今回は安渓の茶葉卸売市場をご案内します。中国茶の卸売市場は、北京、上海、広州の三大市場のほか、全国の茶産地の省都(卸売市場がない省都も一部あります)や茶産地などにあるのですが、なかでも安渓の卸売市場の大きさは際立っています。
大変な商談
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案渓茶葉市場の外観 |
「中国茶都」と称する市場は、安渓の大同路にあり、安渓県で生産される鉄観音、黄金桂、毛蟹、本山の四種類の茶葉のみを扱っている独特の市場です。
私たちは茶摘みを終えて安渓の町へ戻り、さっそく市場に出かけました。まず皆さんに次のように注意します。
「この市場は、他の中国の一般的な市場と違いますから、初めての方には買いにくいかもしれません。茶農が袋に詰めた茶葉を持ち寄って、自由市場のように並べてあるだけです。茶葉の質はその色や香りで判断し、茶農がいう値段を聞いて交渉しなければなりません。買い手が自分で値段を判断する必要があります。もし判断がつかなければ、普通の問屋もありますから、そちらで試飲してから好きなお茶を買うほうがよいと思います」
市場の中には大きな広場が三つもあり、安渓県中から集まった茶農が思い思いに席を取り、所狭しと茶葉を並べています。雑踏の中を進んでいくと、「鉄観音買いませんか」。さっそく声がかかります。私は袋の中に手を入れて香りを聞き、手にとって茶葉の色合いを見ます。
「鉄観音じゃないよ、本山だろ」
「うーん本山だよ。まけとくよ」
こんな会話のやりとり。とりあえず全て鉄観音と言ってからの商談ですから大変です。この市場で売られる茶葉は、鉄観音が一番高値で、黄金桂、毛蟹、本山の順に値段が下がります。ですから、茶農はまず鉄観音と言って、お客の反応を見てから商談のしかたを変えます。
それでも何が何でも鉄観音と言いはる茶農もいるので、「別の所を見るよ」とその場を離れると、「ちょっと待った、安くするから」と追いかけてきます。
別の茶農の茶葉を見て、「この鉄観音はどこの茶葉」と聞くと、「祥華だよ」との答え。すかさず、「西坪か感徳じゃないの」と言うと、「香りが違うだろ祥華さ」。こんな会話が続きます。
「それなら、こっちのほうがいい茶葉さ。安くしとくよ」。また声がかかりました。
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