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金融危機下の日本企業中国市場での活路

 

わが社はこうして成果をあげた

 

すでに中国市場に展開している日本の企業は、金融危機の中で、それぞれ工夫と苦労を重ねながら奮闘している。その中で独自のやり方で成功している企業から、その貴重な経験を寄せてもらった。

シャープ株式会社  功を奏した ブランディング戦略

 

「シャープ」の携帯電話と液晶テレビの カウンターに押しかける人たち

シャープは、中国市場へは1993年から進出していますが、なかなかブランドイメージはあがりませんでした。これは、中国各地に展開した生産会社ごとに販売を行うなどシャープグループでの取り組みができていなかったことが原因です。そこで、2005年に各生産会社の営業部門を統合し、中国全土を担当する販売会社を設立しました。そしてこの販売会社が最重点で取り上げたのが液晶テレビです。

当社の液晶テレビ「AQUOS」は、日本産の液晶パネルを採用し、徹底的に「最先端・高品質」にこだわった商品であるということを中国の消費者に伝えるべく、2006年より営業・ブランド・商品の3つの切り口から戦略を立て、中国市場における液晶テレビのシェアアップおよびブランド力の強化に取り組み、大きな成果をあげています。

ブランド戦略

まずは企業メッセージ(つまり、消費者への約束)を明確にすることが重要だと考えました。中国の消費者は、商品はもとより基幹部品がどこで生産されているかを注意深く確認します。そこで当社は、中国で販売する液晶テレビには、日本原産の液晶パネルのみを使用していることを大々的にアピールしました。「日本原装液晶面板」を当社のブランドメッセージとして発信することは、社会に対して約束することでもありました。中国で液晶テレビを販売するテレビメーカーの中で、最先端で高品質の日本産液晶パネルをすべての商品に採用しているのは当社だけです。こうした当社にしかできないオンリーワンのメッセージを一貫して発信したことが功を奏し、当社の液晶テレビへの信頼、評価、そしてシェアが月を追うごとに上がってきました。

宣伝活動

2007年9月から、中国の国民的人気女優であるレネ・リュウをイメージキャラクターに起用し、テレビCMをはじめ、新聞・雑誌・WEB・店頭POPまで、すべての媒体に「AQUOS」の顔として登場してもらい、ブランドイメージ向上に力を入れてきました。このキャンペーンでも、日本原装(メード・イン・ジャパン)をキーワードとし、宣伝広告、販売促進、WEBなどを連動させた取り組みを行っています。

さらに、移動式のショールームに見立てた大型トラック3台に液晶テレビを搭載し、主要各都市を訪問する販売促進イベント「AQUOSエキスペリエンスツアー」を展開しています。24都市を巡回、20万人が来場した第1弾に続き、第2弾を2007年4月から7月後半まで32都市で、第3弾を2008年9月に8都市で開催しました。また第4弾を2008年11月~2009年1月まで、洛陽や昆明など16都市を中心に展開しています。また、イベントで使用した「AQUOS」をチャリティーオークションにかけ、売上金で小学校を建設することにしました。すでに、安徽省や重慶市では「夏普(シャープ)希望小学校」が開校しています。

商品と営業戦略

日本産の液晶パネルを採用し、19インチから65インチまでの幅広いラインアップをそろえ、世界最高品質の液晶テレビ「AQUOS」を市場にタイムリーに提供することによって、需要の拡大に応えてきました。

また、営業戦略では、当社の液晶テレビの取り扱い店舗を、当初の沿岸部の大都市から地方都市へと順次拡大し、売り場づくりや接客技術についても、日本のノウハウを活用しました。

このように、ブランド・商品・営業のそれぞれの戦略を連携させて取り組むことによって、中国市場における当社の液晶テレビシェア、ブランド力を飛躍的に向上させることができたと考えております。裏を返せば、この3つの戦略のうちどれか1つでも欠けていれば、現在の成功はなかったと思います。

これからの展開

当社では、中国市場における新たなブランド力強化の取り組みとして、今後は携帯電話事業についても力を入れていきたいと考えます。

携帯電話事業は、昨年から中国市場に参入しました。すでに多くのメーカーが激しく競争する中国の携帯電話市場の中で、後発参入の当社が事業拡大を図るために、知名度を持つ液晶テレビ「AQUOS」 のブランドと販売網を活用し、相乗効果のある取り組みを行うこととしました。

2008年6月に、日本市場でもっとも人気のあるモデル「AQUOSケータイ」をベースとし、中国のインフラや消費者ニーズに合わせた第1弾モデル「SH9010C(5色展開)」を発売しました。すでに、「液晶はシャープ」とのイメージができあがりつつあったことから、4000元(約60000円)を超える高額商品にもかかわらず、販売好調で4000元以上のゾーンのシェア調査では、全モデル中4位となりました。

また、昨年9月には第2弾(8010C)を、11月には売価5000元以上の第3弾(9020C)を発売し、段階的にラインアップを増やしています。今年の5月からはさらにラインアップを拡充してゆきますので、このタイミングで本格的な販売戦略とブランド戦略を展開したいと考えています。

カネボウ  ニーズにミートし「80後」世代に照準

佳麗宝(中国)の垣見匡史総経理(同社提供)
中国はここ数年、経済の発展が著しく、国内総生産(GDP)はすでに世界3位となり、膨大で活気溢れた市場として、世界中から注目される存在になっています。100年に1回とも言われる金融危機の中でも、中国の経済は相変わらず高い成長率を維持しています。日本で市場シェア2位のカネボウ化粧品も、中国市場を海外における最重点市場と位置づけ、積極的に事業拡大をはかっています。

中国の化粧品市場は順調に成長を続けていますが、すでに世界中の大手メーカーが軒並み参入し、激しく競い合う、きわめて厳しい市場です。当社は、発展著しい都市部のホワイトカラーの女性をメインターゲットとし、百貨店プレステージ市場における展開で成功をおさめており、2008年度も対前年比40%増を超える大きな成長を遂げました。

その成功の背景には、中国における消費市場の質の変化にミートした戦略があります。都市部における消費の成長は、今新たなステージに入っています。「80後」(1980年以後に生まれた)世代が新たな消費の主役として台頭し、品質や安全などのこだわりが高まっています。外資メーカーは、一握りの富裕層を対象にした売り上げで利益を上げてきましたが、それに続く「有産階級」が誕生し、主要都市部では全体の約2割を占めるに至っています。

20代半ばから30代はとくにその比率が高く、約3割に達しています。当社は、消費者調査に基づく商品開発やマーケティング戦略から、エリア戦略に至るまで日本メーカーならではの、きめ細やかな戦略展開をしています。

4月に上海工場を改装し、中国専用ブランド「AQUA SPRINA」の9月発売に向け、生産能力と衛生規格をさらにアップ、従来のハイコストパフォーマンスを維持しながら、品質と安全性をいっそう高めました。

また、欧米ブランドがターゲットとする富裕層を獲得すべく、2006年に日本で展開する最高級ブランド「Impress」と「LUNASOL」を導入し、導入以降3年連続で高成長率を維持しています。

「薬粧」ブランドの「freeplus」のカウンター(同社提供)
一方、当社は中国化粧品流通の新たな可能性として、高級薬局にいち早く注目。ここで流通しているいわゆる「薬粧」には日本ブランドがまだないことを機会ととらえ、2005年末、日本市場で「敏感肌」の悩みを持つ20代を中心とした女性に高い支持をうける「freeplus」を導入。「free」=肌へ負担や刺激を与える成分無添加、そして「plus」=6種の和漢植物成分を配合した高い保湿や肌の悩みを解消する効果をプラス、という商品の特長は、狙い通り、ターゲットとする「化粧品に安全・安心を求める層」のニーズにミートし、お客様の要求や肌の悩みに的確に応えるビューティーカウンセラーのカウンセリングと相まって、消費者の高い満足を獲得しています。

主要都市における10代後半から20代の消費者調査によると、基礎化粧品購入理由のベスト5に、「自分の肌に合うこと」(1位)、「低刺激で肌に優しいこと」(5位)があがっています。また薬局で化粧品を購入する消費者の購入理由を見ると、第一に安全性と低刺激があげられます。また、大多数のユーザーは、ニキビ、テカリ、敏感肌などの問題を抱えています。「freeplus」はまさにこのようなニーズに応える商品構成であるとともに、さらなる肌悩みに応えるべく中国専用商品として「抗老化」「美白」の2ラインも発売しており、安全・安心とともに肌の悩みの解決を求める要求の高い顧客をつかんでいます。

価格も、お客様の信頼を裏切らないよう、基本的に「日本と同じ金額」に設定(中国で販売されている高級輸入品は本国より値段が大幅に高く設定されていることが多い)。こういった一連のブランド政策が奏功し、2008年は導入3年目で対前年倍増となる非常に高い売り上げの伸びを遂げました。

経済危機が続く中、当社は2009年に入って、中国戦略をいっそう強化しています。今後、新ブランド導入や新たなカウンター導入など、さらに中国市場強化を加速していきます。

パナソニック  環境に貢献する「モデル企業」めざす

アジア情報及び通信技術展覧会でのパナソニック・ゾーン
1978年10月、当時、中国国務院副総理の鄧小平氏がパナソニック(旧松下電器産業)のテレビ工場を訪問、パナソニックの創業者の松下幸之助と会見、松下幸之助は中国の電子工業の発展に協力することを約束しました。

その後30年にわたり、工業、研究開発などの面で、中国の皆様の支持を得ながら、パナソニックの中国事業は大きな成長を果たしました。この間、中国政府による資源節約型社会、環境に配慮した社会の建設への呼びかけに応え、企業の社会責任を積極的に果たしていくことを目的に、2007年9月26日、北京において「松下グループ・中国環境フォーラム2007」を開催し、「中国環境貢献企業宣言」を発表、中国のグループ全社を挙げた「中国エコプロジェクト(2007年4月~2010年3月)」の取り組み(商品のエコアイディア、モノづくりのエコアイディア、ひろげるエコアイディア)を通じて、中国の環境保護に貢献してきました。

2008年5月10日、来日中の中国の胡錦濤国家主席はパナソニックを訪問し、「パナソニックはその優位性を発揮し、中国の省エネ・環境保護分野における協力を積極的に展開し、中日互恵協力に新たな功績を果たしてほしい」との期待を述べました。

「中国エコプロジェクト」の取り組みを紹介するパナソニックの大坪文雄社長(同社提供)
今年5月19日、パナソニック株式会社とパナソニックチャイナ(有)は、中国日本友好協会と共同で、5月19日に「パナソニック・中国環境フォーラム2009」を開催し、中国の環境貢献におけるモデル企業を目指すことを宣言しました。取り組みの基軸となる「製品づくり」「モノづくり」「人づくり」の3つの軸において、それぞれこれまでの「中国エコプロジェクト」の取り組みに加え、①「製品づくり」では、省エネトップレベル製品の連打 ②「モノづくり」では、「モノづくりのエコ」を社会へ提供 ③「人づくり」では、従業員の環境保護の行動を地域社会へ展開、という中国社会への広がりを持った活動にしていきます。

当社はご期待に応えるため、今後、「中国の環境貢献におけるモデル企業」をめざし、当社の環境技術やノウハウを中国社会でより広く活用していただくための取り組みを進めてまいります。

 

人民中国インターネット版 2009年11月

 

 

 

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