「嫌中憎韓」に加担しない 出版界に自主的な動き
于文=文 呉亦為=写真
近年、日本の街頭では、韓国や中国に対する排外的なデモが行われ、書店には、中国を非難し、韓国を罵る「嫌中憎韓」の書籍が氾濫している。これが中国や韓国に対する日本の国民感情が悪化する原因の一つとなっている。しかし、こうした本をつくっている出版界から反省の声が起こりはじめ、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」が結成された。一部の書店では、店頭に「平積み」されていた「嫌中憎韓」の書籍を、普通の棚に戻し始めている。こうした現象はなぜ起こり、どう発展してきたのか、そしてどういう意味を持つのか――出版界に詳しい関係者に話し合ってもらった。(文中敬称略)
出席者
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近藤大博
雑誌「中央公論」元編集長、元日本大学大学院教授、早稲田大学非常勤講師 |
岩下結
大月書店編集部副部長、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」の呼びかけ人 |
真鍋かおる
高文研編集者、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」事務局員 |
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段躍中
日本僑報出版社代表 |
横堀克己
司会 本誌編集顧問 |
「憎韓」から「嫌中」へ広がる
司会(横堀克己) 「嫌中憎韓」の動きはいつごろから起こったのでしょうか。その背景と現状についてどう分析しますか。
岩下結 「憎韓」の動きは、「新しい歴史教科書」やゴーマニズム宣言、さらに日韓ワールドカップの際の韓国に対する批判などで高まった韓国批判から始まったと思います。
中国に対する嫌悪感はちょっと違って、2000年代のかなり後半からでしょう。中国の経済発展の勢いが無視できない状況となり、日本が明らかに追い抜かれるという意識と、軍事力の強化を日本に対するプレッシャーと感じる人が多くなりました。2012年の「島」の問題以来、この問題がわかりやすい争点になり、「嫌中感情」がさらに拡大し、中国がわかりやすい批判の対象となったのです。
中国に対する「ヘイトスピーチ」は、主に中国脅威論です。沖縄の市町村長が東京に来てオスプレイの配備に反対をした時に、私も参加しましたが、その時、沖縄の人たちのデモ隊に向かって「中国の手先」など罵倒する人がいました。
段躍中 私は東京・池袋に住んで十数年になりますが、池袋駅北口には中国の店が多くあります。そこにまで「反中デモ」が行われています。出版物に関しては、2010年に中国のGDPが日本を追い越した後、雑誌のタイトルがひどくなったという感じがします。また2012年以降、「島」の問題では、メディアや週刊誌の見出しは刺激的なものが多くなりました。単行本については、この2、3年間に出版されたものをリストにしましたが(表参照)、タイトルで嫌中をうたって読者を煽っていても、中身はたいしたものがないというものも多いように思います。
近藤大博 例えば元中国大使の丹羽宇一郎さんが書かれた『中国の大問題』ですが、別に「反中」でも「嫌中」でもないのに、書店ではこれを「嫌中」の本の棚に並べています。真面目な本でもタイトル次第で「嫌中」の本のようになるのが現実です。
また、今のテレビの視聴率は30秒ごとに測定されます。「親中国」の発言が出てくると視聴率が極端に落ち、「反中国」の発言が激烈であればあるほど視聴率が上がります。残念ながら、コメンテーターたちはカメラに媚びるような形で、中国を悪しざまに言うような雰囲気がいまだ続いています。
人民中国インターネット版 2014年12月30日
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