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徐福文化研究が結ぶ中日韓の絆 寧波で国際フォーラム開催

横堀 克己=文・写真

紀元前220年、秦の始皇帝の命を受け、不老不死の薬を求めて「童男童女三千人」と「五穀の種」「百工」を船に乗せ、「東渡」(東に海を渡る)したという徐福に関する国際フォーラムが、9月末、浙江省慈渓市の達蓬山大酒店で開催された。日本から57人、韓国から23人が参加、中国各地からの参加者も加え200人を超す徐福研究者が一堂に会した。

浙江省慈渓市の達蓬山大酒店で開催された徐福文化国際フォーラム

達蓬山に建てられた徐福の像の脇で催された「徐福東渡成功出航地」記念碑の除幕式

フォーラムには、中国の研究者だけでなく、日本や韓国の研究者から40編を超す報告が提出された。日本や韓国に残る「徐福東渡」の影響や伝承が紹介され、これまでは実行されなかったとされてきた「徐福東渡」が、秦の時代に中日韓の間で文化交流が始まったことを示すものとして評価された。

徐福に関する史書の記述は、司馬遷の『史記』に3カ所あるが、その後の史書はいずれも『史記』を元に記述したものに過ぎない。フォーラムでは、『史記』が秦の始皇帝を否定する立場から記述されているため、徐福も否定的に描かれていると、『史記』の限界を指摘する声が多かった。

(張副会長の報告から作成)

核心は友愛、平和、交流……

中国徐福会の張雲方常務副会長によると、中国には14カ所、日本には22カ所、韓国には3カ所の徐福ゆかりの地があるという(表参照)。そして1980年以後、相次いで徐福を記念する施設が建設されている。さらに徐福に関する民間伝承や民俗なども各地に伝わっている。そうした有形、無形の徐福文化を基礎に、新たな文芸作品が多数登場している。

徐福文化の核心はどこにあるのか。張副会長は「徐福から生まれた友愛、平和、交流、発展、繁栄という理念である」と強調する。だから学術面で徐福が残した歴史的な謎を検討、解明するにとどまらず、「徐福文化に内在する友愛、平和、発展の哲学思想と社会的な理念を検討、解明し、これを広めることがより重要である」と述べている。

そして「徐福文化の研究の目的は、中日韓の民間交流を強め、友愛と平和の東北アジアをつくり出すのに寄与することにある」とし、「徐福東渡」が中国の国土を拡張するためであるとか、徐福が日本国の創設者という見方は「徐福文化の趣旨に反し、排除すべきだ」としている。

来年は「東渡2200周年」

来年は徐福の「東渡」の2200周年に当たる。これを記念して中国徐福会は「徐福文化の足跡をたどる旅」など、中日韓の国際的な記念活動を計画している。

「足跡をたどる旅」は、中国から青年男女500人と徐福文化の研究者100人を乗せた客船が韓国、日本へ向かい、各地で徐福関連の遺跡を訪問し、文化交流を行う。また韓国からは、次の国際フォーラムを済州島で開いてほしいとの強い要望が出された。さらに中日韓三カ国で、「徐福東渡」の連続テレビドラマを共同制作する話も進んでいるという。

古代に生きた徐福はいまや、中日韓を結ぶ文化交流の使者に変貌しつつあり、徐福のロマンに酔う人々の輪が広がっている。

徐福記念館を守る 須田育邦さん

徐福の率いる船団が出航したとされる達蓬山の麓、慈渓市龍口鎮の蓬莱中街に、「慈渓徐福記念館」がある。庭に建てられた朱塗りの鳥居をくぐると、こじんまりした記念館に、徐福に関するさまざまな資料や日本との交流の記録が展示されている。

この記念館の発起人の一人で、現在は一人でここを運営しているのは、理事長の須田育邦さんである。

須田さんは今年65歳。50歳まで東京都庁に勤めていたが退職し、上海に移り住んで事業を始めた。そこで得た利益を、この徐福記念館の建設と運営に当てている。

須田さんと中国とのかかわりは、子どものころから始まる。父が国語の先生で、家には漢文の本がたくさんあった。「それが読めたらいいな」と思っていたという。

東京大学に合格し、第二外国語としてフランス語、ドイツ語、中国語の中から一つ、語学を選択しなければならなかった。当時は中国と日本は国交がまだ正常化していなかったし、中国語を学ぶ学生はきわめて少なかった。しかし彼は迷わず中国語を選んだ。

中国語を第二外国語として選択した学生のクラスはEクラスという。彼と同様に中国語を選んだEクラスの学生は27人しかいなかった。

須田育邦さん

「慈渓徐福記念館」の庭には鳥居が建てられている

大学の専攻は社会学。卒業後の中国語の勉強は、復旦大学に一カ月の短期留学しただけだ。しかし今は、流暢な標準語の中国語を話す。「儲けたお金を日中文化交流につぎ込んでいます。なるべく多くの人に、この記念館を見て欲しい。記念館の二階は広いので、学生が来て泊まってくれてもいい」と言う。

ただ、現在は、記念館を管理するスタッフがいない。須田さんがここに来るのは月に一、二回だけ。記念館を訪れたい人は、事前に、連絡してほしいという。

 

須田さんのE-mailは「dapengshan@yahoo.co.jp」。

 

人民中国インターネット版 2010年1月31日

 

 

 

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