最近、韓国では米国製終末高高度防衛ミサイル「THAAD」の国内配備への抗議のうねりが巻き起こっている。韓米軍当局は8日、「朝鮮の核兵器及びミサイルの脅威」のため、在韓米軍基地へのTHAAD配備を決定したと発表した。韓国国防省は13日、慶尚北道星州郡にTHAADを配備すると発表し、地元住民の抗議を招いた。報道によると、韓国の野党は声明やSNSを通じて、青瓦台の「独断専行」を「大変遺憾」とするとともに、THAAD配備は得るものより失うものが遥かに大きいと指摘した。韓国政府は民衆を落ち着かせ、説得しようとしているが、大きな効果は上がっていない。民衆の怒りの炎の中、韓国にとってTHAADは厄介な問題となっている。(文:本紙特約論説員、中国国際問題研究院常務副院長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
THAADが米国にとって韓国を利用する道具であることに気づく韓国人が増えている。抗議参加者は、韓国はTHAAD配備を米国の圧力下でやむなく選択したのだと考えている。THAADは韓国に配備されるが、米軍が管理し、韓国にはなんら指揮権がない。さらに皮肉なのは、韓国の人口の半数近くを擁するソウル首都圏がTHAADの防御範囲に入っておらず、平沢、烏山、群山、大邱、漆谷といった在韓米軍基地の所在地が保護範囲となっていることだ。「THAAD配備はまさか在韓米軍の安全を守るためだけなのか?」と韓国世論は疑問を呈している。韓国日報はTHAADの韓国配備は始めから米国の覇権戦略の一部であり、米国の言いなりになる「屈辱外交」だと論じた。
米国は東アジア地域にミサイル防衛圏を構築するつもりであり、すでに日本にXバンドレーダーを配備している。今回韓国も引き込んだことで、ミサイル防衛システムが一体化し、韓国は米国のミサイル防衛網構築のお先棒に成り果てた。韓国としては、これによって戦略面で身動きが取りにくくなるのは必至であり、自縄自縛に等しい。
韓国は大国間の対立の渦に巻き込まれ、腹背に敵を受ける可能性がある。米韓がTHAADの韓国配備によって地域の戦略バランスを破壊することに、中国とロシアは異口同音に反対している。中露がTHAADをにらんだ軍事配備を強化するのは必至であり、韓国は大国間の対立の最前線に置かれるに等しい。中露との関係が悪化した場合、報復を招く可能性がある。
韓米はTHAAD配備の理由として、朝鮮の脅威への対処を再三強調している。だがTHAAD配備は「木に登って魚を得ようとする」ようなものであり、朝鮮半島問題解決への新たな障害となる。朝鮮半島問題の焦点は非核化だが、THAAD配備は朝鮮の核開発を阻止する助けにならない。反対に、今後THAADをめぐる争いが、朝鮮半島問題に影響を与える主要な安全保障上の問題となり、非核化が焦点ではなくなる可能性が高い。そればかりか、THAADをめぐる争いが朝鮮半島非核化問題における各国の協力を弱め、あるいは妨げる恐れもある。
今年4月に行なわれた韓国の第20回国会議員選挙で与党・セヌリ党は敗北した。朴槿恵大統領は対外政策でTHAAD配備を含む強硬政策を取ることで、劣勢を覆そうとした。だがこれは逆効果だった。韓国の世論調査機関によると、朴大統領の支持率は7月12日には36.3%だったが、THAAD配備発表から2日後の15日には32.5%に下落した。
実は朴大統領就任以来、中韓は日増しに接近し、韓国は多くの利益を得ていた。韓国は中米間でうまく立ち回ることで、経済的利益を確保するとともに、中国の力を借りて朝鮮核問題を抑制することもできる。だが米韓は「南中国海仲裁裁判」の結果が出る際に「THAAD」配備を発表した。中国に両面から圧力をかける意図があることは明らかだ。中国はこれをよく分かっている。
北東アジアには冷戦の氷が厚く残っており、地域の安全と安定は依然としてもろい。もし朝鮮半島の対立の先鋭化を避けたいのなら、実は複雑なことではなく、米韓がTHAAD問題で根本的に方針を改め、非核化に再度焦点を合わせ、朝鮮半島の平和と安定を的確に維持することだ。(編集NA)
「人民網日本語版」2016年7月28日 |