2001年9月11日、米ニューヨーク・世界貿易センタービルのツインタワーがテロ攻撃で倒壊し、全世界が驚愕した。それから15年、世界のテロ対策は依然厳しい状況にある。米国、欧州、中東などでテロの頻度と激しさが増している。「日に日に厳しさを増すテロ対策の状況に国際社会はどう対処し、『叩くほどテロが増える』悪循環からどう脱すればいいのか」と改めて再考し、問わずにはいられない。
■「次の15年も無駄にするわけにはいかない」
例年同様、今年の9月11日には全米各地で米同時多発テロ追悼行事が行なわれた。だが例年と異なるのは、今年は米大統領選の年であり、テロ対策をめぐり候補者の政策が全く異なることが、米国を深く引き裂いているということだ。頻発する銃撃事件やテロの暗い影の下で暮らす米国民はかつての安全な感じを取り戻せずにいる。テロ対策は解答のない難題へと変わりつつある。
米同時多発テロ発生から1カ月後、米国は対テロ戦争を発動した。対テロ戦略において、ブッシュ米大統領(当時)は「単独行動主義」と「先制攻撃」の理念を打ち出し、強化し続けた。「ブッシュ大統領はテロ組織の生息地を壊滅すればテロリストを完全に消滅させられると考えていた。だがテロリズムはかえってさらに多くの場所で出現した。長期的に見て、米国の戦略ミスによってテロの脅威は高まり、テロ対策任務を一層困難にした」と、米国務省で元テロ対策を担当したダニエル・ベンジャミン氏は分析する。
オバマ大統領は就任後、対テロ戦略において全面的縮小の方針に転じ、アフガニスタンとイラクからの米軍撤退のタイムテーブルを速やかに示すと同時に、初めて本土をテロ対策の最も重要な「戦場」と位置づけ、戦略の重点も「域外でテロを叩く」から「国内のテロを防ぐ」へと転じた。
だが、国際社会の合同打撃を受けてアルカイダが次第に息をひそめる中、米軍撤退後の大きな権力の空白はかえってテロの新たな温床を生んだ。オバマ大統領は対テロ政策の重点を国内へと転じたが、ボストンマラソン爆発事件、カリフォルニア銃撃事件、オークランド銃撃事件などの事実は、テロをどう取り締るかが依然難題であることを証明している。
「われわれには新たな対テロ戦略が必要だ」。米同時多発テロ調査委員会委員長のトーマス・キーン氏とリー・ハミルトン氏は9日「われわれは次の15年も無駄にするわけにはいかない。テロ対策は長期的なプロセスだが、つまるところ、正しい戦略こそが唯一の希望だ」と呼びかけた
■テロ対策は「速戦即決」の戦争ではない
過去15年間の国際テロ対策の状況は憂うべきものであり、テロ活動は激しさを増している。「イスラム国」「アルカイダ」など過激派組織は中東で猛威を振るうだけでなく、欧米諸国でも繰り返しテロを起こしている。米国の中東政策の失敗は欧州諸国の安全をますます脅かしている。欧州は民族対立が激化し、テロのリスクが増大しているほか、難民問題で直接の衝撃も受け続けている。欧州の空にもテロの暗雲が立ち込めている。テロ対策は欧州の政治・安全保障における重要な議題となった。
フランスは2015年初めからテロに繰り返し見舞われてきた。政府はわずか2年の間にテロ対策措置を強化し続け、警備部隊の強化、軍事費の増加、軍事力と警察力の拡充、過激思想を宣揚する組織や宗教施設の取り締りなど一連の措置を講じて、国民の安全確保に努めてきた。ドイツとベルギーもテロ発生後に国境管理の強化、警備・パトロールの強化などの措置を相次いで講じた。EU内では政治、経済、軍事分野で対テロ同盟の強化を呼びかける声がしばしば聞かれる。
元ベルギー司法相顧問を務めた欧州の安全問題専門家によると、2015年1月のシャルリー・エブド襲撃事件を受けて欧州各国はテロ対策を強化し始めた。欧州のテロ対策が「速戦即決」の戦争ではなく、各国間のより緊密な有無相通じる、心を一つにした協力を要するという一致した共通認識を各方面が形成する必要があると現地では指摘される。国境を越えるテロの性質から、国家間の連携した「戦闘」があって初めて、テロの温床を消滅させる望みが生じる。
■「個別対策と抜本的対策を兼ね備えて」こそ実効性ある措置
米同時多発テロから15年が経ったが、アルカイダは取り除かれず、西アジア・北アフリカの複数の国は依然動乱の中にある。中東情勢の混乱はアルカイダに勢力拡大の余地を与えただけでなく、過激派組織「イスラム国」の登場も後押しした。米国がアフガニスタンで戦争を発動して以来、テロを主な形式とする対抗は拡大し続け、市民多数が被害者となっている。米国務省発表した「世界テロ情勢報告2015」は、2015年にアフガニスタン、シリア、トルコなどでテロ襲撃と死者の数が増加傾向にあったことをはっきりと示している。また、2015年のテロ発生件数でアフガニスタンは2位、パキスタンは3位であり、同年の両国のテロ発生件数はいずれも1000回を超えた。
パキスタン平和研究所の所長によると、米同時多発テロ発生後、米国は軍を派遣してアフガニスタンのタリバン政権を転覆させた。軍事的手段によってアフガニスタンの秩序を再構築する考えだったが、アフガニスタンはそれから15年間の衝突を経験し、国内の安全情勢は日増しに動揺し、米軍も泥沼から抜け出せなくなった。これは軍事介入がアフガニスタン国内のテロ問題を解決する効果的な道ではないことを十分に証明している。米国のテロ対策措置はテロに対して「病状に応じた投薬」を行なっていない。日増しに厳しさを増す対テロの新たな状況を前に、国際社会は「個別対策と抜本的対策を兼ね備えた」テロ対策措置を打ち出す必要がある。(編集NA)
「人民網日本語版」2016年9月12日
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