このところ中国家電メーカーによる2件の海外合併買収(M&A)案件が注目を集めている。美的が約4億7800万ドル(約521億円)で日本の電機大手・東芝の白物家電事業を買収した案件、鴻海精密工業公司が約35億ドル(約3816億円)で同じく日本の家電大手・シャープの株式の66%を取得した案件で、シャープは海外企業の傘下に入った日本初の消費電子大手となった。人民日報が伝えた。
中国企業が国際的に有名な日系企業の製造ラインとブランドを買収したのは、中国企業のグローバル化発展の流れに合致した動きだ。詳しくみると、次の3点が挙げられる。
第一に、中国は今、世界で最も吸引力をもった投資先国から、外資を導入し対外投資を行うグローバルな越境投資国となった。こうした過程で、中国企業のグローバルネットワークが徐々に延伸し、ブランドが国際化していくとみられる。このような状況の中、中国企業が海外M&Aの歩みを加速させ、国際的に有名なブランドを傘下に収めるのは、国際化戦略を後押しするのが狙いだ。美的は海外企業を合併買収しなければ短期間で国内トップから世界の有名ブランドになることは難しく、鴻海は手を打たなければ刻みつけられた受託製造(OEM)企業のイメージから抜け出すことはできないとみられる。
第二に、国際金融危機という大きな背景や各国の危機対応策の波及効果の積み重ねが、越境M&Aに有利な環境を生み出している。これには安価な資金調達コストやM&Aのターゲット企業の価格交渉力の低さが含まれる。資金調達コストについていえば、史上まれにみる低金利の環境は長期にわたり資金の借り入れに苦しんできた発展途上国の企業にとって、資金を調達してM&Aに乗り出すチャンスをもたらしたといえる。年初以来、中国企業は世界でM&Aを活発に行ってきた。第1四半期(1-3月)に中国企業が関わった海外M&Aの規模は1千億ドル(約10兆9050億円)を超え、2015年全体の規模に迫った。価格交渉力をみると、金融危機の影響が続くことや日本をはじめとする各国の長期的な低迷により、こうした国々の企業の利益の見通しが弱まり、持続的な経営の力が殺がれ、革新発展への活力が押さえ込まれている。そこでますます多くの日本企業がその身を切り売りして、生き残りをはかるようになった。
第三に、買収された企業は大きな損失を出してはいるものの、それぞれの産業や分野においてなお大量の特許、コア技術、グローバル産業チェーン、グローバル営業販売ネットワークを有しており、ブランドには高い価値がある。そして中国企業にはこうしたものが欠けている。日本の企業、技術、製品が中国化を経て、中国の一般家庭に普及することが期待される。
だが中国企業は日系家電メーカーの買収にまつわるリスクを過小評価してはならない。最大のリスクは買収された企業の自主再生能力に対する懸念だ。投資もシャープも100年の歴史をもつ日本の名門企業だが、経営の構想や発展モデルなどはすでに時代遅れとみられる。実際、日本企業は日本人の消費習慣にとらわれて世界の広大な消費ニーズを顧みない傾向があり、これは吸収・発展における欠点であり、致命的な欠陥であり、改めるのはたやすいことではない。
中国の有名企業が経済の高度成長を背景として発展してきたものであるのに対し、日本企業は経済の低迷や停滞の下で長期にわたり経営を行い、理念やモデルが中国企業とは異なる。グローバル運営の過程で、中国企業に進出先の風土に合わないというリスクがあることは明らかで、M&Aによりグローバルネットワークを調整し利益を上げることの難しさも並大抵ではない。
実際には、中国企業による日系企業や他国企業のM&Aのリスクはこれだけにとどまらない。現在、世界市場において資産価格は低下しており、今後は世界経済の回復、資金調達コストの上昇、競争に参加する主体の増加にともなって価格が上昇するとみられるが、無計画な「土豪」(金遣いが荒く品のない金持ち)式のM&Aを行ってはならない。これと同時に、世界での越境M&Aの経験を振り返ると、成功率は低く、統合は困難で、利益を上げるまでの周期が長いという固有の特徴がある。こうしたことが越境M&Aを企業の一大戦略とし、細心の配慮が必要なビジネスと決定づけている。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年4月20日
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