文・写真=阿羅美奈子
4月21日、科学研究の将来を担う若手研究員の育成とその研究を奨励する「笹川科学研究助成」と、日本のスポーツ振興とスポーツ政策形成に寄与する優れた人文・社会科学領域の研究を支援する「笹川スポーツ研究助成」の合同奨励賞受賞式「研究奨励の会」が行われ、授賞式では2016年ノーベル生理学・医学賞に選ばれた大隅良典氏からのビデオメッセージが流された。研究者交流会も行われ、若手研究者たちが分野を超えた交流を楽しんだ。
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緊張の面持ちで授賞式に臨む若手研究者たち |
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ノーベル生理学・医学賞受賞者の大隅良典氏はビデオメッセージで「研究は個人的な作業に見えるが、社会的存在意義は大きい」と訴えた |
「笹川科学研究助成」は公益財団法人日本科学協会が、1988年に創設し、今年でちょうど30年目を迎える。「若い研究者が自ら発想する萌芽的な研究で、助成を受けにくい分野の研究を支援する」という基本方針によるこの助成金は、この30年で8969人、53億円以上の助成を行っている。今年は7つの部門に1525人の応募の中から324人が選ばれ、うち6人が中国人研究者だった。
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受賞者に「研究者として社会と会話する姿勢をつねに持って欲しい」と語りかける大島会長 |
実験生物化学者でもある大島恵美子会長は、授賞式のあいさつで「成果をすぐに求められがちな現代にあっても、成果に至るまでの創造のプロセスがサイエンスの本質。その大切さと楽しみを忘れないでほしい」と呼びかけ、「自分の研究をわかりやすく社会へ語りかけることも重要」と、とかく研究室にこもりがちな研究者が社会との接点を持つ大切さもアピールした。
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「若き科学者たちとスポーツ分野の研究者たちの化学反応に期待する」と述べる渡辺専務理事 |
「笹川スポーツ助成」の今年の申請者は174人で、48人の研究が採択された。渡辺専務理事は小野清子理事長のあいさつの代読として登壇し、「日本に暮らす一人ひとりが、それぞれの望む形でスポーツに関わり、幸福を感じられる社会実現のため、皆さんの研究成果がこうした社会の実現に結びつくことを願っています」と研究者たちをはげました。
助成金を獲得した中国人のひとりで、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科の博士課程に在籍する江蘇省出身の花暁波さんは来日して1年半。ミャンマーと雲南省の国境地帯の土地利用、人的往来、経済交流をテーマに、持続可能な発展に関する研究を行っている。重慶の大学と大学院に在学中は、四川省とチベット高原のフィールドワークに熱中していたが、一帯一路の構想が加速する今、中国と東アジアの研究をさらに深めるべきと考え、東南アジアのフィールドワークに強い日本を留学先に選んだ。「この助成金で雲南省のダイ族が生活する村を訪れ、ゴムや葉タバコ、茶葉などの経済作物の生産状況の変化と、ミャンマーとの経済交流、人的往来、資金流動を調査したい」と語る花さんは、「2019年には博士号を取って、博士研究員になることを視野に学術交流を広め、最終的には中国へ戻って研究の道を極めたい」と将来を夢見る。
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花さんはミャンマーでのフィールドワークに向け、ミャンマー語の勉強を今年から始めたという |
小学1年生から京都で暮らし、今ではすっかり京都弁が板につく、奈良先端科学技術大学大学院で博士研究員をつとめる闞凱さんは北京出身。「大学時代に進路で悩んでいた時、偶然受講した環境問題に取り組む企業の講義に共鳴し、環境問題に貢献できる新素材を開発したいと思いました」と研究者の道を歩むきっかけを語ってくれた。「研究費の工面は本当に頭の痛い問題なので、助成金の決定には本当に心から感謝しました」と笑顔の闞さん、今は分解が難しく環境問題を引き起こしているプラスチックに代わる新素材の開発で、耐久性や耐熱性の向上に熱中する日々だという。
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「新素材の研究は孤独との闘い。ストレス発散方法は無心になってする掃除と旅行」と語る闞さん |
人民中国インターネット版 2017年5月9日
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