フィリピン外務省が12日、いわゆる南中国海仲裁裁判の裁決から1年にあたり発表した声明に各方面は注目した。アキノ氏率いるフィリピン前政権が仲裁裁判を一方的に提起し、不法かつ無効な裁決が下され、摩擦の解決になるどころか、反対に対立感情を刺激し、地域の正常な秩序を妨げ、域内国全体の利益を損なったことを人々は覚えている。だが今やフィリピン側は若干の積極的なシグナルを発した。これは評価に値する行動だ。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長。人民日報掲載)
第1に、声明は善隣友好の精神に基づき南中国海紛争を解決すべきだとした。実際、ドゥテルテ政権は南中国海問題において重要な政策変更を行い、絶えず中国の譲れぬ一線に挑戦してきた前政権の姿勢を改めた。2016年10月、ドゥテルテ氏は就任後ASEAN以外で初の訪問国に中国を選んだ。訪問時、双方は良好な意思疎通を行い、南中国海問題について重要な共通認識にいたった。中比は共同声明を発表し、係争問題は中比関係の全てではなく、直接関係する主権国の友好的な協議・交渉を通じて、平和的方法で領土及び管轄権の争いを解決することを重ねて表明した。2017年5月、中比南中国海問題二国間協議制度の初会合が中国貴陽で行われた。中比は対話と協議による争いの解決という正しい道に戻った。
第2に、声明は「南中国海における行動規範(COC)」協議の重要な進展を評価した。2017年5月、中国とASEAN諸国は南中国海における関係国の行動宣言(DOC)実行第14回高官協議及び第21回共同作業部会を開催し、「COC」の枠組で合意した。各国は「COC」枠組合意の重要な意義を積極的に評価し、「COC」協議全体にとって重要な段階的成果であり、今後の協議の強固な土台を固めるものだと強調した。
「COC」枠組合意は中国とASEANの共同の努力に基づくものだ。中国とASEANは共に南中国海情勢の緊張激化は各国の利益にならないと考えている。2016年、ASEANプラス1(中国)外相会議がラオスの首都ビエンチャンで行われた。会議後、中国とASEAN諸国の外相はDOCの全面的かつ実効性ある実行に関する共同声明を発表した。声明は、いわゆる裁決を用いて中国ASEAN関係を翻弄しようとする特定の国の企てを取り除き、南中国海をめぐる争いは直接関係する主権国の友好的な協議と交渉によって解決するべきだと重ねて表明した。
第3に、声明はフィリピンの協力意向をはっきりと示した。フィリピンは、中国の発展を試練ではなくチャンスだと捉えている。ドゥテルテ氏は中国との経済・貿易関係の発展を自国の発展の原動力とすることを望み、民生改善・貧富の格差縮小のために中国の助けを借りてインフラを整備することを期待している。フィリピン側は、中国が近年周辺外交を重視し、ASEANをその重要な位置に据え、対ASEAN関係の発展を推し進めていることにも目を向けている。中国は「親・誠・恵・容」の周辺外交理念を堅持し、周辺運命共同体を築いている。「一帯一路」(the Belt and Road)建設協力は中比協力の新たな目玉となりつつある。ドゥテルテ大統領は今年5月に中国で「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席した際、「一帯一路」イニシアティブとフィリピンの推し進める「2017-2022発展計画」の強い符合性を指摘。特にインフラ整備面で、「一帯一路」建設と「インフラ整備の黄金時代を築く」フィリピン政府の目標は一致し、両国協力には大きな余地があるとした。
南中国海問題解決のために中国が打ち出した「デュアル・トラック・アプローチ」が合理性と実行可能性を備えることは事実が証明している。具体的争いは直接の当事国が歴史の事実と国際法を尊重したうえで、交渉と協議を通じて平和的に解決すべきであり、南中国海地域の平和と安定は中国とASEAN諸国が共に維持するべきだ。
南中国海地域はプラスのエネルギーを必要とし、各国が共に努力して安定を維持することを必要としている。中比は南中国海をめぐる争いが両国関係の発展にもたらす重大な障害を乗り越え、両国関係を全面的に立て直した。これは大切にすべき局面だ。双方が多くの分野で友好・実務協力の推進に尽力することは、両国及び両国民の共通の利益に合致し、域内諸国共通の期待にも合致し、南中国海の平和・安定を一層維持するうえでプラスだ。(編集NA)
「人民網日本語版」2017年7月14日
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