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「女形は日本人の美意識のかたまり」
――歌舞伎俳優五代目尾上菊之助さんに聞く

 

孫雅甜=聞き手 楊振生=写真 

 

歌舞伎『春興鏡獅子』。小姓弥生(尾上菊之助さん)の踊りは、女性らしい優美さが見所 歌舞伎『春興鏡獅子』。後半になると、お小姓から獅子へと急転換。尾上菊之助さんが演じたたけだけしい獅子の風格が魅力的だ

 

 

――『春興鏡獅子』のなかで、面白い転換がありますね。か弱いお小姓弥生が獅子の精に憑かれて獅子の狂いを見せます。このような役柄の転換があるのはなぜでしょうか?

 

菊之助 歌舞伎には作者が物語の設定を面白がって書いているものが結構たくさんあるんですね。女と見えて実は男であったとか、盗賊と見えて実は殿様であったとか。その「実は」というのが、歌舞伎の物語には非常に多いのです。今回の『鏡獅子』のように、少女らしくはにかみながら踊っている女性から荒々しい獅子に変わるのも、作者の一種の遊び心です。役者がこれをやったらどうなんだろうというチャレンジの精神が歌舞伎にはたくさんあるので、そういうふうにとらえています。

 

――「お小姓弥生」と「獅子」という大きく違う二つの役柄を、どのように把握するのでしょうか? 役を演じる時、最大のチャレンジと一番の面白みはそれぞれ何ですか?

 

菊之助 面白みはやはり初々しい女性がたけだけしい獅子に変わるというところです。これはこの『鏡獅子』ならではのしつらえですからね。具体的に演じる時には、前半は女性なので、体を柔らかく使っていくことですね。後半の獅子はたけだけしいので、筋肉や骨格を意識して、格をしっかりと浮き立たせるように演じています。この演目を作られた九代目市川団十郎は本当に素晴らしい方だと思います。『鏡獅子』は振り付けも良ければ曲も良く、また江戸城の城内で踊っているお小姓が急に獅子に変わるというストーリも面白いです。非常に良くできている話なんですね。ですから、踊る側としても、この『鏡獅子』を踊る時には非常に多くけい古を積まないとできないのです。歌舞伎役者にとっては大事な演目であり、難易度の高い演目、非常にやりがいのある演目ですね。

 

 

人民中国インターネット版 2015年4月8日

 

 

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