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飛び込み自殺の動画を見る前門駅の関係職員 |
北京の地下鉄では飛び込み自殺が多発しており、自殺願望を抱いていた人の自殺を誘発してしまうだけでなく、地下鉄職員にとっても心の傷の原因となっている。取材では、ホームドアのない地下鉄1号線と2号線で自殺が多発していることが分かった。地下鉄2号線の前門駅の関係責任者によると、自殺しようとしている人を説得したり、乗客が線路に降りた場合、すぐに救出したりするほか、自殺が起きてしまった場合に職員のカウンセリングを強化するなど、予防マニュアルを作成して対策を講じているという。これまでに、一部の地下鉄の駅では、事前の予防対策が功を奏して、自殺しようとした乗客の救出に成功したケースもあった。北京青年報が報じた。
マニュアルで自殺阻止も
前門駅の祝亜君駅長によると、飛び込み自殺を防ごうと、さまざまな対策を講じているほか、自殺が起きてしまった場合には、まずすぐに救出を図り、10分以内に運行再開ができるよう、すばやく処理を済ませるようにしているという。
2015年、前門駅では自殺しようとしていた20代の女性の救出に成功した。当時、その女性がホームをうろうろしていて乗車しようとしなかったのを発見した職員が、「何か助けが必要か?」と声をかけたところ、その女性は突然泣き出し、「死にたい」と話した。その後、職員はすぐに女性を安全な場所に連れて行き、管轄する警察を通して女性の家族に連絡。最終的に家族に連れられて女性は帰宅したという。予防マニュアル実施後、自殺を阻んだ成功事例の1つだ。
祝駅長は、「ここ数年、予防マニュアルの作成の過程で、前門駅で自殺を防いだ事例が何件かあった。自殺しようとしている人がいた場合、必ず警察を通してその家族と連絡を取る。また、女性のほうが親しみやすいので、女性職員に説得にあたってもらう」と説明する。
救出のためハシゴなどをすぐに使える状態に
地下鉄の利用者は1日平均1千万人を超え、加えて駅員の数にも限りがある中で、どのように自殺しようとしている乗客を発見しているのだろう?
祝駅長によると、これまでの経験では、飛び込み自殺の多くは列車の後部で発生することが分かっている。そのため、各駅に対して、監視センターで見る防犯カメラを列車後部とトンネル口に固定し、列車後部の乗客の状況をリアルタイムで監視している。また、前門中隊が集めたボランティア360人も大きな役割を果たしている。乗車の過程で、列車後部の乗客の状態や精神状態に意識的に注目し、異常があった場合にはすぐに情報センターに報告している。また、必要な時には、内回りと外回りのトンネル口に朝7時から午後7時まで、一人ずつ配置し、飛び込み自殺の発生を防いでいる。
これまでのケースを考慮し、各駅は、ハシゴや緊急時に必要な道具などをホームの両側にある監視ルームと器材室に置いている。各部屋のカギは、元々監視ルームに置いていたものの、緊急時に少しでも早く対応するため、ホームの各駅員が持つようにした。そして、誰が緊急事態に遭遇してもすぐに対応し、迅速に乗客を救出すると同時に、運行への影響を最小限にとどめられるようにしている。
駅員に対するカウンセリングも実施
飛び込み自殺は、駅員にとって心の傷の原因となっている。駅員らは、「飛び込み自殺に遭遇すると、その時の状況が頭の中に何度も出現し、すぐに心の落ち着きを取り戻すのはとても難しい」と胸の内を語る。
そのような現象について、北京回竜観病院の心理的危機の研究・予防センターの専門家・李献雲さんは、「飛び込み自殺に遭遇すると、駅員は心理的影響を必ず受ける。角度を変えて問題を考えるようにしなければならず、いつまでたってもつらい思いから抜け出せないなら、専門家に助けを求めなければならない。一番大切なのは、物事を見る角度。例えば、自分のミスで飛び込んだ人をけがさせたり、死なせたりしてしまったと考えてしまう地下鉄の運転士もいる。実際には、運転士は皆、自分のミスのせいにするべきではない」としている。(編集KN)
「人民網日本語版」2016年3月31日
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