2015年は人民元が国際化へ大きく踏み出した1年だった。最重要キーワードはSDR(特別引出権)への加入、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の正式成立、IMF(国際通貨基金)の出資比率改革案と管理改革案の通過、の3つである。
この複雑な国際環境にあって、中国は人民元の国際化に有利な時期を把握し、そのチャンスをしっかりと掴んだ。第一に、世界経済の減速にしたがって中国経済は中程度の成長を基本とする「新常態」へ移行した。しかし世界経済全体から見た中国経済成長の貢献度は、弱まったというより強まっている。2015年9月、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会が発表した報告によると、2015年に中国が7%の経済成長率を実現させれば、世界経済に対する貢献は7000億ドルに達すると予測している。これは中国が14.2%の経済成長率を達成した2007年を上回る金額だ。
第二に、米ドルが利上げ周期に入り、IMFが金融引き締めをすることで、一部の新興経済体が通貨危機となる可能性がある。相対的に為替相場が安定し、十分な流動性を持つ人民元は、より多くの国際需要を満足させることができる。人民元の国際化の前に、多くの流用余地と多くの推進機会が横たわっている。 このような背景の下、2015年に人民元は、国際化するための大きな一歩を踏み出したのだ。
IMFとSDRに加入できたことは、人民元の国際化にとってカギとなる突破であり、歴史的一里塚となるものである。 SDRは、IMFが創設した準備資産と記帳単位である。加盟国で国際収支赤字が発生した際、IMFが指定した他の加盟国から外貨と交換できる。これを通じて国際収支赤字を償還したり、IMFからの借金を返済したりする。また、ゴールドや交換可能通貨と同様に、準備外貨として充当させることができる。
一般的に、SDRに加入した通貨は「ハードカレンシー」と呼ばれる。 IMF理事会は11月30日、投票を通じ、人民元をSDRに加えることを正式に決定した。新たなSDR通貨バスケットは2016年10月1日から効力が発生する。人民元は5番目の通貨となり、その比率は10.92%である。 中国は長年の金融改革を経て、人民元がついにSDRの通貨バスケットに加わった。しかも人民元は英ポンドと日本円を超えてバスケットにおける3番目の比率となった。世界が「中国のハードカレンシー」を受け入れることになったのだ。国際金融構造と金融秩序もこれによって変わることだろう。
このことは、人民元の国際化が国際的に最も権威のある組織に認められたことを意味し、将来の人民元は世界各国の準備外貨として確固たる信頼を勝ち取ることを意味する。また、人民元がSDRに採用されたことは、事実上、米ドルの覇権的地位が弱まったことを意味し、SDRの通貨バスケットに多様な選択と多様性をもたらしたことを意味する。このことは、IMFの更なる改革と国際金融秩序をさらに堅固にするための土台を提供するものである。その意味で人民元のSDR加入は、中国にとっても世界にとっても利益のある大きな出来事だったと言える。
人民元がSDR金融バスケットに採用されるため、中国は金融改革の推進を加速させてきた。特に国内外の為替や株式市場の開放を加速させ、人民元の国際的使用率と流通率を高めてきた。2014年11月17日には早くも、香港と上海の株式取引市場の相互接続「滬港通」を開始させた。上海と香港の両市場の1日あたり越境取引は235億元になっている。これは金融資産取引の自由化・流動化の開放のきっかけと見なされた。中央銀行は2015年8月11日、人民元為替相場における人民元為替レート基準値(中間値)システムの改善を発表した。同日、対ドル人民元レートは大幅に下落し、1994年の為替改革以来となる下落となった。
しかし、オンショアとオフショアでの人民元の価格差を縮小させ、その結果、人民元の市場価格は国際投資家に認められるものとなった。中央銀行は2015年9月、海外中央銀行組織に対し、中国銀行の外為市場参入を許可した。中国人民銀行は2015年10月20日、ロンドンで50億元の手形を発行した。これは中国以外の地域で発行された初めての人民元による中央銀行手形である。これによりイギリスは、欧州の人民元取引センターの地位を確固たるものにすると同時に、人民元資産の国際的な使用と流通を増加させるものとなった。 AIIBの成立は、人民元の国際化推進にとって重要な戦略的措置といえる。
中国財政部の部長である楼継偉氏は2015年12月25日、取材に対し、「アジアインフラ投資銀行協定」がこの日、効力発生条件を満たし、同銀行は正式に成立されると述べた。業務準備計画に基づき、AIIBの開業式と理事会、取締役会成立大会が2016年1月16日~18日に北京で開催される予定だ。
中国が提唱し、成立させたAIIBは、ヨーロッパ・アジア地域で必要とされる膨大なインフラ投資需要に応えるものである。それと同時に、中国が提唱する「一帯一路」発展戦略と組み合わせることで、ヨーロッパ・アジア地域の経済復興と持続的な発展を促すものでもある。つまりAIIBは中国一国の利益追求ではなく、関連地域経済の長期発展にとって有利なものである。だからこそ、イギリス、ドイツ、シンガポールなどアメリカ同盟国の大きな支持と参加が得られた。また、人民元がより広く国際的に使用・流通される大きなきっかけともなるものである。
これ以外にも、AIIBの成立は国際金融秩序の改善にとって有益な措置といえる。AIIBは中国金融の実力と金融運営管理能力を発揮できるものだが、同時に、国際金融改革を後退させかねないものでもある。 IMF(国際通貨基金)の出資比率改革案と管理改革案が通ったことは、人民元の国際化にとって大きな事件だった。
2015年12月18日、アメリカ両院は、2010年のIMFの構成比率と管理改革に対する案を批准した。この改革案は、IMFの実力を倍増させ、新興経済体の比率を高め、IMF事務局により多くの発言権を持たせるものである。この結果、中国はIMFの投票権が3.8%から6%に増えた。
2015年は人民元の国際化に大きな進展と収穫のある1年だったが、これはゴールではなくスタートに過ぎない。中国はSDFの中に入り、IMFでは多くの発言権が得られるようになり、AIIBが設立した。しかし、唐の時代における世界金融の地位に比べればまだまだである。人民元国際化という任は重く、道は遠い。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年1月4日
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