閉幕したばかりの中央経済政策会議では、中国経済はファンダメンタルズが良好で、潜在力が大きく、回復力が高く、融通の余地が大きい一方、多くの困難や挑戦にも直面しており、とりわけ構造的な生産能力の過剰が深刻であるとの見方が示された。筆者は、政策の連携がうまく行けば前途は有望で、経済成長実現のために切ることのできる「カード」はまだ多いと見ている。(文:高連奎・中国人民大学経済学院研究員。人民網掲載)
ここしばらく、「供給側の構造改革」がホットワードとなっている。今回の中央経済政策会議では、「新たな供給の創造と供給の質の向上を通じて消費需要を拡大する」との方針が特別に示された。有効供給を通じて消費が促進された事例は多く、米国のアップルの携帯電話や中国の高速鉄道もそれに当たる。中国の高速鉄道は、その安全性と快適さ、スピードで、中国人が最も好む交通手段の一つとなり、中国の新たな「名刺」ともなった。中国の高速鉄道建設は、ケインズ学派の需要不足理論から出発したものだが、高速鉄道は確実に新たな供給となり、その新たな供給は需要を引っ張ることになった。
「遅れた生産能力を淘汰し、新たな供給を増加させる」というこ方針に対し、市場は圧力さらには恐れを覚え、ストックの調整によって打撃がもたらされるのではないかと心配しているように見える。だが過度に心配する必要はない。「遅れた生産能力を淘汰し、新たな供給を増加させる」という方針は、以前から言われている産業のアップグレードとほぼ一致するものである。
中国の産業アップグレードはすでに盛んに展開されており、中国は各産業分野にはここ数年、世界の先端技術を競うことのできる大量の企業が出現している。電気通信・携帯の分野では「華為」(ファーウェイ)が台頭しており、電気通信設備の面ではすでに世界のトップレベルに達し、携帯電話の技術でも進歩を続けている。電気自動車の分野でも、多くの中国企業が台頭している。このほどオーストラリアのメルボルンで行われた世界級の大会では、中国企業が自前で開発・設計した豪華観光バスが、1回の充電での航続距離1018kmというすばらしい成績を上げ、「商用電気バスの最長航続距離」と「商用電気自動車の最長航続距離」という2項目の世界ギネス記録をたたき出した。このほか、中国では「インターネットプラス」も期待できる。「滴滴」のようなITレンタルカー企業は人々の移動コストを大きく引き下げ、公共交通の圧力を緩和することとなった。
遅れた生産能力の淘汰も、一刀両断の措置を取る必要はない。石炭や鉄鋼などの分野の生産能力過剰は速やかに処理しなければならないが、国内の家電産業や電子メーカーはそのまま中西部に移せばいい。もっと広く考えるなら、中国の紡績業はベトナムに移転し、靴メーカーはアフリカに移転している。これらの産業移転は市場が自動的に行うこととなるので、強制的に整理する必要はない。
筆者の見るところ、中国の新興産業はぐんぐんと伸び、勢い良く発展しており、潜在力や希望があちらこちらに見て取れる。政府がこれらの企業にマクロな経済政策環境を提供できるかは、中国企業がアップグレード・転換を順調に実現できるかのカギとなる。産業が問題で経済の衰退に陥る国は少数だが、誤ったマクロ経済政策で経済危機または長期にわたる不景気を呼んでしまう国は多い。よく見られる問題は、通貨政策と税収政策の処理の不適切である。今回の会議は、「マクロ政策を安定させることは、構造改革のために安定したマクロ経済環境を作り出すことである」としているが、まさにその通りである。
近年、「融資が難しい、融資が高い」という問題が、中国企業の発展を深刻に制約してきた。今回の会議では融資コストの引き下げが打ち出された。これは非常に必要な措置である。中国企業の目下の困難は、高い融資コストによってもたらされたものが多いためである。
今回の会議ではさらに、必要な財政支出と政府投資を適度に増加する方針が打ち出された。筆者の考えるところ、有効供給を拡大するには、企業の供給を拡大するだけでなく、政府の供給も拡大しなければならない。また多くの状況では、政府の供給が先行すべきである。政府供給の不足は、企業の供給を圧迫する。例えば自動車は、需要が大きな圧迫を受けている業界である。また我々はさらに、環境汚染処理を強化し、住民の社会保障レベルを高める必要がある。総じて、企業だけでなく政府も供給能力を高めなければならず、政府の公共財の供給も中国経済発展の巨大な潜在力となる。
このように、中国が、経済の安定した持続成長を実現するために手元に持っているカードはまだ多く、大きな潜在力を持っている。(編集MA)
「人民網日本語版」2015年12月25日
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