日本の対中直接投資は12年をピークに減少を続けている。中国商務部によれば、2016年1-7月における日本の対中直接投資額は前年同期比10.9%減の19億1000万ドル(約1900億円)にとどまった。
中国経済に詳しい瀬口清之キャノングローバル戦略研究所研究主幹は、最近の論文の中で、日本企業の対中投資現状に懸念を示した。
論文によると、今の中国経済は3つの変化を示している。
(1)投資主導から消費主導へのシフト=2011年以降はほぼ一貫して消費の寄与度が投資を上回り、今年の上半期はGDP成長率に対する消費の寄与率が73.4%に達した。
(2)中間層の急拡大=1人当たりGDPが1万ドルに達した都市の人口の合計は、2010年に1億人だったが、2013年には3億人を超えた。最近では4億~5億人に達していると見られ、2020年には8億~9億人にまで増加する見通し。この結果、高付加価値の製品・サービス需要が急拡大している。
(3)沿海部主導から内陸部主導の経済成長=北京、上海、広州などの沿海部主要都市はすでに先進国並みの所得水準に達しており、徐々に安定成長期入り。これに対して、内陸部の武漢、重慶、成都、西安等の主要都市は高度成長を継続。欧米・韓国企業はこの内陸部市場の開拓に注力している。
つまり重工業指標だけで、中国経済の実態を把握できないというわけだ。
今年上半期の主要国の対中直接投資額の前年比の伸び率は、米国50%、ドイツ90%、英国169%、韓国18%、台湾34%と大幅に増えた。しかも、欧米主要国等の対中投資姿勢が積極化し始めたも今年からではなく、2、3年まえからである。
日本だけが大幅に減少している原因について、瀬口氏は多くの経営者が上述の構造変化を認識せず、悲観なメディア情報を丸呑みにし、旧来の中国観から抜け出せないと分析した。
人民中国インターネット版2016年8月24日
|