文=『人民中国』総編集長 王衆一
今年の春節(旧正月)休暇(2月8日から)に「中国風味」たっぷりの正月映画2作が人気を呼んだ。1作はハリウッドの大作『カンフー・パンダ3(功夫熊猫3)』で、もう1作は国産の『西遊記の孫悟空、白骨夫人と3度戦う(西游记之孙悟空三打白骨精)』だ。『パンダ』は春節休暇中、興行収入が毎日上昇した唯一の映画で、上映期間はすでに1カ月に延長している。『孫悟空』はパリ・ゴーモン映画館で初上映され、今年の「中国映画の全世界同時上映」活動の序曲として、初めて中国映画が世界各国の50近い都市の一流館で同時に上映される。こうした現実を見ると、文化の流れの「逆転現象」は一考に値すると思う。
さて、ハリウッド映画が中国ファクターを取り込むのはさして新しいこととは言えない。ブルース・リーのカンフー映画と中国がプレゼントしたパンダは典型的な中国ファクターとアメリカ人に受け止められている。ハリウッドのドリームワークスはカンフーとパンダというふたつの中国ファクターに巧みにアメリカ的価値観を混ぜ込み、ハイブリッドのキャラクターを作り出し、中国、米国よろしく全世界にかけて、数多くのファンと追っかけを生み出している。『カンフー・パンダ』の第1作は8年前に世に出たが、今回の第3作には中国のアニメ制作会社のオリエンタルドリームワークスも参加したので、竜の戦士ボーが初めてゴールデン・ドラゴンとして登場するようになった。また、映像に取り込まれた水墨画の情緒から、中国アニメの大御所特偉の作品『山水情』の手だれを参考にしていることが分かり、ハイブリッド文化を吸収し自前のものとして発展させる手法がはっきり見て取れる。
そしてリライトされた中国の古典的な物語が新たな強い生命力を見せている。3D版『三打白骨精』は東方の誌怪小説の世界と欧米の魔界物語の世界を貫通させている。その中で「真相」と「心象」の相互補完性が語られ、勧善懲悪と霊魂救済の矛盾と葛藤が、孫悟空と三蔵法師との従来の関係を完璧に逆転させている。エピローグの巨大で立体的な「白骨の山」は『マトリックス』で繰り返し複製されるウィルス、『ハムナプトラ3』で殺し尽くせないどくろ兵団と同工異曲の妙味だ。この中国の古典的なファクターと世界的なポピュラーファクターとの融合を試みることが、今回の『孫悟空』を世界的な成功に導くノウハウだった思う。
コンテンツ市場のグローバル化が進むにつれて、われわれはつねに最大公約数、つまり世界的な受容度を念頭において模索してかなければならない。開放時代の文化交流のひとつの重要な特徴は、相互に自らの文化ファクターが他者にもらわれることを励ましあうということだ。文化的交流とは、相互融合のプロセスであることに違いなく、文化的な攻防は絶対ゼロサム・ゲームではない。『カンフー・パンダ』シリーズのウインウインの結末はその証だし、『孫悟空』の試みは、古典に対して意識的に普遍化的なリライトをすること、あるいは再脚色が、世界と対話する有力な道具だということを物語っている。
日本人読者向けの日本語月刊誌『人民中国』はここ数年、文化交流推進活動にますます力を入れている。たまたま、活動のロゴかキャラクターは上述のファクターと奇妙にも一致していることが意味深い。「Panda杯全日本青年作文コンクール」であれ、スタートを切った「孫悟空杯中日漫画コンテスト」であれ、東アジアの隣国同士の交流に際して、パンダと孫悟空が相変わらず最大公約数だ。
実際、パンダは超人気的な映像キャラクターになったのは、ここ数年の米国のリメークのおかげだが、孫悟空はずっと昔から東アジアの人々の記憶に溶け込んでいた。江戸時代に、孫悟空はすでに浮世絵に描かれていた。20世紀初頭、日本の絵本にも中国の伝統的なキャラクターとはかなり異なる孫悟空が現れた。戦後、日本アニメの始祖である手塚治虫は多くの孫悟空を題材にしたアニメを創作したし、鉄腕アトム、ドラゴンボールなど日本の古典的なアニメのキャラクターにはどこかに孫悟空の影を見つけられるほどだ。
若者たちにより自由に、大胆に創作してもらうために、「悟空杯」のロゴキャラクターは頭の輪「緊箍児(きんこじ)」を外したデザインにしている。異文化によってリメークされ、再び中国に帰ってきたハイブリッド・カンフー・パンダであれ、古典的な魅力をベースにリメイクされて世界に羽ばたいた孫悟空であれ、根本的な啓発は、中国ファクターの同時代化、共有化、未来化こそ、世界に貢献し、世界に影響を与える王道に違いない、ということだ。
人民中国インターネット版
|