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人民元のSDRバスケット入り、その影響は?

 

長らく待たれていた人民元の「SDRバスケット入り」が11月30日、カギとなる瞬間を迎えた。国際通貨基金(IMF)は同日、特別引出権(SDR)の通貨バスケットへの人民元の採用を採決した。人民元の通貨バスケット入りは、市場には自然な成り行きとみなされているが、中国の経済発展の一里塚となるだけでなく、投資家にも深くかかわるできごとともなる。北京商報が伝えた。

▽留学や旅行のコストが低下

SDRバスケット内の通貨は通常、危険回避のための通貨とみなされている。人民元がSDRに加わったことで、人民元の使用が世界的に増加することは間違いない。海外に留学や旅行をしようという人にとっては嬉しいニュースとなる。よく海外旅行に出かけるという王さん(女性)は、出国前の外貨両替は面倒だし、両替時にはレート変動の影響もあるので、国外で人民元を直接利用できるようになれば、両替レートのリスクを低めることができると喜んでいる。

交通銀行のチーフエコノミストを務める連平氏は、「人民元がSDRに加わったことで、ますます多くの国が人民元を認め、人民元を受け取り、人民元で各種の取引を行うようになるだろうと指摘する。そうなれば将来、留学や海外での買い物、旅行などの消費もより便利になる」と語る。

インターネット金融の「黄金銭包」(G-banker)の首席研究員の肖磊氏も同じ見方だ。「人民元の国際的な地位が高まれば、将来は、海外旅行や留学の際に国内で外貨両替をする必要がなくなり、両替や時間のコストが下がる可能性が高い」としている。

▽投資ルートが増加

買い物や消費が便利になるほか、人民元のSDR入りは、一般投資家の投資ルートの拡大にも有利に働く。将来は国外で直接、不動産や株式、債券を購入することができるようになる。

興業銀行のチーフエコノミストの魯政委氏は、「庶民にとっては、世界のより多くの資産への投資が可能となると指摘する。第一に、グローバルな資産配分が可能となる。人民元がSDR入りし、国際収支が開放されれば、一般投資家は、人民元資産を保有できるだけでなく、すべての外貨資産の保有を考慮できるようになる。中国人の財産価値の維持や拡大にとっては有利な環境だ。第二に、より多くの資産配分が可能となる。一般投資家の投資ルートはこれまで大きく制限され、銀行預金や不動産市場、銀行での資産運用、ファンド、株式市場など、国内の投資ルートしか選ぶことができなかった。グローバルな資産配分が可能となれば、国内の投資ルートでは物足りないという投資家は国外での投資を始めることができる」と語る。

人民元のSDR入りは、国内の投資ルートの成熟にもつながり、将来の国内の資本市場でのチャンスも増えるのではないか。肖磊氏はこれについて、「人民元がSDRに採用されれば、国内資本の双方向的なコントロールが徐々に緩和され、国内の投資家が国外の資本市場に投資することも、国外の投資家が中国に投資にやってくることもより容易になると指摘する。だが現在、中国の株式市場と不動産市場は過度に高く見積もられており、投資家は国外の株式や不動産の投資に向かう可能性が高いため、中国の株式市場や不動産市場に不利な影響が出ることも考えられる。だが債券市場とエクイティ投資市場には今後、より大きな発展の見込みがある」としている。

▽為替リスクの引き下げ

個人の投資ルートが増すという以上に、人民元のSDR入りは、企業にとっての影響が大きい。とりわけ銀行を代表とする金融機関や輸出入関連の企業にとってはなおさらだ。

中央財経大学銀行業研究センターの郭田勇センター長は、「銀行はこのチャンスをつかみ、海外市場を拡大し、人民元のオフショア預金業務を推進するべきだ。輸出入企業にとっては、国際市場で人民元に対する需要が高まっていけば、人民元レートには支えができ、企業の国境を超えた投資や取引、買収などに有利になる」と見ている。

「事実上、中国の対外貿易での人民元による価格計算の比率が高まる中、人民元はすでに、最もよく使われる支払通貨の一つとなり、貿易決済における役割を急速に拡大している。中国企業は、より魅力的な価格と融資を貿易相手に提供することで、相手が人民元で決済するようにし、自身の為替レートのリスクをなくしている。同時に、企業が貿易相手国の通貨を直接使用して取引の決済を行い、ドルを仲介としないことで、企業の両替コストを引き下げ、輸出入企業の効率を高めることもできる」と続けた。

また郭センター長は、「人民元のバスケット入りは、政府の準備金の価値低下によってもたらされる資産の流失を減少し、人民元の価値低下の予期を引き下げ、米FRBの金利引き上げによってもたらされる影響を緩和することにもつながる」としている。(編集MA)

 

「人民網日本語版」2015年12月2日

 

 

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