ここ数年、中国政府が海外進出戦略の推進に力を入れていることを背景として、資金力のある中国企業の間で対外投資ブームが起きており、世界の中での資本のより合理的な配置や配分を追求するようになっている。デロイトトーマツ(DT)はこのほど、中国企業の対日投資が急激に増加しているとの見方を示した。DT中国サービス部の楊瑩代表はこのほど北京で行われた中国企業対日投資シンポジウムおよび「中国企業の対日投資指南」(改訂版)発表会の場で、「中国経済は今、モデル転換の時期をくぐり抜けつつあり、供給側の構造改革をはじめとする各種の経済改革措置に後押しされて、中国企業はますます活発になり、これから対日投資を拡大することが予想される。中国企業の対日投資は一定の期間を経ており、全体としてスタートは遅かったが、増加ペースは速い」と述べた。「国際商報」が伝えた。
DT弁護士法人の鄭林根ディレクターは、ここ数年間の中国企業の対日合併買収(M&A)の状況を説明して、「中国の対外投資は高度成長が13年続き、2015年には1456億7千万ドル(1ドルは約105.2円)で過去最高を更新し、世界2位の資本純輸出国になった(米国が1位)。それと同時に、中国企業の対日投資も急上昇の動きをみせている」と述べた。
楊代表は、「最近、中国企業の対日投資の分野が拡大を続け、特に民間企業の対日投資が目立って増加しており、分野はハイテク、製造、消費、観光、不動産などに及んでいる。またグリーンフィールド投資に比べ、株式を通じたM&A型投資が著しく増加している」と指摘した。
鄭ディレクターは、「これまでと比べて、中国企業の対日投資には新たな特徴がみられる。主体をみると、非国有企業がますます活発になっている。産業をみると、これまで主に製造業と外食産業に集中していたのが、最近は中国の消費のバージョンアップと訪日観光旅行の効果の顕在化にともない、中国企業の対日投資は消費財、観光、小売、テクノロジー・メディア・通信(TMT)の分野でとりわけ増加している」と説明した。
このほか、投資スタイルをみると、グリーンフィールド投資は準備期間が長く、ペースがゆっくりで、柔軟性が低いことから、中国企業は海外M&A方式を選ぶところが増えている。投資のニーズでは、中国企業の対日投資におけるニーズがより多様化し、これまでのように技術や管理経験を獲得することを重視するだけでなく、ブランドや資産の獲得を重視する傾向が徐々にみられるようになり、価値の創造が駆動し、資産の配置が駆動する一連のM&A案件が登場した。
しかし15年の世界の対日直接投資は約2千億ドルで、中国は18億ドルで約1%を占めるに過ぎない。15年末現在、中国企業の非金融分野の対日直接投資は累計27億ドルだ。DT中国の日本サービスチームの三浦智志代表は、「中日両国の貿易規模から考えても、日本企業の対中投資額をみても、中国企業の対日投資には非常に大きな発展の可能性がある」との見方を示した。
今後、中国企業の対日投資では次の3分野に注目する必要がある。
(1)中国人観光客の訪日観光旅行や日本での消費。中国の1億人を超える富裕層の消費がバージョンアップするのにともない、中国人観光客の日本旅行と日本での買い物は長期化するとみられる。観光レジャー産業、小売サービス産業、消費財産業が対日投資の長期的なホットポイントになる見込みだ。
(2)中国資本のグローバル化配置。海外での資産配置が中国企業の必然的な流れになり、特に東京のオフィスビル、ショッピングセンター、ホテルといった高級不動産業への注目度が高い。
(3)TMT分野への投資が活発になる。日本の漫画・アニメ作品の知的財産権(IP)は中国にたくさんの愛好者がいる。中国のインターネットの勃興発展が日本の漫画アニメ産業に巨大な潜在的市場を提供した。今後はより多くの中国のネット資本が日本の漫画アニメ娯楽産業に進出するとみられる。中国は日本と同じく人口高齢化の難局に直面し、ロボット分野には広大な市場の可能性があり、今後はより多くの中国資本が日本のロボット分野に進出することが予想される。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年10月31日
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