トランプ氏が大統領選に勝利し、オバマ大統領が任期を満了しようとしている。安倍首相が忙しくなった。
安倍首相が最も焦りを覚えているのは、米日同盟関係の今後についてだ。当選したばかりのトランプ氏との会談後、安倍首相が再度訪米する。しかし今度の訪問先は、太平洋に浮かぶハワイだ。
共同通信の報道によると、安倍首相は5日、今月26−27日に米ハワイを訪問し、オバマ大統領と太平洋戦争の発端となった真珠湾を訪問し、戦没者を追悼することを検討中と発表した。
米日が真の和解へ
真珠湾事件から、75年が経過する。これは戦後の国際レジームを変える転換点となった戦いだ。日本軍が真珠湾を奇襲し、米国が参戦したことにより、日本は最終的に敗戦することになった。戦後は米国に保護される弟分になった。
日本人首相による真珠湾訪問は初めてで、特に極右思想を持つ安倍首相が、日本を「異常な国」にした悲しみの場を訪問するとは意味深長だ。
オバマ大統領は今年5月、伊勢志摩サミットに出席した際に、被爆地・広島の平和記念公園を訪れた。これに呼応するかのように、オバマ大統領が間もなくホワイトハウスを離れる際に、安倍首相が真珠湾を訪問する。これには米日両国が過去の痛ましい歴史に別れを告げ、現実主義的な同盟を前にしわだかまりをなくし、真の和解を実現したという意味が含まれる。
これは安倍首相のオバマ大統領への、別れのプレゼントでもある。オバマ時代に米日同盟関係は、過去最高となった。両国は中国をけん制するアジア太平洋リバランス戦略、TPP(環太平洋経済連携協定)の推進で、かつてないほどの共通認識を形成したからだ。日本は米国のアジア太平洋地政学・経済戦略面で前に立ち、オバマ大統領は安倍首相の間違った歴史観と自衛隊の活動範囲の拡大を放任した。こうして安倍首相の正常な国になる理想が、着実に現実に近づいた。
オバマ大統領の今年5月の広島訪問は、安倍首相を強く支持し、日本国内を喜ばせた。オバマ大統領のこの動きは米国国内で物議を醸したが、核なき世界という理想を力強く示した。しかしオバマ大統領は米国の原則を守り、原爆投下について日本に絶対に謝罪しようとしなかった。
礼は往来を尊ぶ。安倍首相は歴史的な真珠湾訪問でも、米国に謝罪しないとしている。未来志向の決意と、戦争の惨劇の再演を避けることを示すだけだ。
国際政治は厳しく、現実的かつ功利的で、政治家も利益を求める。しかしこれはオバマ大統領と安倍首相が、共通する戦略的目標により、個人的な友好を温める妨げにはならない。広島訪問を受けた真珠湾訪問は、安倍首相がオバマ大統領への善意に報いるためであり、米日両国が過去に徹底的に別れを告げ、真の和解を実現したことを証明するためでもある。
トランプ氏に見せつける外交ショー
これは安倍首相が主演しオバマ大統領が協力する外交ショー、トランプ氏に見せつける芝居だ。
トランプ時代の米日関係は、依然として不明瞭だ。しかしトランプ氏の大統領選中の発言を見ると、米日同盟関係は変化に直面している。まずトランプ氏は米日同盟関係について、「国際主義」を守らず、功利主義を貫く。日本は自国を自分の手で守るか、米国からの保護を買わなければならない。トランプ氏はまた日本を貿易のライバルとし、日本に対してより厳しい貿易戦を展開する。
さらにトランプ氏はTPP離脱を決定しており、この奇抜な経営者出身の大統領が、選挙中の約束を徹底的に実現することをアピールしている。そのため安倍首相はリマAPEC首脳会議に出席する前に回り道をし、ニューヨークでトランプ氏と会談することで、米日安保の真の意図に探りを入れ、米日同盟の未来を確認しようとした。安倍首相とトランプ氏は歓談したが、安倍首相は米日関係の未来について自信を深めなかった。
安倍首相は真珠湾を訪問し、オバマ大統領と政治の芝居を打つことで、トランプ氏に米日同盟関係の現実的な重要性を示そうとしている。
これは安倍首相が米日関係の未来に自信を持っていないことを浮き彫りにしている。オバマ大統領もトランプ氏が、米日外交のレガシーを継承するか確認できていない。
確かにトランプ氏は外交面で、軽率な風格を示し初めている。駐米英国大使を逆指名し、台湾の蔡英文氏と電話会談をするといった、外交の儀礼に背き米国主流の外交路線を覆すやり方により、ホワイトハウスは懸念を深め、外交の火消し役にならざるを得なくなっている。
トランプ氏が米日関係について、どのような変わった言行を見せるかについては、想像し難い。これは安倍首相が最も懸念していることだ。安倍首相が戦後日本の長命首相になれたのは、外交面でオバマ大統領と米日同盟関係を強化できたからだ。トランプ時代の米日同盟関係に変化が生じれば、たとえそれが微調整だったとしても、安倍首相の政権運営の基盤が揺らぐことになるだろう。
安倍首相が真珠湾を訪問し、オバマ大統領と世界に向け政治の二人芝居を打つ。重要なのはトランプ氏に意図を理解させ、この芝居に招き入れることだ。(筆者:張敬偉 察哈爾学会高級研究員、中国人民大学重陽金融研究院客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月8日
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