段非平=文・写真
大連市金州新区の北部に位置する大連金州国家農業科学技術パークには、日本式ビニールハウスが三つあり、人目を引いている。その中で栽培されているのは日本から導入したメロン、トルコキキョウ、トマトの3種類。8月末はちょうどメロンの収穫時期となる。美しい網目模様をしたメロンは満足のいく成長を見せ、そこここになっている大きな実が収穫の時を待っている。
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収穫間近のメロンを手に生育状況について確認する上川徹部長(左)と辛学鋭社長 |
栽培作業を担当する大連好地農業有限公司の辛学鋭社長の説明によると、この三つの品種は現地での栽培に適しており、普及させる価値も高いという。栽培中に導入した日本の整備された農業システムや管理モデルもまた、同パークにおける農業発展の有意義なヒントとなったそうだ。住友化学と同パークによる栽培評価試験プロジェクトから得た成果は少なくないという。
昨年1月14日、住友化学株式会社と同パークは、住友化学グループが提供する農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(農PO)や灌水資材、農薬、肥料、種子を用いて農作物の栽培評価試験を共同で行うことに合意した。このプロジェクトの協力期間は3年間。同パークが実際の栽培および評価を担当し、住友化学グループが必要な農業関連製品を提供するとともに、日本の方式による栽培指導を行う。このプロジェクトは双方が得意分野を担当し、協力して発展させていくものだといえよう。
友情が実現させた試験プロジェクト
住友化学が金州国家農業科学技術パークと共同で試験プロジェクトを展開する目的の一つは、中国、特に東北地方の農業発展に貢献することだ。そのために、住友化学はプロジェクトで必要な農業関連製品を無償で提供するだけではなく、長年積み上げてきた先進的栽培技術やノウハウも中国側に伝授した。
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2008年6月に、住化金港化工合弁契約調印式に出席する米倉名誉会長(右端)と孔会長(中央)(写真提供・住友化学) |
このように中日の協力関係を実現させた背景には、双方の懸け橋となった人物の存在がある。大連金港集団有限公司の孔兆恩董事長(取締役会長)だ。孔会長と、住友化学の相談役で日本経済団体連合会の米倉弘昌名誉会長との間には、深い友情と信頼関係がある。2人の中日民間友好交流に対する信念と期待が今回の栽培プロジェクトを実現させた。
2003年、住友化学と大連金港集団有限公司のグループ会社が手を組み大連住化凱飛化学有限公司を設立させた。同公司は当時、住友化学グループが大連で投資した初めての合弁会社だった。その後、住友化学がマラリア予防用に自社開発した特殊な蚊帳の需要急増に応えるための増産を進めたとき、その一部を大連金港集団有限公司が担うことになった。05年のことだ。さまざまな困難を乗り越え非常に短い期間で工場の立ち上げを成し遂げたことが住友化学と大連金港集団有限公司の結びつきをより強固にした。なかでもトップの2人、米倉名誉会長と孔会長は互いに信頼を寄せるパートナーとなった。
このような深い友情のもと、米倉名誉会長と孔会長は中日両国の民間経済交流もまた積極的に推進させていった。12年に中日関係が急速に冷え込み、政治の寒波が両国の民間経済交流にも悪影響をもたらした。この事態に孔会長はひどく気をもんだという。交流を絶やしてはいけないという思いで、孔会長は積極的に大連市政府関係者などと共に日本を訪問し、日本企業数社と交流した。一方、米倉名誉会長は長期にわたって、大連と住友化学、ひいては日本経済界との友好交流や経済協力に取り組んできた。このような多大な貢献が評価され、米倉名誉会長は大連市名誉市民の称号を授与された。「名誉市民として、私は大連の発展に全力を尽くす」。これは米倉名誉会長が称号を授受した際、「名誉市民メッセージノート」に書き記した言葉だ。この大連に対する強い思いがあったからこそ、住友化学と金州国家農業科学技術パークとの栽培試験プロジェクトが生まれたのだ。
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栽培試験プロジェクトで使用されている日本式ビニールハウス |
同パークの孫強・管理委員会主任は「農業科学技術パークはたくさんの国と協力したことがあります。しかし、これほどまでに中国側のニーズに基づいて、農業技術や農業関連製品において全面的な連携・交流をしたのは住友化学さんだけです。住友化学さんは教科書のような存在で、私たちは多くのことを学び、大きな成果を収めました。この小さな試験プロジェクトから中日民間レベルの深い友情を感じます」と語る。
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