このところ日本企業の中国向け投資が減少し、一部の企業が中国から東南アジアへ拠点を移しているというニュースがたびたび聞かれるが、実情はどうなのだろうか。日本貿易振興機構(JETRO)北京事務所はこのほど、中国の日系企業数十社を対象に行った調査をもとに、「日本企業の中国事業の現状と展望」と題するリポートをまとめた。中国の『経済日報』の記者がJETRO北京事務所所長の田端祥久氏を取材している。
田端氏は、「日本の経済界と産業界は依然として中国を非常に重視している」と説明した。JETROのウェブサイトでは世界各国・各地域の経済情勢や投資環境に関する情報を紹介しているが、そのなかで中国関連情報へのアクセス数がここ数年にわたりトップを維持。2014年のウェブサイト全体のアクセス数は530万件で、うち中国関連情報は39万1000件と注目度が最も高かった。
日本企業による中国向け投資の状況をみると、2013年の第3四半期以降、日本企業の対中投資は底を打ち、回復傾向を辿っている。日系企業の中国駐在員や現地の責任者は、中国事業を拡大することに積極的な姿勢を示している。四半期ごとの実質対中投資額はここ2年にわたり平均10億米ドル前後に上り、2009年、2010年と同水準だ。田端氏は、JETROが6月から8月にかけて訪問した日系企業35社の大多数が、中国経済は安定成長を続けるとの見方を示したことを明らかにしている。
調査によると、ある化学企業の責任者は、中国経済が有効な調整策のもと成長を続けるとの見方を示した。機械設備メーカーも、中国が「新常態(ニューノーマル)」を目標に安定成長を続けるとみて、中国市場にはとても魅力があり、大規模な需要がまだ見出されておらず、これらを掘り起こして拡大する必要があると指摘。電器設備メーカーは、「中国製造2025」が製造業の発展につながる政策として自社にもポジティブな影響が及ぶことを期待していると話す。
また、総合商社の代表は、中国経済の成長速度が低下したものの、一定速度の成長を保っていると指摘。特に経済規模をみれば、成長率7%でもその成長分はマレーシア、フィリピン、ベトナムの国内総生産(GDP)の合計に相当し、中国の消費増につながると分析した。ある企業も、中国の消費者による海外ショッピングの状況から、中国では第三次産業が経済成長を牽引し、経済成熟の目印になると予想。現時点では日系企業のシェアが理想的な水準ではなく、掘り起こすべきビジネスチャンスがまだあるとみている。
日本企業の今後の中国事業に対するスタンスについては、回答22件のうち15件が投資拡大の意向を示し、現状維持は7件のみだった。多くの企業が、中国は依然として重要な戦略的投資先で、巨大市場の潜在力があるとみており、積極的にビジネスチャンスを探って中国での投資を拡大する見通しだ。
田端氏は調査結果をもとに、中国向け投資を引き続き拡大する意向を示している企業が食品、製造、自動車等輸送機械設備、化学・医薬などの産業に集中し、これらの産業はここ数年にわたり中国での販売規模が最も大きいと分析。日本企業が中国との提携において、かつての加工貿易から、中国で製造・販売を行う現地成長戦略に転換した一方、伝統的な繊維・衣類製造業などの純粋な加工貿易型産業は生産拠点を中国から東南アジアへ移転しているとの見方を示した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年11月3日
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