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「日本」が地方都市で高評価 重慶市の物流政策にアドバイス

 

ジャーナリスト・陳言

日本で企業を訪問取材していると、経済が「三安(円安、金利安、原燃料素材安)」という不安定な環境にあり、相当数の企業が踊り場で足踏みをしているように感じる。一方、新聞を広げてみると、中国の経済減速を懸念する記事、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉から中国を排除したことを「中国をけん制している」と分析した記事が数多く出ている。かつてのように日本側から中国にアドバイスして、中国と何らかの形で連携して、両国経済を活性化し、さらに東南アジアなどに出掛けて一緒に何かをやろうという主張や論評は目を皿のようにして探しても見つからない。

2015年9月、重慶市で開催された国際ロボット・知能製造設備博覧会の会場。ロボット産業は中日間の協力に巨大な発展空間の提供が見込まれている(新華社)

これに対して、中国国内で取材旅行に出て、地方紙を読んでみると、国際面には安保関連法案について、安倍内閣の強制的なやり方に対して日本人はみんな怒っているという記事は掲載されているが、経済面には日本の環境対策、日本企業の経営について資料を使って編集された記事を今でもよく見掛ける。経済に限っていえば、日本企業に対する期待は今も変わっていないと感じる。

「友人の輪」に各国の38人

9月に重慶で目にしたのは、重慶市の市長国際経済顧問団会議第10回総会というニュースだった。地元紙『重慶晨報』はその総会を大きく取り上げた。

記事を読んでみると、同総会は9月20日に開催され、黄奇帆市長が招請した「友人の輪(サークル・オブ・フレンズ)」は全部で38人。その中には、世界企業をランク付けした「フォーチュン·グローバル500」に名を連ねる企業の代表者も少なくない。

第9回総会までにどんな企業が会議に出席して来たのか、大いに興味が湧き、地元紙を調べてみた。フランス・ラファージュ社のブルーノ・ラフォン最高経営責任者(CEO)、スイス・ABBグループのバーナード・ユッカー執行副総裁と野村證券の古賀信行会長の3人は重慶を実に9回も訪れ、全総会に欠かさず出席していた。その3人に次いでフランスのスエズ・エンバイロメントのジェラール・メストラレ前CEO、オーストラリアのオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のマイケル・ロジャー・ピアソン・スミスCEO、米国のハネウェル·インターナショナルのシェーン・テッドヤラティ副総裁とスズキの鈴木修会長兼CEOの4人であり、この4人の総会への出席は8回に及ぶと書かれていた。

中国の地方都市では毎日さまざまな会議が開かれ、いろいろな議論も行われているが、その後の結果はどうなっているか、よくわからない。しかし、重慶は違う。重慶の市長国際経済顧問団会議に参加しているラファージュ、ABB、フォード、スエズ・エンバイロメントなど10社の企業の重慶市への総投資額は累計3000億元(約6兆円)に達し、重慶市の半分の工業発展を間接的にけん引し、重慶市の工業システムにおいて重要な役割を果たしている。

重慶市の経済成長戦略をよく理解し、投資可能のところに投資して来た。これは20年前の中国であれば沿海都市ではよく見掛けたことが、それが重慶に波及してきたという印象を持った。

地方紙に日本の経営者発言

このごろ中国の全国紙で日本の経営者が中国経済について語った発言をほとんど見なくなった。全国紙の編集局が積極的に取り上げない面もあるだろうが、日本の経営者はサラリーマンが多く、ワールド・スケールで発言することに遠慮がちな面もあるようだ。日本の経済紙ならば独自取材を喜んで取り上げるが、中国の新聞雑誌はほとんどそうした取材を無視する。

しかし、中国の地方紙には、日本の経営者の発言を取り上げた記事が出ている。重慶で読んだ黄市長の講演には、日本の経営者が発言した内容が含まれていた。その中で、三井物産の飯島彰己会長は、次のような分析を述べたそうだ。「物流は双方向であり、片方の物流量が大きくても戻ってくる際に貨物がなければ、貨物列車のコンテナは空で帰られなければならず、コストが高まるのは間違いない」

「渝新欧鉄道―重慶(渝は別称)から陝西省西安、新疆ウイグル自治区を経て欧州までの国際鉄道)」が本当の潜在力を発揮しようとしたら、長江デルタ、長江中部流域、南西地域、内陸地域と結んで互いに通じることが重要だ。そうすることではじめて、重慶市は物流の中枢になることができ、ユーラシア大陸橋もより重要な役割を果たせるだろう。また、双方向の物流で、帰る時にも行く時と同じように十分な貨物を輸送できる態勢を望む飯島社長の発言は、商社から見ればいたって常識的な考え方であろうが、黄市長はそれを聞いて、「素晴らしい見識によるアドバイス」と重慶市民にその内容を紹介し、たたえていた。

いすゞ自動車は、重慶と共同出資して慶鈴企業を設立し、トラック、業務用自動車を生産している。いすゞの細井行会長は重慶市の交通問題について、「中国と全世界の交通物流コストが国内総生産(GDP)に占める割合を比較してみると、重慶市の場合は19・9%となっているが、中国平均は17%、世界平均はわずか10%に過ぎない。これは、重慶市の商工業の物流コストがいかに高すぎるかを物語るものであり、発展の環境問題でもある」と述べ、「重慶市の物流総量では、自動車輸送が83%、長江水上輸送が15%を占めており、鉄道輸送はわずか2%に過ぎない。自動車輸送の割合が高すぎるのは明らかである。中国における鉄道輸送貨物量の比率は全輸送量の10%であるのに、重慶市はわずか2%のみである」と分析した。トラックメーカーの経営者だけに問題点をずばりと指摘し、このアドバイスを聞いた黄市長はその場で、水運と鉄道輸送の比率を引き上げる決意を固めたようだ。また貨物輸送の量が増えれば、トラックの出番もますます多くなるはずであろう。

重慶市のケースから地方都市では今も日本の見識、アドバイスが重宝されていることがうかがわれる。しかし、中日のメディア、取り分け全国紙にはすでにそうした将来性を取り上げる意欲がほとんど感じられず、新しい市場を創造しようという空気が希薄になっているように感じられてならない。

 

人民中国インターネット版 

 

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