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出稼ぎ労働者の半数以上、「都市戸籍に変わりたくない」

 

郷里に別れを告げ、都市に移り住むことは、多くの出稼ぎ労働者が憧れる生活だ。だが、四川省統計局がこのほど成都や綿陽など9都市で働く出稼ぎ労働者を対象に実施した調査の結果、回答者の53.8%が、「都市戸籍に変わりたくない」との考えであることが明らかになった。彼らはなぜ、「農村戸籍から変わりたくない」のだろうか?人民日報が報じた。

〇都市は暮らしづらい 出稼ぎ労働者の最大の難題は「住宅」

朝から晩まで働き詰めでも大して稼げない。すべてお金を払う必要がある。

冬になり、眉山市は、曇り時々晴れの天気が多い。

眉山市丹稜県から出てきた張秀芬さんは、ある団地の入り口で野菜を売っている。夫は、夜市で露店を出しているという。屋台での野菜売りは、いつもそれほど儲からず、朝から晩まで働き詰めでも、月収は多くて2,3千元(約3万7千円から5万6千円)、生活費を切り詰め、なんとか家計をやりくりしている。

この団地に住む王浩倫さんは、仕事が引けると毎日のように、張さんの屋台で野菜を買うお得意さんだ。ネイビーのスーツに身を包んだこの青年は、張さんの目にはいい生活をしているように映っている。

眉山市に出てきて長年仕事に励んできた王浩倫さんは、労働環境は悪くないものの、野菜売りの張さんほどの稼ぎはない。4年前、王さんは両親とともに昆明から故郷に戻ったが、市内に住み始め、再び村に戻ろうとはしなかった。

農村戸籍から都市戸籍に変わりたいかどうかを王さんに尋ねたところ、彼は、「都市に根を下ろしたが、それまでの道のりはまだまだ遠い。都市に定住するための最大の難関は住宅問題だ。頭金を用意することはとても難しいと思う。たとえ頭金が支払えても、その後の住宅ローンのことを思うと、圧力が大きすぎる」と話した。

張さんも同じような問題に直面している。「衣類と食べ物は何とでもなる。住宅が最も手ごわい。また、都市では何でもお金・お金の世界だ。万一稼ぎが足りなくなったら、もうお手上げ」と彼女は語った。

〇どうしても捨てられない農村 農民の37.8%「土地請負権を放棄したくない」

多くの農民が、都市と農村の格差は縮まる一方だと感じている。彭山区鳳鳴鎮宝珠村一組に住む趙麗群さんは、17歳の時に都市に出て出稼ぎを初めてから28年、ずっと農村と都市の間を頻繁に行き来している。彼女は、農村が少しずつ都市の歩調に追い付きつつあることを実感している。村には新しい農村集会所が建設され、売店やフィットネス設備など何でもあり、都市生活と比べても決して見劣りしないという。

四川省統計局の統計データによると、出稼ぎ労働者が都市に定住したくない理由のうち、「都市では生活コストが高い」を挙げた人は43.6%に上った。また、「農村戸籍と都市戸籍では、それほど違いはない」と考えている人は38.5%、「都市生活を辞めた時に帰る場を確保しておきたいため、郷里の土地請負権を放棄したくない」が37.8%、「農村の土地がかなり値上がりする潜在力を感じている」人は33.7%だった。

〇都市に根を下ろすか、郷里に戻るか

都市戸籍の背後にある権益を享受し、都市の公共サービスを共有してはじめて、出稼ぎ労働者は本当に「都市に自宅を構えて定住する」ことが可能となる。

都市化とは、「人間の都市化」を意味する。専門家は、「都市化のマイナスポイントは、戸籍人口の都市化率が低いままであることに、主に反映されている。農村から都市に出て働く出稼ぎ労働者のほとんどが、相応の公共サービスを享受しておらず、市民としての権利を有していない」と指摘する。

中国社会科学院農村発展研究所の李国祥研究員は、次のような見方を示した。

農民が本当に関心を寄せていることは、「農村戸籍から都市戸籍に変わることで、実際にどのようなメリットがあるのか」という点だ。彼らが戸籍を変えたいという希望を持つか否かの鍵は、メリットとデメリットのバランスにある。都市は、社会保障制度の段階的な改善を進め、出稼ぎ労働者を各種保障住宅システムの対象に組み入れ、農民に対する都市の吸引力を高め、農村から迎え入れる新市民が都市公共サービスを享受し、本当に「都市に自宅を構えて定住できる」よう、環境を整えていかなければならない。(編集KM)

「人民網日本語版」2015年12月29日

 

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