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世界の凝集に成功した舞台

 

 

 

元日本首相 アジアインフラ投資銀行顧問 鳩山由紀夫

 

   私は2009年に、日本の総理大臣としてG20ピッツバーグサミットに参加しています。日本はもともと主要国首脳会議(G8)のメンバーでしたが、その後ウクライナ問題でロシアが外れてG7になりました。中国とロシアが参加していないG7は、ほとんど意味をなさず形式的なものになっていると私は思っています。

  一方、G20は発展途上国や地域の代表が加わっていることから注目を集めるようになりました。現実に08年のリーマンショック後に開かれたG20は、世界経済を回復する上で役割を果たしていますし、今回の杭州サミットも、いくつかの重要な意義があると私は考えています。

 まず、20カ国地域の首脳が杭州に一堂に会することで、世界の首脳が対話を行うきっかけになることが挙げられます。現実に、今回のサミットでは習近平主席と安倍首相、オバマ大統領、プーチン大統領などの首脳同士が会談を行い、胸襟を開いて深く交流を行っています。

 次に、中ロの接近、日米の接近が見られ、この4カ国の関係がうまくいっているとは言いがたい国際情勢の中で、習近平主席が橋渡し役となる意義はとても大きいものです。さらに経済面のみならず、平和を構築し、問題を未然に防ぐために大きな役割を果たしていかれることも期待できます。

 中国でG20が開催されることの意義はまだあります。世界経済が厳しい状況下で、発展途上国のリーダーの中国が孤軍奮闘し、さらに「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」のような新しい構想もなされた事実を忘れてはいけません。このリーダーシップの下、世界経済がより前向きな方向へ動くチャンスが捉えられるとしたら、これも大変大きな意義となるはずです。

 リーマンショック以降、欧米諸国や日本が大きな打撃を受ける中で中国は成長を続けてきました。その事実がG20を通じて明らかになることや、習近平主席が「一帯一路」の構想を通じて周辺諸国との懸け橋となり、道路や港湾整備に協力を求めることで投資環境をつくり、遅れている地域に光を与えることは、世界経済を機能させる役割を果たすと思っています。ですので、このタイミングで中国がG20の開催国になったことは、とても良いことだといえます。

 また、今回は約1年半の時を経て日中首脳会談が実現しました。さらに、その前が14年の11月ですから、隣国の首脳同士としては会談の機会があまりにも少ないと思っています。ですから、今後はできるかぎり首脳会談の頻度を高めていただきたいところです。

 会談の内容について、安倍首相は率直に話し合おうと言っていますが、例えば島の問題にしても「領土問題は存在しない」と話し合いに応じないのではなく、話し合いに応じる機会であってほしいと私は思っていました。一番ぎくしゃくしている原因を議論から外すわけにはいきません。両首脳が歴史的経緯を虚心坦懐に話し合い、理解を深めていくことが大切です。外務省の公式見解ではないものの、周恩来総理や田中角栄首相の間で認め合ったことは、大きな政治的決定ですから、棚上げすべきは棚上げし、後世に委ねようという方向に導いていけば、島の問題については少なくとも突発事故が起こることはなくなると思います。

 また今回、安倍首相は海洋問題も提起していますが、日本と米国が組んで航行の自由をもとに、仲裁裁判所の意見を全面的に認めるよう中国に求めることはあってはならないと思っています。スプラトリー諸島(南沙諸島)の問題はフィリピンと中国、ベトナムと中国の間で答えを出せばいいことで、これは島の問題において、日中双方の話し合いで答えを出せばいいのと同じことです。最近、ASEANと中国の間で、02年に作られた「南シナ海における関係国行動宣言(南海各方行為宣言)」をより法的拘束力のある規範に作り変えようという動きが出てきているようです。これは仲裁裁判所の件で中国が不利な状況に陥ったことが逆に話し合いの機会を作り、対話で解決する機運が出てきたということでしょう。従って日本がそこにくちばしを挟むことは、日中間の島の問題に他国がくちばしを挟むのと同じく、望ましい話ではないと思います。歴史の事実を一つ一つ積み重ねながら答えを出す作業ができれば、首脳会談にも意義が生まれることでしょう。だからこそ、できるだけ数多く首脳が顔を合わせる機会を約束すべきなのです。

 今後の日中関係の発展の行方については、安倍首相、あるいは日本の外務省にかかっていると思います。ですが、政府同士の関係はまだぎくしゃくしたところが残っているので、今後は民間交流を深めることが非常に大切になってきます。今は政治的不和が民間にも影響を及ぼしています。聞くところによると、日中間の貿易高は過去日本が1位だったものが米国に抜かれ、EUに抜かれ、最近では韓国にも抜かれて、現在日本は第4位だそうです。中韓関係が良いことは結構ですが、日本の人口の半分しかない韓国が日本よりも貿易量が多いという状況はありえないと私は思っています。よって、日本も民間の対中貿易を増やしていくべきだと思いますが、それが政治的圧力で十分に機能していないのであれば、それはとても残念なことです。民間の交流を深め、わだかまりを相互信頼によって解消していくケースを積み重ねていくことが、今後の日中関係改善のためには大切なことであると思います。

人民中国インターネット版 2016年9月18日

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