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「マルコ・ポーロの道」自転車で完走 影山さん8年がかりの一人旅

李建華=文 影山淳=写真提供

寧夏回族自治区の中衛に到着して黄河に出合い思わず バンザイをして喜ぶ影山淳さん

マルコ・ポーロ(1254~1324年)が欧州から中国まで旅したルートを、世界初の「自転車一人旅」で完走した静岡県掛川市の影山淳さん(63)が、8月20日午後、北京・元大都遺跡公園に到着した。8年計画の最終年の今年は、敦煌から北京まで3446キロを走り、1万7000キロの全行程を終え、念願の夢を実現した。ゴールには日本から駆けつけた親友をはじめ多くの人々が集まり、歓声と拍手で迎え、暖かいねぎらいの言葉をかけた。

「マルコ・ポーロ計画」の中国区間連絡員を務めた筆者が、影山さんと初めてお会いしたのは、昨年11月、湖北省・武漢で開かれた『山歩きの知恵』(田村宣紀著)の中国語訳『登山的智慧』の出版記念会だった。だが、実は以前から彼の名前は知っていた。2006年、長野の山学山遊会の一行とイランに行った時、影山さんが2004年、2005年の二年連続で、マルコ・ポーロの道を辿るためにイランを北から南を走破したことを聞いていたからだ。

影山さんは中学校時代に『東方見聞録』を読み、興味を抱いたのが、マルコ・ポーロの道をたどる計画のきっかけだった。高校卒業後、「名古屋山岳会」に入会、1972年、アルプス&シルクロード登山隊の一員として、ローマからネパールのカトマンズまでを車で移動した際、アジアへ続く道の景色を見て、「マルコポーロの道」の夢はますます膨らんだ。帰国後、何種類もの『東方見聞録』を読み比べ、関連情報を入念に調べた上で、最近の研究者がもっとも有力だと主張するルートを選んだ。55歳になった2003年、念願の『東方見聞録』自転車の単独行の八年計画をスタートさせた。

トルコのアヤス(当時はライアス)を出発、7年かけて、トルコ、イラン、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンを通過して、中国(カシュガル︱タクラマカン砂漠︱敦煌)に至る約1万3000キロを走破した。標高5000メートル近い峠を越え、灼熱地獄のペルシャ湾岸を走り、地表温度が50度を超える砂漠を横断し、吹雪よりもひどい砂あらしに見舞われ、アフガニスタンでは戦火がくすぶっていた。

以下は、北京で影山さんから聞いた敦煌—北京の苦労話や感動した光景をまとめたものだ。

難所は徒歩で突破

 8年目の今年は7月13日に敦煌を出発し、甘粛省、寧夏回族自治区、内蒙古自治区、河北省を経由して北京を目指した。8年計画の中でもっとも距離の長い行程だった。40キロの荷物を積んで毎日100キロを走行する日程を組んでいたが、大雨や向かい風の時、また荒れ放題の悪路や坂道を進む時は、自転車を降り、自転車を押して徒歩で一歩一歩前進した。予定では三日に一日休む「三勤一休」のはずだったが、六日間走りっぱなしのこともあった。

フビライがマルコ・ポーロを謁見したと言われる場所にたどり着いた影山さん(中央)と応援者たち

 辛いことの連続だった。8月3日午後9時頃、突然後輪がパンクした。石炭を満載したトラックがひっきりなしに通過する道路わきで、荷物を全て降ろして一時間ほどでやっと修理を終えた。しかし、5キロも進まないうちにまた後輪がパンク。すでに夜中の11時を回っていた。それでも、やむなく再びパンク修理。原因は、明らかに磨り減って、ボロボロになってしまったタイヤそのものだ。そこで、磨り減り方がまだ少ない前輪のタイヤと交換することにし、作業は午前一時過ぎまで二時間もかかった。

 少し寝ようと思って、近くにテントを張ったものの、積荷を軽くするために、コンロ、寝袋を北京へ送った後で、寒い夜をじっと我慢して過ごせざるを得なかった。

雄大な黄河に感動

楽しい時もあった。寧夏回族自治区の中衛付近で北京から青海湖に向かう途中の北京農業大学サイクリスト・クラブの学生たちと出会った。「日本の63歳の老人パワーに感激した、と全員からサインをせがまれました。この時ばかりはスーパースターの気分でしたよ」と、影山さんはその時の光景を思い出しながら、うれしそうに語っていた。

影山さんが描いた和田モスクのスケッチ

感動もあった。マルコ・ポーロが『見聞録』に記述した変化に富んだ山や川や平原、また古代の遺跡などを実際に自分の目で確かめた時だ。甘粛省・山丹の長城の壮大さに驚き、初めて視界に入った黄河の悠然とした流れに感激した。「雄大な景観を眺めながら走っていると、黄河が突如目の前に現われたのです。一瞬信じられない思いでした。眼下に、黄土色のどんよりした大河が一望できました。人生で初めて出合った大パノラマでした」と、影山さんはその時の興奮そのままに話してくれた。「8000メートルのマナスルや、アルプス最高峰モンブランの頂上から見た景色よりもずっとすばらしいと感じましたよ」

トルコのアナトリア高原を源流とするチグリス河、 カラコルムを貫く激流のインダス河、世界の屋根パミール高原からアラル海に注ぐアム・ダリア河を眺めながら自転車の旅を続けた。最後にたどり着いたのが悠久の歴史の中を流れる黄河だった。「振り返れば、ぜいたくな大河をめぐる旅でした」と、苦労を忘れて微笑んでいた。

 

人民中国インターネット版 2010年12月

 

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