文=江原規由
習近平国家主席が、一帯一路を提起してから4年足らずで29か国の首脳を含む世界100余ヵ国の政財学界のVIPが北京に参集した。このことは、同構想が世界的コンセンサスを得たことを如実に物語っている。
習主席は、北京フォーラムの基調講演の冒頭で、古代、中世においてシルクロードの果した歴史的意義に言及し、時代と地域を超越して連綿と現代に引き継がれていると強調している。シルクロードと一帯一路は同じか。今日においてその精神と役割に大きな変わりはないが、一帯一路では、さらに壮大なプランが実践されようとしている。そこに、一帯一路の現代のシルクロードとしての本質が読みとれる。
筆者は、習主席の基調講演から一帯一路の意義を次の3点に集約してみた。
①グローバリズムのプラットフォーム
②実質的経済圏の確立
③都市化の推進
習主席は、基調講演の中でこう指摘している。“一帯一路は平和の道でなくてはならない。かつてのシルクロードは、平和期に栄え、戦時に廃れている。一帯一路の盛衰は平和か否かの環境による。我々は、協力とウインウイン(合作共贏)を核心とする新型国際関係、すなわち、対話を求め、対立を求めず、結伴不結盟(一緒だが同盟せず)の伙伴関係(パートナーシップ)を構築しなければならない”と。
新型国際関係とは、グローバリズムに基づいた国際関係の構築ということである。昨今の反グローバリズム、保護主義的風潮下で益する国が少ないことは歴史が証明するところである。協力とウインウイン関係の構築を核心とする一帯一路は、グローバリズムのプラットフォームの建設でもあるといえよう。
習主席は、こうも指摘している。“中国は、一帯一路参加国と協力とウインウインの経貿伙伴関係を積極的に発展させ~中略~一帯一路FTAネットワークを構築する”。中国が主催する国際会議の場で、習主席が、一帯一路ネットワークの構築に言及したのは、おそらく今回が初めてである。一帯一路の主舞台であるアジア・太平洋地域には、実体的な広域経済圏は存在していない。一帯一路FTAには、構築の一歩手前で挫折に瀕しているTPPに代わる新たな広域経済圏となる可能性が秘められていると見たい。このことは、習主席が、“北京フォーラムの期間中、関係国とのFTAを協議する”と明言していることから読み取ることが出来よう。その新経済秩序の構築は、これまでにない発想、すなわち、習主席が、講演で強調している伙伴関係などが軸になるのではないだろうか。伙伴関係とは、一言でいうなら、合作共贏のための相互信頼関係といえる。
さて、一帯一路の大事業は、当面、インフラ整備を通じた関係国の経済発展のための基盤つくり、言葉を変えれば、人々が豊かさを実感できる都市化の推進にある。この点、中国を世界第2位の経済大国に押し上げ、世界経済の安定と発展に大きく貢献してきた改革開放政策でも、インフラ整備が優先され、都市化建設は今も続いている。都市化を含め、一帯一路建設には、膨大な建設資金の手当てや関係各国との協力体制の構築など課題もあるが、シルクロード基金の増額、中国国家開発銀行の融資枠の拡大、国際産能合作の積極推進など対応策が次々と講じられ、かつ、一帯一路建設を自国の発展戦略に連接させる国が増えていることは、今後の一帯一路建設を加速させることになると期待できる。
習主席は、“我々は、各国が、(一帯一路という)グローバルガバナンスに参画し共に広範な利益共同体を構築することを歓迎する”とし、最後にこう結んでいる。“一帯一路建設は偉大なる事業であり、偉大なる実践が必要だ。一歩一歩前進し、世界と人民を豊かにしよう”と。
真の発展とは、国や宗教の違いを乗り越え、すべての人類の豊かさと平和社会の実現にある。そのために世界中の国々で手を取り合い、協力しあい、助け合っていこうとの中国の提唱に賛同した多くの国・国際機関から首脳や有識者が参集した今回の北京フォーラムは、歴史的なフォーラムとしての足跡を刻むことになるのではないだろうか。
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