モルガン・スタンレー・アジアの会長を務めていた米エール大学ジャクソン・インスティテュート・オブ・グローバル・アフェアーズのスティーブン・ローチ上級研究員はこのほど取材に答える中で、「米中両国の経済の相互依存度は極めて高く、一方が何らかの行動を取れば、もう一方に大きな影響を与えることになる」との見方を示した。
ローチ氏は、「輸出は中国で経済成長が最も急速な分野の1つで、改革開放が行われるようになった1979年から国際金融危機発生前の2007年まで、中国の輸出額が国内総生産(GDP)に占める割合は約5%から38%近くへと増加した。30年あまりの間、米国は常に中国最重要の輸出市場の一つであり、現在は中国最大の輸出先となっている」と述べた。
ローチ氏は、「これと同時に、米国経済も中国に大きく依存している」と指摘し、「過去10年間、中国は米国にとって北米地域市場を除いて最も急速に伸びた輸出市場であり、今では米国の3番目の輸出市場だ。長年にわたり、中国は米国債とその他の米ドル建て資産を最も多く保有する国であり、米国の長期的な財政赤字にとって極めて重要な支えてである。米中貿易額は79年の25億ドル(1ドルは約110.7円)から16年は5196億ドルに増加し、38年間で212倍に増加した。ここからも、米中両国の経済の相互依存度がますます高くなっていることがわかる」と述べた。
ローチ氏からみると、「相互依存は一種の双方向な関係」であり、「一方が取引の条件を変更すれば、もう一方は必ず反応することになる。具体的にいえば、もし米国が中国に対し貿易分野で何らかの懲罰的な行動を起こした場合、中国も米国に同じような措置を取る可能性が高い。そうなれば悪循環となり、やがて米中貿易戦争に発展し、両国ともに傷つくだけでなく、波及効果によって世界経済に巨大な損害を与えることになる」という。
ローチ氏は、「中国経済はグローバル経済成長への寄与度は引き続き最上位だ。1980年から2011年までの間の10%前後だった年平均経済成長率と比べれば、中国経済の成長率は今は鈍化してはいるが、16年のグローバル経済成長に対する中国経済の寄与度は30%を超え、この割合は他の経済大国の寄与度をはるかに上回る。たとえば、米国経済はその安定復興ぶりが幅広く評価されてはいるが、グローバル経済成長への寄与はわずか0.3ポイントに過ぎず、寄与度は中国の4分の1にとどまる。欧州経済は回復への力が不足し、グローバル経済成長への寄与は0.2ポイントで、日本は0.1ポイントにも満たさない。実際、あらゆる発達したエコノミーを合わせてもグローバル経済成長への貢献はわずか0.8ポイントにしかならないのに対し、中国の貢献はこの合計を上回る」と述べた。
ローチ氏は、「08年に米中投資協定の交渉が正式にスタートして以来、困難でスローペースの交渉が30回以上も行われてきた。両国の食い違いは絶えず縮小され、国境を越えた投資の原則が幅広く一致をみた。特に透明性、技術移転、株式の制限、『内国民待遇』といった非差別的規定に関して明らかな進展を遂げた。二国間の投資協定が達成できれば、トランプ政権は米国経済成長の促進で成果を上げるに違いない。成長ペースの遅い米国経済にとって、今後数年間の世界最大の市場を開拓する以外に、脱出口はない」と述べた。
またローチ氏は、「米国と中国はそれぞれ自国が直面する課題に向き合うべきだ。米中両国にはリバランスという共通の戦略的目標がある。中国は輸出主導型の経済、投資喚起型の成長から、個人消費型の経済へと転換する必要があり、米国は過度の消費に依存した経済から投資と輸出を促進する経済へと転換する必要がある。こうした目標を達成するために、中国人は貯蓄を控え、消費を増やすことが必要だ。米国人は正反対に、消費を抑え、貯蓄を増やすことが必要だ。両国が経済構造調整に成功すれば、二国間関係を効果的に強化することにつながる」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2017年4月5日
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