日本の安倍晋三首相は年末が近づくなか、外交の取り組みを続けている。今月下旬に真珠湾を訪問し「戦没者を追悼」するほか、来週にはロシアのプーチン大統領を迎える。安倍首相は外交に勤しんでいるが、日本の対外関係には特に大きな見どころがなく、危険な状況を迎えている。
安倍外交、成果よりも目立つ危機
安倍首相は再任後、いわゆる「地球儀を俯瞰する外交」という壮大な戦略的外交構想を練り、現在まで五大陸の数十カ国を歴訪している。強い国への復興を目指す日本のエリート層にとって、安倍首相の戦略的外交と「積極的平和主義」の方針により、日本の対外政策の連続性と予見性が維持され、国際社会と地域における「可視度」が高まっている。日本の経済援助プログラムのばら撒きに、明確な政治目的が含まれるとしても、客観的に見ればアジア・アフリカ・中南米諸国の発展を促すことを認めなければならない。国際事業で声を上げ力を出せば、少なくとも世界の新たな安全問題とグローバルガバナンスにとって、利益がないわけではない。
ところが安倍首相は4年間忙しく働いてもあまり成果を手にできていないが、日本の外交戦略面で惨憺たる業績を記録し続けている。対米関係は危険が満ち、対中関係は和解せず、対露関係の前途は不明だ。この3つの重要な関係を適切に処理できなければ、安倍首相の対外政策が水の泡となり、本人の政治生命に危険が及び、政権運営の基盤が損なわれる可能性がある。また安倍首相の外交における補助となる2つの柱のうち、対韓関係はやや改善されたが、韓国の政局混乱により複雑化している。やっとのことで抱き込んだ南中国海の「小さなお友達」も転向中だ。当然ながらこの一連の対外関係において、安倍首相を最も焦らせているのは、米国の政情の変化だ。米大統領選の結果を読み誤ったのは日本だけではないが、これほど狼狽しきっているのは安倍首相の他にいない。安倍首相は焦燥に駆られ、慣例を破りニューヨークに赴き次期米大統領に「謁見」した。全世界の前で日本の外交は脆弱という真の姿をさらけ出し、日本に大国としての戦略的地位がなく融通を利かす余裕がない現実を露呈した。
発想は活路を決め、高みは態度を決める。発想が間違っており、堂々と構えていられないことから、安倍首相は忙しく働いても効果がなく、混乱を極めている。これにより日本の戦略的地位が下がり続け、地政学的にも安全環境的にもより厳しい境地を迎えている。
安倍首相の外交には本来、経済推進、安全保障、影響力拡大という、関連し合う3つの目標があった。しかし中国の台頭と成長により、安倍首相は強いプレッシャーを感じるようになり、中国への認識と位置づけに深刻なズレが生じた。中国との競争や駆け引きのため一日中悩み、この3つの目標の勝負の基準、外交資源の大半を中国との駆け引きに絞っている。中国けん制、中国対抗が正確な政治になり、自律的に運行している。新たな情勢を迎え、中日の駆け引きと競争の影響が外部に波及し、国際化・多国籍化の様相を呈している。安倍首相は今年展開した「外交の秋」で、対露外交の進展を目指し、韓国と軍事情報保護協定に署名し、「インド太平洋戦略」でインドを支援するとし、フィリピン・ベトナム・ミャンマー・マレーシアとの関係を強化し、TPPを主導すると主張した。そのすべてに中国けん制の意図が含まれる。
苦しい時は自分頼み
日本メディアは、安倍首相の外交が未曾有の危機に陥っていると論じており、日本が米国の「万年属国化」の危機に直面すると恨む声もある。現状を見ると、日本の外交の課題はチャンスを上回るが、危機の中にチャンスがないわけではない。安倍首相は正反対の2つの選択肢を突きつけられている。
まずは古い選択肢、あるいはそれのアップグレード版だ。これはつまり米国との連携強化と、遠く離れた国との交流で中国をけん制するという発想にこだわり、さらには米国のアジア太平洋リバランス戦略の動向が不明な時に無理に先頭に立つなどだ。そうすれば安倍版「日本の夢」、すなわち自主的な政治大国になるという目標の実現は、遠い先の話になる。
次に日本の外交の全体戦略を調整し、対中関係の発展の方針を調整する。危機の中でチャンスをつかみ、打開を目指す。米国は将来的にアジア太平洋で縮小する傾向を示しており、日本が健全な自主自立の道を歩むため、これまでよりは条件が整うことになる。アジアの開発途上国の集団的台頭により、日本の発展と経済的利益の基礎の所在地が移り変わる。日本の外交の振り子は、「日米同盟+日中の協議」というバランスの取れた、穏健で保守的なルートに適度に調整されるかもしれない。
アジア太平洋の構造は岐路に立たされており、アジア太平洋の地域協力と一体化が新たなチャンスを迎えている。TPPが米国により妨げられ、米国の貿易保護効果が世界経済の不確定性を高めれば、アジア経済に衝撃をもたらしうる。そうなればアジア太平洋は自立する必要があり、地域の自由貿易計画も発展のチャンスを迎える。日本はこれにより地域発展の大家族に溶け込み、実益・地位・影響力を手にすることができる。願ってもないことだ。
習近平国家主席はペルーAPEC首脳会議で、多国間貿易の発展を支持し、中国の扉が閉ざされることは永遠にないと強調した。中日はRCEPと中日韓FTAを共に推進し、アジア太平洋の多国間貿易発展を目指すことが完全に可能だ。中国は協力とウィンウィン、共同発展を軸とする新型国際関係の構築を主張しているが、これは同じく中日関係の発展に適用できる。しかし安倍首相は中国を前にして「政経分離」を強調し、中国を収益源としかとらえておらず、利益の共有と協力によるウィンウィンの発想が足りない。日本側は最近、「新しい時代にふさわしい中日関係」を主張したが、これは中日の戦術相互損失関係を、正常な利益の交流という低レベルな状態に戻すことしか目指していない。この誠意と高みのない考えに、力強く推進する「中国包囲・中国けん制」の外交が加われば、やはり裏表のあるやり方と言わざるを得ない。
順調であれば、安倍首相にはあと数年の任期が残されている。これほど長年に渡り政権運営したにも関わらず、日本の周辺環境を悪化させ、対中関係を互いに疑念を抱き損失を被るという袋小路に追いやり、日本をますます米国から離れられなくし、地位を低下させただけならば、その政治家としての歴史的評価と地位については推して知るべしだ。人を頼み、他者を警戒するよりは、自分を頼みにしたほうがいい。安倍首相が危機の中からチャンスをつかむ時が来ている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年12月7日
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