太平洋地域の経済一体化促進にプラスになる制度の建設には等しく開放的な態度で臨む」という。
中国は現時点ではTPPに参加していない。短期的にみればTPPは中国の対外貿易にとってある種の打撃になるが、長期的にみれば、経済グローバル化を背景として、いかなる多国間の貿易枠組も、非参加国・地域を国際貿易システムの外に閉め出すことはできない。そんなことをすれば自身の発展が大いに制約されるだけだ。
米国のシンクタンクの専門家やビジネス界のリーダーの多くが、TPP交渉が最終的に成功するためには中国の参加が必要との見方を示す。米カーネギー国際平和基金のシニア研究員は、「最終的に人々はTPPの完全な成功には中国の参加が必要だということを理解するだろう」と述べる。
(4)どのような課題に直面?
政治的かけひきが多い バランスに疑問
TPP交渉の大筋合意の後、まず乗り越えなければならないのは「批准の壁」だ。交渉参加各国の立法プロセスや協定批准プロセスを経なければTPPは発効できない。12カ国にはそれぞれの政情があり、協定の審議は政党間や利益団体間の複雑な政治的駆け引きに振り回されるおそれがある。
次に超えなければならないのは、TPP合意が生み出す可能性のある新たなアンバランスと不確定性だ。TPP交渉参加国には、米国やカナダのような先進国もあれば、ブルネイやベトナムのような発展途上国もある。多くの専門家が、「TPPは貿易保護を著しく減少させ、外国人投資家に対する監督管理を制限し、政府調達にはいわゆる機会均等の原則を適用するよう求め、また金融の自由化に対して高い基準を設定する。多くの発展途上国の現在の発展段階を飛び越えており、こうした国々の企業の受け入れ可能な範囲を超えている可能性がある」と指摘する。(編集KS)
「人民網日本語版」2015年10月8日
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