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中日保険会社はそれぞれなぜ海外M&Aを行うのか?

 

米格付け会社・ムーディーズ・インベスターズ・ サービス(MCO)はこのほど、「ここ2年間、日本と中国の保険会社が、米国や欧州、アジアの生命保険会社、非生命保険会社を買収するケースが顕著に増加している。しかし、海外で買収を行う際、日本と中国の保険会社では考えていることが全く異なる。中国と日本の保険会社の海外での買収が激増していることは、両市場のそれぞれの動向を反映しており、異なる信用リスクを生んでいる」との見方を示した。経済日報が報じた。

MCOの厳溢敏・総裁は、「日本での経営環境は思わしくなく、投資の機会も少ないのを背景に、日本の保険会社は成長の機会を海外に求めている。日本の生命保険会社が海外で買収を実施する際は、その収益率向上が主な目的であるのに対して、非生命保険会社は業務の拡張が主な目的となっている。日本の保険会社の買収の対象は主に、運営状況が良好で、成熟した市場において高い評価を得ているリーディングカンパニー。その買収の規模は巨大で、買収側の業務に潜む再建や、悪化する可能性のある財務状況が主な信用リスクの源とされている。債券発行によって行われた資金調達による買収の場合、特にそう言える」と指摘する。

一方、中国の保険会社は、中国国内の市場に依然として成長のチャンスが十分にあり、海外で買収を行うのは主に業務多元化が目的だ。買収の対象は通常、中規模の、長期に渡って付加価値の向上や業務成長が望める企業だ。中国の保険会社の海外における買収の規模は通常小さいため、潜在的な信用リスクも小さい。ただ、ターゲット企業・市場、ビジネスラインを熟知しておらず、買収自体に大きなリスクが伴う。

MCOの予想では、中国と日本の保険会社の買収に伴うリスクは中程度で、業務規模の強化により費用対効果が多元化されるほか、融資の方法が信用状況に与える影響も小さい。また、買収・統合が比較的複雑で、新しい市場の管理が必要になる取引もあり、リスクが課題になる。MCOは、「市場環境が不明瞭で変動が非常に大きいことを背景に、中日両国の今年の海外拡張の速度は鈍化しているものの、保険会社の海外投資を後押しする基本的な要素は依然として存在する」としている。

日本の保険会社は、低金利、経済・保険料の伸びが弱い、エクィティ系、日本政府の債務系の資産配置の割合が過度に高い、自然災害のリスクが非常に高いなどの課題に直面している。海外への投資を拡大することで、日本の保険会社は、市場リスクを分散させることができる。これも、海外でM&A(合併・買収)を実施する主な目的の一つだ。

米国や欧州市場と比べると、中国の保険会社は、自国市場の成長の大きなポテンシャルの恩恵を受けているものの、市場の集中度が高い、資産リスクの蓄積、監督・管理、金融環境の変化が速いなどの要素がもたらす業務圧力の増加に直面している。そのため、海外での買収を通して新しい市場に進出し、新しい資産配置の選択肢を得て、多元化を実現している。その他、継続して成長する新業務エクスポージャーや関連の専門技術に関する知識の取得なども、中国の保険会社にとっては有利な要素だ。中国資本の保険グループは、非保険資産の買収を積極的に進め、業務のさらなる多元化を実現している。長期的に見ると、この戦略は保険負債のリスク回避に有利となる。(編集KN)

 

「人民網日本語版」2016年12月1日

 

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