現在位置: 中日交流
日中韓共同制作演劇『祝/言』が北京で再演
痛みの共有と「リスペクト」を表現した作品

 

 

写真=Jung Songoo

 

 

国際交流基金と青森県立美術館の共催で、東日本大震災をテーマとする日本・中国・韓国の共同制作による演劇プロジェクト『祝/言』(しゅうげん)が、5月23日から25日まで北京で上演された。今回の上演会は、北京で最大規模の演劇祭である「北京南鑼鼓巷演劇祭」のオープニング作品として特別招待を受けての再演だ。

『祝/言』は2013年秋以降、日中韓の計8都市(青森、大田、ソウル、全州、北京、上海、仙台、東京)で巡回公演がなされた。この演劇プロジェクトは、リージョナルシアターの代表および劇団「弘前劇場」の主宰者である長谷川孝治氏(青森県立美術館舞台芸術総監督)を中心に、主に東北で活動する演劇人や音楽家が、韓国・中国の俳優、舞踊家、音楽家との交流および共同制作に臨み、さらに日韓の写真家(日本は木村伊兵衛賞受賞の鈴木理策氏)も加わり、新しい作品を創作するというものだ。

長谷川氏によると、『祝/言』を創作するなかで、「東北の演劇人と、隣国である中国、韓国の演劇人とともに現在を語り合い、その未来を作品製作という現場から探る」という思考が含まれているという。

また、国際交流基金文化事業部アジア・大洋州チーム長横道文司氏は「日本にとって大切な隣国である中国と韓国との三カ国で、しかも東日本大震災をテーマに各国のアーティストが新しい作品をともに作るということは、かつてない試みだ」と述べ、また「近くて遠い国、実際に出会い、会話を重ねることによりお互いの違いを認め、心を通じさせることで新しい何かが生まれることを信じる」と創作の意義について語った。

 

傷と痛みを抱えながら生きていく

 

写真=Jung Songoo

 

長谷川氏は、東日本大震災に遭遇した芸術家の心情をこう表現している。「2011年3月11日。私達は心がつぶれ、折れるのを聞いた。それは今まで持っていた『言葉』が瓦解していく音でもあった。」この舞台には、大きな傷を負った東北の芸術家たちが困難と向き合う姿がある。

『祝/言』の間にある「/」について、長谷川氏はこう説明している。「セレブレーション(祝い事)とエクスプレッション(言葉)の間にある傷。それは過去の傷であると同時に、現在なお痛みを発している傷でもある。日本と中国、そして韓国の間で。(『をちこちMagazine』長谷川孝治氏寄稿分より)」。

 

 

日中韓に欠けている「リスペクト」を

 

写真=Jung Songoo

 

また長谷川氏は、「リスペクト」の精神がなければこの作品は成り立たないと語った。長谷川氏によると、「言葉の違いという最も大きな3国間の川をパフォーマーが真剣に慎重に渡って完成したものが今回の『祝/言』だった。交流の根には「リスペクト」がなければならない。わたしたちは運良くその態度を構想から実現まで持ち続けることができた」。

「現在中国、日本、韓国の3国に最も欠けている「リスペクト」という態度。それができることを『祝/言』は示し得たのだと思う」と長谷川氏は記している。(『をちこちMagazine』長谷川孝治氏寄稿分より)

 

 

あらすじ

日本人の花婿と韓国人の花嫁が、東北地方の太平洋岸にあるホテルで結婚式を挙げようとしている。共に集うそれぞれの親戚、中国の知人・友人。明日が結婚式というその日、大地震が東北地方を襲い、すさまじい津波がやってくる。生き残ったのは中国人が1人、福島県出身者が1人。震災から1年8カ月が経って、生き残った2人は再建が始まったホテルを再訪する。

 

(編集=孫雅甜)

 

 

写真=Jung Songoo

 

 

写真=青森県立美術館

 

写真=青森県立美術館

 

写真=青森県立美術館

 

写真=青森県立美術館

 

写真=青森県立美術館

 

写真=Jung Songoo

 

人民中国インターネット版 2014年5月26日

 

 

 

 

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850