8月2日に正式に発表された日本の2016年版『防衛白書』の最大の「セールス・ポイント」の1つは、南中国海と東中国海の情勢について誇張の限りを尽くし、「力による現状変更を試み、高圧的な対応を継続させている」と中国をいわれなく非難したことだ。南中国海における中国の正常で合理的かつ合法的な建設活動に対して、白書は「既成事実化を着実に推進するなど、一方的な主張を妥協なく実現する姿勢を見せている」と非難した。白書はさらに、東中国海での中国海軍艦船の正常な航行に対していわゆる「危機感」を示し、「一方的に行動をエスカレートしており、強い懸念を招くものだ」とした。新たな防衛白書はこれまでのいわゆる「中国の脅威」を引き継ぎ、引き続き中国の「軍備、軍事費増加及びその不透明性」など偽りの言葉を鼓吹した。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所副研究員)
日本の2016年版『防衛白書』について、人民網は中国社会科学院日本研究所の厖中鵬副研究員に話を聞いた。
2016年版の日本の防衛白書には大きな背景が2つある。1つは、いわゆる南中国海仲裁裁判の裁定結果の発表。もう1つは集団的自衛権の行使容認を柱とする新安保法の正式な施行だ。こうした中、日本による防衛白書の正式な発表には、自ずと深い意味がある。
第1に、日本周辺の情勢が緊張しているとの「雰囲気」を意図的に作り出すことには、「外部」から「内部」へと圧力を伝え、「知らず知らずに」日本の世論と民衆を「憲法改正」へと導く意図がある。「改憲」は一貫して安倍氏の「宿願」と「夢想」であり、参院選勝利後、安倍氏は改憲の「大願」を強くしている。だが「改憲」の道には多くの障害と困難がある。その最大のものが「民意」だ。日本の大多数の民意の支持または理解を得られなければ、「改憲」は最終的に失敗に終る可能性がある。したがって、安倍氏にとって民意への働きかけは、「改憲」準備作業において最も最初に着手すべき措置だ。だが民意への働きかけは極めて困難だ。直接的、単刀直入ではなく、適切な方法で取り組まなければならない。したがって、外部環境から着手し、外的脅威が日増しに差し迫っているとの事実を捏造し、戦争が迫っているとの幻覚を誇張することで、日本の民衆に周辺情勢の緊張は一刻の猶予もならない段階に達していると信じさせ、「改憲」が必須であり、「改憲」して初めて情勢を緩和し、「改憲」によって初めて外的脅威に対処できると信じさせる必要がある。
第2に、米国などと歩調を合わせて、引き続き南中国海問題をかき乱し、利益を得ようと愚かにももくろむ。南中国海仲裁裁判の結果が発表された後、情勢の推移は米日などの望んだとおりにはいかず、多くの国、国際組織、海外の識者は中国の正義の主張に次々に声援を送った。米日などは南中国海仲裁裁判の裁定を利用して中国を一層孤立化させるとの本来の計算が実を結ばず、煩悶する結果となった。特に日本は、南中国海情勢に最も「注目」している域外国だ。南中国海問題において、日本は当事国ではなく、距離を置くのが当然なのに、南中国海問題のエスカレートを喜び、機に乗じて「利益を得よう」としている。南中国海情勢は緊張するほど、日本にとってはそれこそ「好機」だ。南中国海情勢が「混乱」すれば、軍事衝突の可能性が高まり、南中国海の一部の周辺国は日本を「求め」るからだ。そうすれば日本は混乱に乗じて友好関係の強化を名目に一部の国に軍事武器装備を「売りつけ」、軍需産業を拡大するとともに、南中国海周辺諸国への軍事的影響力を拡大できるからだ。
また、南中国海を日本の「軍事実践」の試験場、新安保法実行の切り口とすることができる。もし南中国海情勢が「コントロール不能」な段階に達すれば、日本は2015年の新版『日米防衛協力指針』及び正式に施行された新安保法に基づき、「日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態」として、米国との軍事行動の連携を前提に、いわゆる「集団的自衛権」を行使し、米国の艦船・航空機と共に南中国海に出現できる。これは日米同盟の実質的関係を強化する一環であり、日本が自由な「海外出兵」を実現して軍事的野心を暴露する重要な戦略的ステップでもある。
だが、苦心惨憺して「海洋問題」を騒ぎ立てれば、日本に実益と安全がもたらされるのだろうか?共同通信社は「国民の安全と安心を確保するには、自衛隊の活動の拡大に偏重するのではなく、近隣各国との対話を堅持するなどして有効な方法を探ることも大切だ」と指摘した。共同通信社はまた「安倍政権が昨年打ち出した安保関連法が日本の安全にとってどのような効果があったかは、はっきりしないとしか言えない」とした。
日本は第2次大戦後長い平和を享受してきた。今後も「平和の陽光の下」で暮らすことができる。だが「改憲」と「軍拡」の逆流は平和と逆行するのみであり、「改憲」と「軍拡」の歩みを進めるほど、平和は減り、危険が多くなる。
現在、アベノミクスはすでに疲弊し、日本経済は低迷し、少子高齢化が進行している。「海外出兵」「軍拡・軍事力強化」という過激な行動は国内の社会、民意、経済と一致せず、こうした「軍事力強化戦略」は空中の楼閣に過ぎない。
日本は元々南中国海問題を利用して中国の発展を牽制し、さらには中国の平和的発展の足並みを乱して、漁夫の利を得ようと計画していた。だが現実には、南中国海問題は本来存在すべきでない問題だ。米日など域外国がけしかける形で人為的に作られた問題であり、現在この問題は米日など域外国の望む目的を達成せず、反対に日本自身を悩ませている。(編集NA)
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「人民網日本語版」2016年8月4日
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