中国農業をサポートする日本の技術
現在、試験プロジェクトが開始してから2回目の収穫時期を迎えている。双方の協力の過程で得られた成果について大連好地農業有限公司の辛社長は以下のように語る。「中国ではいまだに基準を持たず経験だけに基づいた栽培が主流ですが、住友化学さんにはシステムと規格に関する近代的な管理技術があります。栽培前にリサーチを行い、それに基づいてとても綿密な計画が立てられます。実施の全過程を通して観察記録が付けられ、それらの記録はプロジェクト終了後にまとめられ、来年度計画作成のための参考資料となります。このようにきめ細かな栽培管理は、農作物の品質を確実に向上させます」
|
現在、ポール世紀荘園で使用されている「明浄華」のビニールハウス |
辛社長は日本の技術者たちが責任をもって真面目に仕事に取り組む姿勢もまた、強く印象に残ったと話す。辛社長は日本の技術者たちと意思疎通を図るためにウィーチャットにグループを作成した。社長が質問するたびに、すぐに回答やフィードバックを得ることができたという。また、比較的大きな問題が発生した場合には日本の技術者が駆けつけ、現場で指導に当たったという。「彼らのプロ意識、そして、真面目さには安心感を覚えました。このプロジェクトにおいて、私たちは日本の最先端技術や管理方法を学んだだけではなく、仕事に対する熱意と責任感も学びました」
プロジェクトの成果をいかに利用し、押し広げるかについて、大連金州新区管理委員会の劉文鋒副主任は以下のように話す。「中国は農業の高度化という転換期に直面しています。日本の近代化された管理方法はとても有益なヒントとなります。今回の試験を通じて、日本の先進技術と管理方法を系統立てて学ぶことができました。当区では、学んだことや経験を実際の農家の状況に応じて適用できると考えています。例えば、大規模化、標準化して大量生産を行う農家に対しては、系統的な指導をすることで、高品質の農産品の生産を推進することができます。小規模生産の農家に対しては、日本の最先端の農産品を優先的に推し広めていく予定です。優良な品種を普及させるとともに、適正な農薬の使用方法を指導することで、安心・安全な農産物の生産にもつながります」
このほかにも、日本の先端技術や設備をさらに活用するために、試験成果の用途を拡大させるべく、新しい試みも展開している。例えば、日本のメロン栽培の技術を中国のハミウリ栽培に応用させている。
|
苗の選定をするポール世紀荘園のスタッフ |
住友化学の健康・農業関連事業業務室の上川徹部長は今後の見通しに対し、以下のように語った。「今回、住友化学が金州国家農業科学技術パークとの試験プロジェクトを展開させたのは、中国の、特に東北地方の農業発展に少しでも貢献したいという思いからです。短期的なビジネスチャンスを求めたわけではありません。1年半の協力を経て、われわれは中国における農業の実際の状況とニーズを理解することができました。そういう意味でウインウインの関係といえます。また、中国の農業は、市場のニーズの多様化という転換期にあり、高品質の農産物を収穫するために、日本の技術と経験が役立つことも感じました。まずは、今回のプロジェクトの達成に全力で取り組みますが、その結果、より発展的な協力の可能性を検討できるような成果が得られると良いですね」
協力を推し進めウインウイン目指す
栽培試験プロジェクト以外にも農POの生産プロジェクトも順調に好ましい成果を挙げている。この農業用ハウスなどに用いられる農POは住友化学と大連金港集団有限公司が共同で2009年に設立した大連住化金港化工有限公司が生産しているもので、中国国内では「明浄華」と名付けられた。
明浄華は住友化学の特殊コーティング技術を採用している。透明度が高い上に耐久性にも優れ、流滴性の機能が高く、農産物の成長を妨げる水滴をフィルムの表面にとどまらせず速やかに流すことができる。また、流滴性の機能が高いことにより温室内の相対湿度が低くなるため、農作物の成長を促すだけではなく、病害が発生しにくい。そのため、農薬の使用量を削減できる可能性がある。中国での生産、そして販売期間はまだ短いものの、その卓越した性能と品質は利用者からの高い評価を得た。それは、2013年に「農民が最も信頼できる農業用フィルム」という賞を獲得したことからも明らかである。
|
農PO「明浄華」を紹介する大連住化金港化工有限公司の加藤和宏総経理(左)(写真・王衆一) |
中国で大手の花苗生産基地であるポール世紀荘園の馬彦華社長は明浄華を以下のように紹介する。同荘園では15年もの間、他国の農業用フィルムを使用してきた。しかし、比較してみると、明浄華の方が優れていることはすぐに分かったという。そこで、昨年から早速使用を開始し、現在では荘園の半分で明浄華を使用しているが、来年は全てに使用する計画だという。
中国農業の高度化に伴い、高品質の農業フィルム、特にワイドフィルムの需要が急速に伸びている。そのため、住友化学は農POの生産を大幅に増加させることを決めた。現在、毎年4000㌧生産しているものを1万㌧まで増加させる。新しく導入する設備では幅12㍍のフィルム生産が可能となっており、2016年4月には正式に生産が開始される予定だ。
大連住化金港化工有限公司の加藤和宏総経理は以下のように語る。「現在、中国には、さまざまな機能のレベルの農業用フィルムがあります。このうち明浄華のような高機能フィルムが市場全体に占める割合は現時点であまり高くありません。しかし、中国農業の高度化に伴い、この数字は上昇することが期待されており、当社の事業拡大のチャンスも大きいと考えています。ここ数年の合弁事業の取り組みを通して、中国側のパートナーや関係者とはすでに良好な基盤を作り上げています。今後は引き続き良質の農POを生産し、自身の経済収益を高めるとともに中国農業の発展に尽力していきます」
中日経済協力もまた、アップグレードに直面している。協力の領域およびその方法には常に異なる変化が発生している。つまり、協力過程において、さまざまな問題を避けて通ることはできない。しかし、共通するアジア文化、強い信頼関係、強固な協力基盤、広大な発展の余地はやはり、今後の中日企業協力の展望に価値ある期待をもたらすといえよう。
人民中国インターネット版
|