東京大学教授 高原明生
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高原明生 | 中国にとって、あるいは中国経済にとって五カ年計画が大切なのはわかる。いくつか印象的な点を述べると、1つ目は、習近平総書記が2020年までに2010年の所得水準を倍にすると言っていること。それが難しいことはみんなわかっているが、決意を改めて示しているのが印象的だ。
そうすると経済運営が難しくなってくる。イノベーションを活性化し、生産性を上げるということは、もちろん前々から言われているが、問題はそこをどう強化していくのかである。現状では成長率が十分に上がらないので、やはりある程度の政府が主導する内需拡大策が必要であり、財政金融政策を緩め、内需をつくらなければいけない。この2つの異なる要求をバランスよく実現していくという難しさを、よく理解して取り組んでいるということが、2つ目に印象的だった点である。
3番目は、問題の多さとその対応である。中国はここまで発展し、色々な問題に直面しているから、ありとあらゆる問題に対応しなければいけない。それぞれにつき真摯に、真剣に取り組んでおり、対応が広く書かれている。
改革する姿勢が明瞭
中国の今後の発展について。これまで共産党は総じて上手に中国経済を運営してきたと思うが、高速発展だったため、問題も出てきている。それにどう対応すべきかというと、改革するしかない。
温家宝元首相の時に提唱された3つの改革は、国有企業の寡占体制の改革、分配制度の改革、そしてこの2つを実現するための政治改革だが、私もこの3つが重要であると思う。習近平・李克強政権は、三中全会の決定に表れているように、改革をしようという姿勢は明瞭だ。今後、いわば改革の本丸に取り組むことを期待している。日本の経験でも、例えばかつてのNTTや国鉄のような大きな国有企業を分割することで、ポジティブな結果が出ている。
微笑外交が大事
中国が大国化することで、様々な批判が集まっているようだ。日本も同様の経験をしているが、どの国も急に大きくなると悪口を言われるものだ。特に大切なのは、近隣諸国からどう見られているのかを客観的に判断し、大きな中国を他者の目で見たらどう映るのかを考えて行動すれば、大変な問題にはならないと思う。
ニコニコしていれば、みんなが中国を好きになるし、尊敬もする。微笑外交が中国にとって一番大事だということだ。そうすれば誰も中国をいじめない。中国の方々は慌てず焦らず、手を出さず、ニコニコしているだけで、大きいし歴史もあるのだから、自然とみんなに愛され、尊敬されると思う。
日中首脳が頻繁に会ってほしい
今後の日中関係について。とにかく首脳なり外務大臣なりが頻繁に会い、意思疎通をするべきだ。日本にせよ中国にせよ、相手についての正確な情報が、首脳に届いているのかが大切である。首脳同士が会うことで、第一次情報として、大抵のことが理解できるだろうから、首脳が頻繁に会うことを強く望む。客観的に自分を捉え、仲良くすることが双方の利益なのは明らかである。国内政治や文化摩擦などの邪魔があるかもしれないが、それは昔からあるもので、必ずや乗り越えられる。
世論調査による日中双方の好感度については、メディアの報道次第で変わるだろう。中国国内で日本脅威論が報じられると、また感情が悪化するだろう。日本も同じで、中国を叩けば雑誌が売れるという状態が変わっていないのは不幸なことである。だからこそ、首脳間で交流をし、全体の雰囲気を良くしていくことが大事だ。
中国の今後については心配の声が多い。中国経済がうまくいかないと日本経済にも影響するし、中国国内の社会安定にも影響する。みんな中国に期待している。そのためには改革が必要であると私は思う。
人民中国インターネット版
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