日本を代表する写真家・森山大道の最新写真展「尋旅」が香港のSimon Lee画廊で開催されている(会期:3月14日から5月17日)。同展覧会には、森山大道のデビューから後期にいたるまでのさまざまな作風の作品が展示されている。森山大道は、「アレ・ブレ・ボケ」と表現される作風で知られ、ファインダーを覗かず街頭で人物を早撮りしたスナップ写真や強烈なコントラストで映し出された都市のモノクロ写真などで有名となった。文匯報が伝えた。
同写真展に展示された作品はすべてが森山大道の一連の代表作品で、日本写真史上に残る「にっぽん劇場写真帖」(1968年)も含まれている。大衆演劇やアングラ芝居の俳優、ストリップ劇場の出演者たちを捉えたこれらの薄暗い人物写真は、主に日本のアングラ劇場で撮影されたもので、今に至っても、森山大道の作品群の中で最も有名な作品の1つとなっている。網タイツを穿いた女性の脚を特写した作品「網タイツ」シリーズはアーティストのテキスチャーや世界の象徴化・抽象化に対するこだわりと追求が見て取れ、鑑賞者の視線を普段見過ごされがちな表面的な要素へと向かわせる。
■好き嫌いの好みを別として見る価値がある写真展
2年前にも個展のため香港を訪れたことがある森山大道だが、前回の個展と比較すると、今回の「尋旅」個展の規模は比べ物にならないほど大きい。しかも、今回は来場者に最も良い状態で作品を鑑賞をしてほしいという趣旨により、すべての作品が原寸大で用意された。
東日本大震災が創作活動に与えた影響について森山大道は、「3年前のあの地震はあらゆる日本人の心の中に永遠に消せないものを残した。写真を撮る時、心の中に残っている記憶のため、無意識にこれらに関連した感情が映し出されていることがある。だが、特に地震をテーマにして、地震によって変貌した街を撮ろうとは思わない」としたほか、衝撃を受けたのはアーティストだけではないという見方を示した。東日本大震災は身分や性別、年齢に限らず、あらゆる日本人の心に極めて大きな衝撃と忘れられない記憶を残した。この思いは日本人すべての心の中に永遠にずっと残るものだという。また、森山大道は、特に地震に関わる社会的な活動に参加したわけではないが、作品を売った売上金の一部を被災者に寄付すると表明した。
香港で開催される写真展「尋旅」が、息が止まるほど美しい森山大道の写真作品を堪能できる素晴らしい機会であることは間違いない。森山大道は、光と影の魔術師であり、写真というものがこの世界を捉える素晴らしい媒介であることを示してくれる。森山大道も、「香港の観衆が自分の作品を好きか嫌いかは別として、ぜひ作品を感じて、体験してほしい」と語る。この写真展を鑑賞した人なら、おそらくこの写真家の天性の魅力と誰にも真似できない独特のスタイルを持っていることを理解するだろう。
「人民網日本語版」より 2013年3月28日
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