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水墨画普及に尽力 平山郁夫氏に師事
日本で活躍する画家・傅益瑶さん

 

大寺院に大壁画を描く

平山氏の影響もあって、仏教芸術に強い興味を持つようになり、時間があれば日本各地の寺を見て回った。「日本のお寺は、まるで水墨画の大宝庫です」と彼女は言う。「お寺の壁に描かれた水墨画から、中国文化と日本の歴史の融合を感じることができます」

ある日、友人の紹介で、長野県の天台宗長楽寺の壁画を描く機会が与えられた。長楽寺の半田孝淳大僧正は、こんな若い女流画家が壁画を描くことができるのかと心配だった。6日間、寝食も忘れて壁画を描き続けたが、半田大僧正も終始、それに付き添った。半田大僧正は彼女の真面目な仕事ぶりに深く感動した。それ以来、半田大僧正は彼女を物心両面で助け、「日本の父親」のような存在となった。

『仏教東漸図』の完成祝賀式典に出席した傅益瑶さん(右から2人目)と小林隆彰執行(右端)

1988年、天台宗総本山の比叡山開山1200年に合わせ、横浜市の安禅院円満寺が新たに大本堂を建立することになった。半田大僧正の推薦により、彼女は本堂の二面の大壁画を描くことになった。大壁画はそれぞれ高さ5㍍、幅4㍍もあった。

傅さんは考えた。天台宗の発祥地は、中国では浙江省台州の天台山、日本では京都の比叡山。これを壁画の一面ずつに描くことにしようと。そこで現地に行き、天台山国清寺と比叡山延暦寺の山の中を僧侶とともに歩き回り、それぞれの山の特徴をつかんだ。

「描きはじめてからの50日間、食べる間も寝る間も惜しんで描くことに集中しました。記憶の中の感動が、まるで蚕が糸を吐くように止めどなくあふれ出てきました」と彼女。こうして『比叡山延暦寺』と『天台山国清寺』の大壁画が完成した。

この作品が世に出ると、大きな反響を呼んだ。日本の美術評論家は「傅益瑶さんは新しい仏教空間を創造した」と評価し、山田恵諦全日本仏教会会長、天台宗座主は「傅さんの絵画は見る人の心を打つ。これはすばらしい功徳」と語った。 宗教界と芸術界から認められ、彼女は日本の美術界で地位を築くことができた。まもなく、延暦寺の小林隆彰執行と著名美術評論家、河北倫明氏の推薦で、彼女は、延暦寺の巨大壁画『仏教東漸図』を描くという大仕事に取り組むことになった。

『比叡山延暦寺』

当時、延暦寺は国宝殿を建立したばかりで、小林執行はその国宝殿に仏教東伝に関する壁画を設置したいと考えていた。これを聞いたある檀家が、2000万円を寄付したいと申し出た。しかし、傅さんが描き始めようとしたとき、寄付を承諾していた檀家の事情が変わり、資金を出せなくなってしまった。小林執行は「もう描くのをやめますか」と彼女に聞いた。しかし彼女は「それでも描きます。壁面さえくだされば何も要りません」と答えた。彼女の心の中には、この仕事を引き受けてから4年間をかけて、仏教東伝の歴史を踏まえた構想がすでにできあがっていたのだった。

傅さんの決意は延暦寺の人々を感動させた。資金を集める方法を考え、ほどなく資金が集まった。一年後、彼女は幅12㍍、高さ2.6㍍の巨大壁画『仏教東漸図』が完成した。

日本の祭りを体感する

1986年、東京都立川市に住んでいた傅さんは「立川12景」の水墨画を創作しようと思った。ある日、地元のお祭りに出くわした。人々は神社の前で伝統的な鳳凰の舞を舞っていた。彼女はその光景に強く引きつけられながら、その場で『鳳凰の舞』というタイトルの絵を描いた。この絵は彼女が開いた「立川12景展」の中でも特に好評を得た。  その後、立川市長から、『民間祭12景』を描いてほしいとの依頼があった。「これは日本文化に深く接する絶好のチャンスだ」と思い、ためらわずに引き受けた。

自ら祭りに参加した傅益瑶さん(中央)

傅さんは日本各地の祭りを見て回った。彼女が選んだ方法は、まず祭りに飛び込み、体感するやり方だった。  兵庫県姫路市で「灘のけんか祭り」を体験したとき、御神輿を担ぐ男たちとともに飛び跳ね、大声で叫んでいた。秋田県男鹿市の「ナマハゲ」に参加したときは、お面をかぶり、地元の人々と酒を飲みながら歓談した。彼女は「こんなふうに実際に参加しなくては、日本という民族と日本の社会をより深く理解できません」と言っている。

『ねぶた祭』『三社祭』『竿燈祭』など、12の祭りの36作品が相次いで傅さんの筆から誕生した。これらの作品は『五彩12祭』と命名された。

『三社祭』

1994年、長野県の諏訪神社の依頼を受け、大型の水墨画『諏訪神社御柱祭』を描いた。この作品は白井永二神社本庁総長の高い評価を得て、翌年の「神道文化奨励賞」を獲得した。傅さんはこの賞が設けられて以来、初めて受賞した外国人画家だった。

お寺の壁画から伝統的な祭りまで、傅さんは絶えず日本文化と社会に入り込み、新しい領域に挑戦し続けてきた。絵画の創作以外に、NHK教育TVの番組にも出演し、水墨画の技法を指導した。2011年の東日本大震災後、NHK放送博物館で被災地の人々を元気付けるため、「日本の祭りの魅力」水墨画講座を開いた。中日国交正常化40周年にあたる今年、彼女は東京中国文化センターで、日本の祭りに関する作品展も計画している。

『諏訪神社御柱祭』

傅さんは自分の仕事についてこのように考えている。

「幼いころから父に『文化人』になりなさいと教えられていました。『文化への追求』と『文化への貢献』という使命感をいつも持っています。自分が描いた水墨画は、日本人の生活を描き出したことによって、日本人に受け入れられ、そして中日文化の融合はさらに深まって、心にしみる交流ができたと思います。このことを誇りに感じています」

 

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