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アップル、ファーウェイに特許料支払い 中国製造業の大きな転換点

 

国家知識産権局(知財局)がこのほど発表した情報によると、アップルは昨年、華為(ファーウェイ)から特許ライセンスを769件取得、一方のファーウェイはアップルから特許ライセンスを98件取得した。通信業では、2つの企業が特許ライセンス契約を締結する場合、取得したライセンス数の多い企業が少ない企業に対してライセンス料を支払う。通信テクノロジー分野で中国企業が米国企業からライセンス料を受け取るようになったことは、大きな転換を意味する。人民日報が伝えた。

この情報を素直に喜ぶ人も入れば、冷静に受け取る人もいる。報道によると、アップルはファーウェイだけでなく、エリクソンにもライセンス料を支払った。一方ファーウェイは、アップルからはライセンス料を受け取ったものの、エリクソンに対しては依然ライセンス料を支払わなければならない。転換はまだ始まったばかりであり、中国企業がさらに力をつけるためには、さらに多くのグローバルな産業チェーンの川上に立たなければならない。それでも、ファーウェイの業績は人を奮い立たせるものだ。世界一を目指す多くの中国企業と、特許取得に必死で取り組む無数の国内の開発者は、この瞬間に大きな希望を見出したことだろう。

中国製造業の中で、ファーウェイは異質な存在だった。同社の華々しい実績の背後には、28年にわたって情報通信分野一本に絞り、経営管理と研究開発に赤字覚悟で投資してきた努力と集中力がある。同社はまた、絶えず変化を求め、イノベーションへのこだわりを堅持してきた。

これは、全ての企業、特に製造業企業が堅持すべき基本的な成長の道のりだ。ファーウェイの任正非総裁はこのほど取材に対し、仮想経済を鍬、実体経済をトウモロコシに例えて「50~60本の鍬を使うだけなら、どうということはない。鍬を使ったら必ずトウモロコシを育て上げなければならない」と語った。実業の本分は、きちんとした製品を作り、より高い品質を目指し、新たなニーズを絶えずリードしていくこと。知的財産権、独自の製品、ブランドの評判がそろってこそ、その他のデリバティブサービスを発展させることができる。これは企業が安定的に発展するための元手となるだけでなく、近代国家繁栄のよりどころでもある。

実のところ、中国および東アジアの企業家たちはかつて、実業を心から愛していた。しかし現在、こうした「モノづくり」の精神は、米国の金融神話の誘惑に負けて薄まりつつある。「金が金を生む」という甘い誘惑により、米欧日などでは実業発展の原動力が日に日に弱まった。

中国にも、最も技術が不足していた時代、「冷蔵庫を壊す」勇気をもって製品のアップグレードを追い求めた企業があった。しかし株価が急上昇すると、一部の企業は利益を全て株式投資につぎ込み、国外メーカーのテレビの技術革新を黙って見ているだけになった。最も資金が不足していた時代には、自動車を売って研究開発に取り組む人もいた。しかし不動産価格が高騰すると、不動産投機に走る人が増え、工場さえも不動産物件に建て替えられてしまった。最も名声・評判が不足していた時代、多くの中国ブランドは製品の質と独自の特色を武器に台頭した。しかししばらくすると、多くのブランドは外資に売却されるか、悪質な価格競争に巻き込まれた。中国の実業が、強大化とモデルチェンジ・アップグレードのチャンスを逃したのは全て、「手っ取り早く金を稼ごうとした」ことが原因だ。もう二度と取り戻せないチャンスもある。

ここ数年の世界の製造業を見てみると、世界的な金融危機の打撃を受けた国のほとんどは、改めて実体経済を重視し始めている。米国本土の製造業は大きく回復し、装備製造業の上昇幅はドイツをも超えるほどだ。日本も「製造業復活」を打ち出し、ものづくりに関して優れた技能、経験を有する6千人以上の熟練技能者を「ものづくりマイスター」として認定・登録し、製造業の第一線で働く技術者や熟練工の育成に取り組んでいる。ドイツは「インダストリー4.0」プロジェクトを推進し、カスタム化・デジタル化された生産モデルを打ち立て、製造業のスマート化への転換を図っている。中国も遅れてはいられない。国家が打ち出した「メイド・イン・チャイナ2025年」計画や、消費市場がますます高い品質と機能を追及している状況は、中国の実業家たちに新たな成長の余地をもたらした。また、知的財産権の保護の完備や、「匠の精神」への社会的な認可がますます強まっていることも、イノベーションの新たな保護・奨励メカニズムを提供した。モノづくりに熱中する企業は今、新たな成長のチャンスを迎えている。

世界金融危機が発生した年、営業マンから代表取締役に出世したある日本の企業家は「日本では、『金のためなら何をやってもいい』という考えは通用しない。一歩ずつ着実に、汗水流して働くというのが正道だ」と語った。「メイド・イン・チャイナ」にも多くの「トウモロコシを育てる」人が必要だ。自分の畑を耕し、大切に育て、1年に1度でも、すばらしい作物を育て上げられれば、持続可能な発展という未来を収穫することができる。(編集SN)

 

「人民網日本語版」2016年5月11日

 

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