大紅袍の謎を探る①
 


岩壁の上の「大紅袍」の茶樹



  武夷岩茶は、中国茶の世界で知らぬ人はいないくらい有名な武夷山の名茶です。武夷山は、世界自然遺産としても知られ、美しい山々が連なる観光地でもあります。

 

今回は少々有名になりすぎた武夷岩茶のひとつ「大紅袍」について、天心永楽禅寺の住職・釈沢道禅師を訪ね、お話を伺いました。

 

武夷岩茶は、基本的には「武夷肉桂」や「武夷水仙」などさまざまな名前の岩茶の総称です。しかし「大紅袍」がその伝説によって非常に有名になってしまったため、ほとんどの武夷岩茶が「大紅袍」の名前で売られているというのが現状です。その伝説をご紹介しましょう。

 

その一 下賜説

 

武夷山の茶畑



昔々、皇后の腹が突然ふくらみ、苦しくなって、食事も咽を通らなくなってしまった。皇帝は医者を呼び、さまざまな手を尽くしたが治らず、皆、色を失った。

 

そこで太子が皇帝の命を受けて、良医良薬を探しに出た。太子は都を出てから四方八方必死に手を尽くして薬を探したが、見つけることが出来なかった。最後に武夷山にやってくると、そこは奇峰・怪石が連なり、林は深く道は険しい。

 

注意しながら歩いていくと、猛獣のほえる声と助けを求める人の声を聞いた。急いで駆けつけると、一匹の虎がまさに一人の老人に噛みついているところであった。太子は怒り、剣を抜いて猛虎を殺し、老人を救った。

 

老人は感謝して、お礼をするために太子を家に招いた。太子と話をするなかで、老人は皇后が重い病にかかっていることを知った。そこですぐに、ある崖の前に太子を連れて行き、岩の半ばにある小さな茶樹を指さして「里人の話によれば、腹がふくらみ苦しいときには、この茶樹の葉を取り煎じて服用すれば、その効果は絶大であるといわれている」と話した。太子は非常に喜んで岩壁をよじ登り、茶樹の葉をたくさん摘んで降りてきた。

 

太子は昼夜を走って都へ戻り、茶葉を煎じて皇后に献上した。一杯目を飲むとすぐにお腹に変化が現れ、二杯目を飲むとお腹がすっきりと通じ、三杯目を飲むと心は清らかで爽やかになり、薬効が現れたちまち病気が治った。皇帝はたいへん喜んで詔を賜り、その茶樹に「大紅袍」という名前を下賜された。そして、老人には「護樹将軍」という名を与えたのである。

 

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