トランプ氏選挙戦中のタカ派
しかしながら、ネオコンと冷戦タカ派は、ワシントンの台湾地区ロビーとの関係が密接だ。これらのロビーは各種政治家に影響を与えるだけでなく、一部のシンクタンクに資金援助を提供しており、これは逆に政策の制定を親台湾地区と反中国大陸の方向に傾斜させている。
台湾地区の「民族主義者」を支持する台湾地区ロビー活動は冷戦初期にさかのぼることができ、当時は「中国ロビー」と呼ばれていた。数十年後、この団体はワシントンにすでに深く根を下ろし、多くの国会の政治ブローカーらに影響を与えている。
台湾地区メディアが明らかにしたところでは、トランプ氏のこの失策はスティーブン・イェーツ氏が画策したものだという。彼の現在の立場はビジネスマン、顧問だが、ジョージ・ブッシュ大統領在任期間中にはディック・チェイニー副大統領(2001~05年在任)の高級補佐官だった。チェイニー副大統領のチームはイェーツ氏を含むネオコンと冷戦タカ派で構成されていた。
イェーツ氏がなぜトランプ氏のチームに加わっているのかは知る由がない。しかしながら、彼はこれ以前に元ニューヨーク市長で大統領候補でもあったルドルフ・ジュリアーニ氏のアジア顧問を務めていた。トランプ氏が大統領候補になった後で、イェーツ氏は彼のチームのアジア顧問として参加し、移行段階を過ごしている。
イェーツ氏は今回の電話事件への関与をかたくなに否定している。彼が彼とヘリテージ財団の関係を使ってトランプ氏のチームに浸透する能力を有することは疑いの余地がない。ヘリテージ財団はワシントンD.C.に本部を置くシンクタンクで、冷戦期間中にソ連と中国に対抗したことで知られている。
しかし、トランプ氏に提案できるタカ派はイェーツ氏1人ではない。米国の重要な中国問題専門家マイケル・ピルズベリー氏は大統領選挙の重要な顧問だったという。彼は国会のタカ派とペンタゴンに密接な関係を築いている。つい先週、彼はワシントンで訪米した中国の研究者代表団と会見した。
その他の情報源では、ブッシュ政権期間中に国連大使を務めた(2005~06年在任)ジョン・ボルトン氏が電話事件に関与していると伝えている。ボルトン氏は次期国務長官の筆頭候補として名前が挙がっていた。タカ派として、ボルトン氏は今年1月『ウォール・ストリート・ジャーナル』に、より積極的な親台湾地区政策を採用するよう呼びかける文章を発表した。報道によれば、電話事件が起こった当日、彼本人がトランプ・タワーにいたという。
状況がどうであれ、確実に一部タカ派の「中国専門家」がトランプ氏のチームに浸透を試みており、間もなくやって来るトランプ大統領の任期中にポジションを得ようと画策している。より重要なのは、一部主要な国会の共和党議員がすでに電話事件を公に支持していることだ。親台湾地区政策支持者として、彼らは速やかにトランプ氏のこの挙動に賛成を表明した。
針小棒大か?
電話事件はトランプ氏が40年来米国の中国に対する政策を抜本的に変更することを意味しているのだろうか? これについてはまだ観察を要するが、しかし、混乱の移行期中の任務遂行に不適任なスタッフこそが、この事件を引き起こした真の原因かもしれない。
トランプ氏の移行チームは米国の各主要政府部門と機関との連絡体制を構築していると述べている。しかし誰もホワイトハウスや国務院の専門外交官、情報界に、台湾地区や電話事件について意見を求めていないのは明らかだ。もしトランプ氏のスタッフが適任であるなら、この軽率であての外れた事件の発生をまぬがれることができたはずだ。
トランプ氏のスポークスパーソンは彼の弁護を試み、誰かが彼に向けて台湾地区問題についてブリーフ・レポートを作ったと述べた。しかし問題はその人がもし政府高官でないのなら、いったい誰だということだ。
この事件が出しうる結論は、トランプ氏のチームは必ず迅速に外交政策と国家安全保障の活動で共に協力しなければならないということだ。一部経験豊富な中国専門家を招いて実用的な提案を求めるべきだ。それは例えば豊富な経験を持つ引退した大使、チャールズ・フリーマン氏やステープルトン・ロイ氏だ。賞賛に値するのは、これ以前にキッシンジャー氏に意見を求めたことで、これは良好なスタートの基礎を定めるものだ。
大統領に当選したトランプ氏は必ず外交使節団内の「中国通」の智恵と忠告に頼らなくてはならない。もし彼が、彼の提出した建設的で革新的な外交政策の目標を実現したいなら、必ず就任前にチームの中のネオコンと冷戦タカ派を一掃しなければならない。われわれが必要としているのは、静かな外交、深謀遠慮、言行を慎むことであり、メガホン外交やハリウッド式の派手なスタンドプレーは必ず根絶されねばならない。
(英語による原文は『北京週報』第50号に掲載)
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